どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設20年目を疾走中。

思い出の短編小説『狂犬のいた坂道』(1)

2023-05-15 00:07:50 | 短編小説
 喜市は、夏が一番好きだ。 川漁師の父親とともに、近くの沼で雑魚や小海老を採り、また、さまざまの仕掛けを使ってライギョやウナギを獲る。 きらめく夏の日々は、喜市にとってわくわくする時間の連続であった。 昭和二十年代の半ば、喜市が小学五年生になった頃のことである。沼の北西で、事件が起こった。 それは新聞に載るほどの出来事ではなかったが、ふだん平穏な生活に慣れている村人に、めったに無い話題を提供した。 . . . 本文を読む
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