龍の声

龍の声は、天の声

「漢方医に学ぶ」

2014-09-20 00:56:24 | 日本

【1】気血水について

・漢方では体の中には気(エネルギー、元気の元)と血(体液のうちで赤い色のあるもの、血液など)と水(体液のうち色のないものや精微物質、精液など)がある。

・正常時には、これらが過不足なく(気が中心となって)身体を巡っている。ところが病的な状態になると様々な症状を表す。気、血、水の理論では、病的な症状は気血水の内のどれが不良を起こしているのかで変わってくる。

・臨床上では単独で変調を来していることはまれで、お互いが複雑に絡み合っているのが普通である。

・おなじ頭痛という症状でも、気の変調によるもの(例:のぼせて頭痛がする)や血の変調によるもの(例:首から上の血行不良で頭痛がするもの)、水の変調によるもの(例:体内にだぶついた水分が上半身に集まって頭痛を起こす)などがある。ほかにも色々な原因がある。漢方治療では根本の原因をただす治療を行うので、若干の時間はかかるが、鎮痛剤を長く飲み続ける上に量が増えてくるといった様なことはなくなってくる。



【2】気の異常

漢方の気とは体を動かすエネルギーのようなものである。このエネルギーは生まれながらにして親から受け継いだ「先天の気」と生まれた後に飲食物から得られる「後天の気」とに分けられる。気は正常なときには身体を巡っているのだが、何かしらの原因によって動きが悪くなったり(気欝)、動きすぎたり(気逆)、不足(気虚)したりする。

(1)気虚
気力が沸かない、何となくだるい、元気が出ない、根気が無くなった、動作が物憂い、食欲が落ちた、手足がだるい、良く風邪を引く、内蔵が下がっている、便が柔らかい、下痢しやすいなどは「気虚」という気が少なくなっている状態である。このようなときには朝鮮人参や黄耆という気を増やす生薬をよく使う。黄耆と人参の配合された処方は参耆剤(じんぎざい)といって気虚の治療の基本形である。

(2)気欝(気滯)
気分が重く憂鬱、頭が重い、喉がつまった感じがある、季肋部(肋骨の下の方)が使えた感じがする、腹が張る、朝起きにくい、ガスが良く出る、などは気の巡りが悪くなった状態で、ひどくなるとノイローゼになったり、不眠症になったり、ヒステリーになったりすることもある。そのほかに張ったような痛みが生じる。この状態が進行すれば、胃腸の機能が低下して血液が不足(血虚)したり、ストレスなどにより血行不良(於血)を生じる。このようなときには厚朴、紫蘇葉、枳実、香附子などを生薬として使う。また、気欝の時には肝の気の巡りも悪くなっていることも多いので、肝にたまった血の流れを改善することも考える必要が出てくる。

(3)気逆
気の動きは上に上がったままで下がらなくなった状態である。お腹のあたりから何かが頭の方に突き上がってきて、にっちもさっちもいかなくなった状態である。呼吸がしにくくなったり、激しい頭痛や心動悸や臍周りの動悸がしたり、のぼせて顏が真っ赤になったりもする。上の方に気が上ってしまったために、足が冷えたり、精神的に不安感が強くなり、すぐ物事に驚いたりもする。激しい腹痛発作におそわれる方もいる。このような状態を気が逆上した「気逆」という。このようなときは、上りつめた気を引きさげる桂枝を中心に甘草をよくつかう。桂枝と甘草の組み合わせはとても効果がある。



【3】血の異常

古人は体液のうちで赤いものを「血」と呼んでいた。現代医学では、赤血球や血小板などが血に相当する。血の異常は血の少なくなった状態と血の流れが悪くなった状態がある。飲食物やストレスなどによって血液の流れが悪くなった状態を「於血」と呼ぶ。於血があることで様々な疾患が引き起こされてくる。典型的なものに高血圧、脳血管障害などである。この於血を去る薬は駆於血剤と呼ばれている。

(1)血虚
文字通り血が少なくなった状態である。血が少ないことで、全身に栄養を送ることが出来なくなってくる。血の中には水分もあるので身体が乾燥気味になったりもする。血が少ないことは気も少なくなっているので、前述した気虚の症状も伴う。貧血状態だから、身体の血液循環も良くなく、冷え性になったり、顏色不良、痩せ、脾に血が巡らずに働きが弱くなり出血しやすくなる(脾は統血を司ると言う)等が症状としてわかりやすい。当然の事ながら治療には増血作用のある生薬の当帰、川弓、地黄、芍藥、阿膠などを使う。

(2)於血(血於とも言う)・・・・於は「やまいだれに於」と書く。
新選漢和辞典には「於」は血の循環が悪くなって起こる病気とある。この於という字に更に血が付いているのだから血の流れが悪いことは一目で想像できる。

現代人はストレスが多くなっているために気の巡りが悪く、その結果として血の巡りも悪くなっている。さらに食生活の悪さから、ますます於血の状態が悪くなる。血の流れが悪いことで免疫力も低下する。更に女性では子宮という臓器を持っているために、男性に比べて血に関する色々な病状を起こしやすい。生理に伴う症状や閉経前後に起こる更年期症状等が良い例である。

また全身で見ると高血圧に伴う様々な症状、血栓が出来たり、痔が出来たり、便秘したり、腹痛が起こったり、狭心症等になったり、とても命に直結するような病状が多い。漢方ではこのような血の流れが悪くなったときにでも血の流れを改善する薬があるし、最近の研究では駆淤血剤(淤血を改善させる薬)を服用することで、血球が酸化されずに柔らかさを保てるために、細くなった血管を詰まらせることなくするりと流れることが分かってきた。

於血によって引き起こされる症状は、目の周りの色素沈着(くまどり)、顔面の色素沈着、皮膚のかさつき、歯茎が暗赤色、舌が暗赤紫色になったり、クロっぽい斑点が出来る、舌の裏の静脈が太くクロっぽい、皮膚に蜘蛛の巣のような血管が浮いて見える、内出血しやすい、手のひらが赤い、臍の周りに圧痛がある、便秘、イボ痔などである。

このような状態があれば手遅れにならないように早めに治療しょう。於血を改善する薬は駆於血剤といい、牡丹皮、桃仁、当帰や芍藥(血虚でも使う)等がある。これらでも駄目なときには滅多に使わないが動物の生薬を使うこともある。


◎於血を引き起こす原因 

・運動不足 、ストレス、心身の疲労、長期間の病気、食事の不摂生(肉食の多食、加工食品の多食など)、生活環境の変化(過度の冷房や暖房)、虚弱体質


◎於血とかかわりの深い病気

・神経痛、リウマチ、関節炎、筋肉痛 、冷え症、肩こり 、皮膚癌揮症、アトビー性皮膚炎、乾性湿疹、慢性じんましん、外傷性癖血性序痛(ねんざ、打撲) 、疲労、血管神経性頭痛、脳外傷後遺症の頭痛、半身不随後遺症 、動脈炎、静脈炎、血栓性血管灸、動脈硬化症、高脂血症、高血圧症 、月経困難症、生理痛、不妊症 、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胆嚢炎、胆石症、腫瘍、できもの、前立腺肥大、慢性前立腺炎 、慢性腎灸、ネフローゼ、水腫 、性機能障害、不妊など、肝炎、肝硬変、気滞血

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