どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

『ヘラ鮒釣具店の犬』(3)

2006-01-02 00:30:52 | 短編小説
 風の通っていった道は、クルマがやっと一台通り抜けられるほどの小道だ。公園側の木々が差し延べる影が、道はおろか向かいのトタン屋根の家まで被さっている。  目が慣れると、薄暗い土間が奥の框に達していて、その手前のやや傾いたパイプ椅子の横に、首だけもたげた中型犬が、身じろぎもせずに桂木の方を見ていた。  視られていたという思いが、桂木を動揺させた。たかが犬じゃないかと思い直したが、相手が誰かはたいした . . . 本文を読む
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