ちいさな幸せ

幸せの基準ってある?
それは自分の心の中にあると思う。
私は何時も陽だまりのような幸せの中に居た。

遍路  (103回)

2010年05月30日 | 思い出話
              平成15年11月18日(火)
                第88番札所 大窪寺




くだりになってから、修行僧のような感じの男子に抜かれました。しばらくする
と、その男子が又私の後から歩いてきました。私が怪訝そうな顔をしていた
からでしょう「奥の院に行ってきたのです」といいました。もう少し行くと大窪寺
の人声が耳に届くくらいのところに2坪ほどの空地がありました。そこへ先ほど
の男子が休んでいました。私達も一寸一休みすることにしました。

彼は「奥の院が荒れ果てている」と怒っていました。彼は何度も廻っているよ
うですが、初めての時は助光経由だったので山門から入ったそうです。山門が
目の前に現れた時は、感無量で涙がこぼれ、山門を見つめたまま30分ほど
足が前に進まなかったといっていました。2回目からはそのような感激は最早
無いと笑っていました。

「お腹がすいているのですが、お寺のそばにお店はありますか?」と聞きまし
た。「お寺の前のテレビによく出てくる八十八庵と言ううどん屋さんが美味し
い」と教えてくれました。彼と共にくだり、山門で写真を撮ってもらいました。





大窪寺について、初めて発した言葉が「あ~お腹すいた!何か食べてからお
参りするわ…」でした。

やり終えた感激より、朝の7時から何も食べていない空腹感の方が勝っていま
した。2時間もすれば夕食の時間ですので、おうどんだけを頼みました。あま
りにもおなかがすき過ぎていた為か、うどんの味が感じられず、ただ口に放り
込むという感じでした。



遍路最後の鐘、締めくくりの鐘をつきました。勿論、私もつきましたよ。







テレビ局の取材を受けた時、彼女達が言っていた「大窪寺の綺麗な紅葉」その
時期に結願しようと心に決めていましたが、晴天にも恵まれ実現いたしました。
写真写りが少し悪いのですが、門の向こうに。夕日に映えた紅色は、写真より
ず~っと綺麗でした。

このときやっと私の心に「終わったんだ!」と言う声が響いてきました。色んな
ことがありました。2年と言う歳月を費やしたこの遍路が、これからの私にどの
ようにかかわってくるのでしょうか…。

先達さんに引率された一団がやってきました。先達さんが「私が今から、お礼
の言葉と、報告をいたしますから、私が報告をしている間、皆さんは『南無大
師遍照金剛』を唱えてください。彼はお礼の言葉を述べ始め、皆さんは『南無
大師遍照金剛』を唱和し始めました。

その声を聞いている私の目に涙が浮かび始めました。そして私もしらずしらず
に皆さんと共に「南無大師遍照金剛」を唱えておりました。

私の声は嗚咽に変わり、静かに涙が流れ始めました。本当に最後なんだ、終
わってしまったんだ、無事歩き終えたんだ。此処までくるのに、どれだけの人
にお世話になっただろうか、あんな事もこんな事も在ったと…。優しくされた事
が、浮かんでは消え、浮かんでは消えていきました。












コメント (2)
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