磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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火の墓標 原発よ一人息子をかえせ

2007年12月20日 | 読書日記など
『火の墓標 原発よ一人息子をかえせ』
   松本直治・著/現代書林1981年

もし、この息子さんを失わなければ、この著者はこのような本は書かれなかっただろう……。しかし、本当に失われていないからこそ、このような愛情深い本を書くことができたとボクは思う……。




「親愛なる同志のあなたへ
ご子息の死は決して無意味ではない
なぜならば、その運命は、
世界のすべての人々への警鐘であるから。
    ロベルト・ユンク」

ロベルト・ユンクの本

たとえ、宗教を出さなくても、このような表現をとられる……。
--復讐に燃えれば、遺族の人たちはさらに不幸になられることでしょう……。


「あとがき」で書かれています。下「」引用。

「七年間の霜降る夜、息子は舌ガンでこの世を去った。三十一歳。息子の職場は敦賀原子力発電所で、多くの被曝要員といわれる下請け労働者を指導する役目だった。そして自らも放射能を浴び、入退院を繰り返した。この敦賀原発がいかに欠陥原発であったかは、今年の春に表面化した事故隠しによって暴露された。社長のクビが飛び、所長は更迭した。しかし、国策としての原子力発電所の増設は、エネルギー危機、石油枯渇を理由に、この狭い日本領土で一段と促進されている。その安全性を未確認のまま、しかも放射性廃棄物の処理もできない。いうなればトイレななきホテルをつくる暴挙をなぜ強硬にやろうとしているのか。核の平和利用というが、いつでも核兵器に変貌する原子力、それはアメリカの極東戦略の二翼を担い、第二次大戦のあのいつか来た道に通ずる恐れがあると私はいいたい。」

その原因はいつものことです。

ロベルト・ユンクの本が伝えるように、「原子力帝国」に日本もなってしまったのです……。

「原子力帝国」は差別社会です。
--新しい差別をつくっても、問題は解決しない。
解決するどころか、よけいにひどくなるものです……。

著者はユンクとも交流されたようです。下「」引用。

「その後、ベルリン大学教授ロベルト・ユンクや反原発に起ち上がっている日本の科学者の方がたにも会い、現段階では「原発は人類と共存しないもの」との考え方をより一層強くしている。既設の原発地や、建設予定地の住民を訪ねて回ったし、下請け労働者の話も聞いた。」

市長の責任……。下「」引用。

「敦賀市の高木孝一市長は、
「もう原発を信頼することはできない。安全協定が無視されていた事実は市民に対しても申し訳がない。厳重に抗議し、徹底的に究明してゆく。」
 と語ったが、札束に屈して原発を受け入れ、さらに第二炉や「動燃」の建設に同調してきた市長の責任は免れるものではあるまい。」

そして、息子さんも加害者だったと告白……。
--そうですね、誰も従事することがなかったら、原発は造られなかったともいえる……。

--息子さんの言葉。下「」引用。

「僕は科学を信じ、安全性を信じていたんだもの、仕方がない。」

--ボクの子供時代でさえ。
日本テレビ系列で手塚治虫の「鉄腕アトム」が放送されていました。
アトムとは原子。妹はウラン……。水爆に必要なコバルトは兄。
--「鉄腕アトム」のラストはせめても手塚治虫の良心だったのでしょうか?
それ以前に原発に勤務された息子さん……。
--当時なら、国策としてウソが宣伝されて、騙されたといってもいいかもしれません……。


永井隆博士の著作の感想。下「」引用。

「長崎で原爆症のため亡くなった永井博士はかつて「この子を残して」という手記を書いているが、これを読んだ時、僕にも同じ思いが走った。」

永井隆博士の場合は、先達の科学者たちが放射性障害でひどいめにあっておられたことを知りつつ、多くの患者さんを救うために、危険を背負いました……。
--そして、白血病になり、二度目の被曝として原爆をうけました……。

当時の社会党のことも書かれてありました。下「」引用。

「地方選挙でも国政選挙でも一票にもならぬとはどうしたことか。
 社会党の飛鳥田委員長の発言にも、たしかに疑問があった。反原発を貫く姿勢が消えたような印象さえ与えた。
 しかし、社会党福井県本部書記長の小木曾和子は、社会党の姿勢は変っていないと強調している。つまり、原発の新増設は凍結という立場をとっているというわけだが、既設の悪魔の火を傍観するのは一歩も二歩も後退することを意味するのではないか。」


また、三島由紀夫の15歳の詩「凶(まが)こと」も。下「」引用。

「わたしは夕な夕な
窓に立ち椿事を待った
凶変のどう悪な砂塵が
夜の虹のように町並の
むこうからおしよせてくるのを」


カリスマとは『聖霊』から来た言葉という人がいる。
--神とは関係ないのが現代のようだ……。

刈羽村原発では、田中角栄のことが書かれてありました。
--彼のよいところばかりしか言わない人たちにも気をつけてもらいたいとボクは思います……。








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