磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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新潮文庫 空の怪物アグイー

2008年11月06日 | 読書日記など
『空の怪物アグイー』
   大江健三郎・著/新潮社1972年

星新一のような作品が並んでいます。
--書いているのは大江さんですが……。



■目 次■
不満足  7
スパルタ教育  69
敬老週間  101
アトミック・エイジの守護神  123
空の怪物アグイー  161
ブラジル風のポルトガル語  211
犬の世界  247
  解説  渡辺正士


--「敬老週間」
核抑止はすすむ……。下「」引用。

「やはり恐怖の均衡? ラオスの部族長どもまで小さな原爆を購入しましたかな。」

保持するだけでも金がかかるのに、あまりにもバカげている……。

そして、戦争はないという……。下「」引用。

「「それにしても、もう戦争はこの地球上から消えさったんですよ」と歌うような、またすすり泣くような声で文科生はいった。
「地上の楽園ですねえ、しかし、地球上の人間たちが、みんな個人間の戦争に大童(おおわらわ)だとしたら同胞愛とか人類愛とかいうものは喪(うしな)われてしまうほかないのじゃありませんか?」

核兵器を開発したり、それを維持することで、多くの人を苦しめているとは考えないのだろうか?

核兵器があって、楽園とは皮肉なのだろうけど……。


--「アトミック・エイジの守護神」の書き出し。下「」引用。

「ぼくがその中年男をはじめて見かけたとき、かれはABCCの建物のなかの廊下で、立ったままむせび泣いていた。かれは泣きながらも、顔をおおっていなかったので、ぼくはかれの浅黒く青みがかった丸い顔の涙に濡れてぱっちり見ひらかれた海驢(あしか)の眼みたいに愚鈍そうな眼をいかに獣をおもわせた。-略-」

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新聞記事のタイトルがそれだったという。下「」引用。

「《アトミック・エイジの守護神》というのだった。記事の本文もまた密菓子(みつがし)みたいなヒューマン・インタレストの、すなわちこの地方紙数十万読者の起きぬけの三十分間を、幸福な気分でかざる効果をめざした文章なのだ。もっともぼくは、新聞記者からすでに《あいつの噂》を聞いていたので、いささかも幸福な気分にのはならなかったが。」

その男は投資だと考えている……。下「」引用。

「そして《あいつの噂》とはこうである。その男はたしかに十人の原爆孤児を救済した。かれはいま十人の少年たちと一緒に暮らしている。しかし、肝要なのは、その男が十人の少年たちをそれぞれ三百万円ずつの生命保険に加入させている、ということだ。そして保険金の受取人はかれ自身だ。すなわち、かれはそれに投資して有利な収益をはかるべき、利益率の高い家畜として、それら十人の少年たちをひきとったというべきではないか?」

三年後、中年男はアラブ式健康法を紹介していたという。

そして、四人が死亡し、その男は1200万円を手にしていたという。

だが、孤児たちにとっては、守護神だったという……。下「」引用。

「あの人に生命保険をかけたんですよ、受取人はぼくら八人ということにして、もっとも、いま残っているのは六人だけど」と青年は、澄みわたって輝く眼でぼくを見つめて微笑しながらいった。-略-そしていま、ぼくらはあの人が胃癌じゃないかと考えています。あの人についてとやかく噂がありますが、ぼくらは、あの人のことを本当にぼくらの守護神だと信じていますよ」

これも、拝金主義の世の中の異常なことを表現している皮肉だとは思うが……。

この男だけに責任があるのだろうか?

福祉の貧困だろうなあーとボクは思う……。










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