あかねさんシリーズ002 男が女de女が男 187 言葉の奴隷 「あなたは、そう思うのね。道具ですべてが決ってしまうこともあるのよ。アフリカのある国では、植民地支配をしていたのが、たとえばフランスなら、今でもフランス語を公用語にしてるのよ」 「フランス語を、公用語にしているの……」 「そうよ、支配者の言語を植民地が終わっても使用してるのよ」 「支配者がいなくても、支配者の言語をつかっているなんて、何かおかしい気がするわあー」 「そんなことはないのよ。フランス語を学んだ人たちが、支配者となっているから、フランス語を話せない人たちを差別するためには、フランス語は役立つのよ。だから、植民地支配が終わっても、民主主義になったというわけでは決してないのよ」 「そうなんだあー」 「そうよ、どこの国でも独裁者は独裁者よ」 「その独裁者の道具として、言葉が役割を果たしているってわけねえ」 「そうでありんす。アフリカでは、母国語、つまり現地の人々の言葉と公用語が同じではないから、国語とはいわないのよ。母国語が公用語のとき、国語というのよ」 「そうだったのねえ。外国では、英語なら、英語っていうんでしょう。国語なんて言わないっている人たちがいて、日本語と国語はいっしょなのだから、国語という教科はやめて、日本語にしようというのがあったけど、国語と日本語じゃ意味がちがうのね」 「そうでありんすね。中国人が日本語を学ぶとき、国語とはならないのよね。ああー、そうだったわ。第二次世界大戦のとき、朝鮮などで、日本語を国語として教えていたわ。でも、それは日本がその国を支配していたのよね。彼らの母国語は、朝鮮語なのにね」 「そうかあー、国語という概念は必要なことだわね。話せない人たちがいて、公用語なら法律とかも、わからないってことだろうしね」 「そのとおりね、民主主義からはほど遠いのでありんす」 「言葉というものは、大切なものよね。でも、言葉の奴隷なんていやね」 「そうね、日本でも公用語が漢文という時代もあって、漢文を読む男性なんて、下品みたいに言われたことがあったのよ」 もちろん、この世界では女性が漢文を読むのははしたいなどといわれていたという。
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