総理がコジキでコジキがソーリィー 080 父がした罪の償い 「それを調べたのは行政じゃないのよ、マスコミでもないのよ。支援団体よ。四割以上もの人が、政治家の賄賂のために、労働条件が悪化して、病気になったり、怪我をした人たちだという報告を出してくれた人もいるわ。つまり、これが犯罪ときちんと把握してくれるなら、加害者は政治家であり、被害者はホームレスの人たちなのよ。わたしたちは、ボランティアなんかじゃないのよ」 「わかってます。わたしの父がした罪の償いです」 「わたしもあなたと同様の気持ちでこの仕事をしている。唯一の同志よ。ほかの人たちのように、自分たちに罪はなくボランティアをしているなんて、明るい気分ではいられないのよね」 「そうです……」 「つまらない人の娘になったものだわ。巨悪とはわたしたちの父のことですもの……」 「そうです」 沙也加は下をむいた。こんなことを言え、こんなことに悩む自分がきらいではなかった。 「ちかごろは、そんな巨悪に近づくハイエナどもが多すぎるわ。マスコミ、学者、官僚、……エリートと呼ばれる人たちに多いのには、あきれるわね」 きれいな服をきて、何も知らないふりをしているお嬢様でいた自分より、よほど好きな自分であると言ってもいい。 また、父と同様の人間になる女性もいる、男女同権というよりも、男女愚劣権ね。どちらも、愚劣になれるってだけ……。 「ホームレスの原因はそれだけじゃない、建築業界の場合には、もう一つ、大きなことがあったけど、それは何かしら」 「それは、技術力の質がかわったということです。昔は大勢の人が必要だったことも、今では機材によって、省力化されたんです。それで、多くの人を必要とした現場もなくなり、家を建てるときでも昔のような大工さんの技術は必要ではなく、プラモデルをつくるように、家が建つんです」 「そのとおりね。そうなると、技術をもった高齢者より、元気で安い若者の方がいいとなるのよねえー」 「でも、昔からの日本の建築のほうが、すぐれた面はたくさんあると思うんですけど……」 「だけど、伝統的な建築法では高くつくのよ、このビルも、そんな手法では作られてはいないわね」 「ええ、昔からの建築なら、シックハウス症候群というのはなかったと思います」 「それはそうよね。時代は経済優先となりすぎているのが、日本よ。日本の伝統を失いつつあるのに、その伝統をつぶしてしまうゼネコンと組んでいるのが、今の政治家よ、そのくせ、愛国心だなんてぬかすのよね」 「まったく、冴子さんに言わせると、父たちはひどい犯罪者ですね」 「そのとおりよ、巨悪よ! 権力があるから、捕まらないし、問題をもみ消しているのよ」 ここまで、よく言えたものだと、さすがの沙也加も思っていた。 でも、そんな冴子先輩のファンでもある。
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