ワールドカップ12大会取材のサッカージャーナリストのブログ
牛木素吉郎のビバ!スポーツ時評
サッカー日誌 / 2011年07月18日
「なでしこ」、自主性の世界一
女子ワールドカップ観戦日誌(24)
7月17日(日)
決勝
日本 2対2(延長 PK) 米国(20:45 フランクフルト)
[得点]後半24分(米)モーガン
後半36分(日)宮間あや
延長前半14分(米)ワムバック
延長後半12分(日)澤穂希
★壮絶、激闘、最高のドラマ
これほど壮絶でドラマチックな試合は、めったにない。スポーツの取材を50年以上続けて、男子のワールドカップは1970年メキシコ大会以来、11回連続で見てきたが、そのなかでも指折りの激闘だった。日本の試合では文句なしに最高である。
断然の優勝候補だったドイツ、米国を破っての世界一。「なでしこジャパン」の快挙は、世界の女子サッカーの歴史のなかで、いつまでも語り継がれることになるだろう。
立ち上がり20分間以上の米国の強攻をしのぎ切り、前半を0対0に持ちこたえたのが、まずよかった。米国の2度のリードに屈せず、落ち着いて反撃して延長、引き分け、PK戦に持ち込んだ粘り強さがすばらしかった。
PK戦では米国の1人目と3人目のキックをゴールキーパーの海堀あゆみが見事にはじき出した。2人目のキックはバーを越えた。3人連続失敗は珍しい。これもドラマだった。
★選手たちが考えてプレー
120分以上にわたるドラマを生んだ要因は、いろいろある。そのなかで「なでしこ」たちが、自分たちの判断を強い意志の力とチームワークで生かしたことを、まず取り上げたい。
後半21分に佐々木則夫監督は、ストライカー2人を新戦力として交代出場させ、それまでトップに置いていた川澄奈穂美をサイドに出した。その直後に米国に先取点を奪われた。
川澄は監督に「もとのポジションのほうがいい」と提案した。「選手たちが自分たちで考えてプレーしているんです。監督としては話したくないことですけど……」と佐々木監督は冗談まじりに明かした。
ゴールキーパーは海堀だけが使われたが、控えの山郷のぞみ、福元美穂と3人でいつも反省や対策を話し合っていた。フォワード、中盤、ディフェンダーも、それぞれグループで選手だけの話し合いをしていたという。
★日本のスポーツを変える契機に
2度目のリードを奪われたあとの延長後半、米国は後方を固めて守りに入った。「なでしこ」は疲れが極限にきているから、走ってパスを組み立てたり、ドリブルで突破しようとしたりしても、力も技術もある米国の守りを崩せない。
そのとき「なでしこ」は、米国の守備網の頭越しに放り込みを始めた。背の高い相手に放り込みをするのは、ふつうは適当でない。しかし、この場合は相手のゴール近くにボールを送ってチャンスを作り出そうという考えである。それが成功してコーナーキックになり、宮間のキックをニアに走り込んだ澤が決めて2度目の同点になった。
選手たちの自主性と、それを認めた監督の包容力が、世界一をかちとった「なでしこ」の基本にあったのではないか? この世界一が、日本のスポーツに多い「おれについて来い」式の指導を変えるきっかけになれば、画期的である。
黄金の光のなかの表彰式。
7月17日(日)
決勝
日本 2対2(延長 PK) 米国(20:45 フランクフルト)
[得点]後半24分(米)モーガン
後半36分(日)宮間あや
延長前半14分(米)ワムバック
延長後半12分(日)澤穂希
★壮絶、激闘、最高のドラマ
これほど壮絶でドラマチックな試合は、めったにない。スポーツの取材を50年以上続けて、男子のワールドカップは1970年メキシコ大会以来、11回連続で見てきたが、そのなかでも指折りの激闘だった。日本の試合では文句なしに最高である。
断然の優勝候補だったドイツ、米国を破っての世界一。「なでしこジャパン」の快挙は、世界の女子サッカーの歴史のなかで、いつまでも語り継がれることになるだろう。
立ち上がり20分間以上の米国の強攻をしのぎ切り、前半を0対0に持ちこたえたのが、まずよかった。米国の2度のリードに屈せず、落ち着いて反撃して延長、引き分け、PK戦に持ち込んだ粘り強さがすばらしかった。
PK戦では米国の1人目と3人目のキックをゴールキーパーの海堀あゆみが見事にはじき出した。2人目のキックはバーを越えた。3人連続失敗は珍しい。これもドラマだった。
★選手たちが考えてプレー
120分以上にわたるドラマを生んだ要因は、いろいろある。そのなかで「なでしこ」たちが、自分たちの判断を強い意志の力とチームワークで生かしたことを、まず取り上げたい。
後半21分に佐々木則夫監督は、ストライカー2人を新戦力として交代出場させ、それまでトップに置いていた川澄奈穂美をサイドに出した。その直後に米国に先取点を奪われた。
川澄は監督に「もとのポジションのほうがいい」と提案した。「選手たちが自分たちで考えてプレーしているんです。監督としては話したくないことですけど……」と佐々木監督は冗談まじりに明かした。
ゴールキーパーは海堀だけが使われたが、控えの山郷のぞみ、福元美穂と3人でいつも反省や対策を話し合っていた。フォワード、中盤、ディフェンダーも、それぞれグループで選手だけの話し合いをしていたという。
★日本のスポーツを変える契機に
2度目のリードを奪われたあとの延長後半、米国は後方を固めて守りに入った。「なでしこ」は疲れが極限にきているから、走ってパスを組み立てたり、ドリブルで突破しようとしたりしても、力も技術もある米国の守りを崩せない。
そのとき「なでしこ」は、米国の守備網の頭越しに放り込みを始めた。背の高い相手に放り込みをするのは、ふつうは適当でない。しかし、この場合は相手のゴール近くにボールを送ってチャンスを作り出そうという考えである。それが成功してコーナーキックになり、宮間のキックをニアに走り込んだ澤が決めて2度目の同点になった。
選手たちの自主性と、それを認めた監督の包容力が、世界一をかちとった「なでしこ」の基本にあったのではないか? この世界一が、日本のスポーツに多い「おれについて来い」式の指導を変えるきっかけになれば、画期的である。
黄金の光のなかの表彰式。
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