龍の声

龍の声は、天の声

「孫子の兵法④」

2014-07-31 21:28:03 | 日本

【九地篇】

◎九種類の土地の状態

用兵の原則として、次の九種類の地形が考えられる。
一 散地…自国の領土内
ニ 軽地…敵国内に少し踏み込んだ場所
三 争地…敵味方双方にとってそこを占領すれば有利で、争われる場所
四 交地…敵味方双方が進攻できる場所
五 ク地…多くの勢力に隣接した交通の要衝
六 重地…敵領土深く入り込んだ場所
七 ヒ地…山林や沼沢地など、進軍が困難な場所
八 囲地…入りやすく退きがたい、狭くうねうねした場所。
九 死地…死ぬ気で戦わないと全滅する場所

それぞれの戦い方は…
自国の領土内「散地」では、戦ってはならない。
敵国内に少し踏み込んだ「軽地」では、止まってはならない。
敵味方双方にとってそこを占領すれば有利で、争われる場所「争地」では、攻撃してはならない。
敵方双方が進攻できる場所「交地」では、道を絶たれないようにする。
多くの勢力に隣接した交通の要衝「ク地」では、外交で有利にもっていく。
敵領土深く入り込んだ場所「重地」では、略奪する。
山林や沼沢地など、進軍が困難な場所「ヒ地」は、ぐずぐずしないですみやかに通過する。
入りやすく退きがたい、狭くうねうねした場所「囲地」では計略によって戦う。
死ぬ気で戦わないと全滅する場所「死地」では、もう覚悟を決めて戦え。



◎敵を分断する

昔の戦上手は、敵軍に前後の連絡を途絶えさせ、大部隊と小部隊が協力しあわないようにさせ、 身分の高い者と低い者が救いあわないようにさせた。
上下が助け合わないようにさせ、兵士達が分散して集中しないようにし、集中しても整わないようにさせた。
利益があれば動き、利益がなければけして動かなかった。



◎先ずその愛する所を奪えば聴かん

あえて聞こう。敵が秩序だった状態で、今まさに攻めこもうとしている。これをどうやって迎え撃つか?
まず敵が大切にしているものを奪うのだ。そうすれば、こっちの自由に操れる。
軍隊を動かすには迅速が一番である。
敵がまだ準備を整えていないところへ、思いもよらないやり方で攻め込み、敵が油断している地点を攻めるのである。



◎死地に追い込め

およそ敵国に侵攻する時のやり方としては、敵国深く入り込めばこっちは攻撃しまくる他無いので、侵入された側はとうてい勝てない。
食糧や水の豊かな土地から略奪すれば、軍隊が餓え渇くことは無い。
兵士たちに休息を与え、疲れさせないようにし、士気を高め戦力を集中し、軍隊をうまく運用してはかりごとを行い、しかも敵がこちらの動きを察することができないようにしておいて、それから逃げられない場所に戦力を投入すれば、兵士たちは死んでも敗走しない。死に物狂いで戦うのである。
兵士はもう逃げられない、トコトンな状況になれば、かえって恐れなくなる。けして逃げられないとなると覚悟がすわる。敵国深く入り込めば団結する。もう戦うしか無いとなれば、戦う。
軍隊がこういう状況になれば、司令官がガミガミ言ったり規則で縛る必要は無い。自然と秩序が生まれ、みずから戦い、兵士同士に連帯感が生まれ、規律が守られる。
あやしげなマジナイの類を禁じ、兵士たちの疑いを無くせば、死に到るまで気持ちが他に移ることは無い。
兵士たちに財産を持たせないのは、別に財産を持つことを否定しているのではない。死の際まで追い込むのは、長生きを否定するのではない。
召集令状を受けた時、兵士達は涙に暮れて親類縁者との別れを惜しんだはずある。これは、この世の財産や命にまだ未練が残っているからだ。だから、これを断ち切る。
絶対に逃げられないという状況に追い込めば、人は専諸・曹カイのごとき勇敢な働きをするものである。



◎呉越同舟

配下の兵士たちをうまく統率する者というのは、たとえば卒然のようなものである。 卒然とは、常山にいるという伝説上の蛇のことだ。
その首を攻撃すると尾が迫ってくる。尾を攻撃すれば頭がくる。胴体をせめれば頭と尾が同時にかかってくる。
あえて聞こう。軍隊を卒然のような状態にできるか?できる!呉の人と越の人は互いに憎しみあっているが、同じ舟に乗って風が吹いてきたとすれば、まるで左右の手のように助け合うであろう。
だから馬や戦車を用意したからといって、それだけでは何の頼みにもならない。
兵士たちが皆等しく一定の勇敢さを持つまでに持っていくのは、そのやり方次第である。
強い者も弱い者も、みな等しく一定の働きをさせるのは、地形的条件が大切である。
よく兵士たちを統率し、手をつなぎあっているように一つにするには、そうせざるを得ない状況にまで追い込むことである。



◎司令官のあるべき姿

司令官は、静かでつつしみ深く、公正でなければならない。兵士たちに戦略・戦術を知らせてはならない。戦略や戦術、また部隊配置や迂回経路に変更を加えた時も、兵士たちには知られないようにする。
いざ兵士たちを率いる時は、まるで高い場所に登らせてから梯子を取り去るようにする。敵国深く侵攻して、いざ決戦となると、羊の群れを追い立てるようにする。
兵士たちは羊の群れのように追い立てられるのであり、進むべき方向をわきまえているわけではない。
兵士たちを集めて最も危険な場所に投入するのが、司令官の仕事だ。
地形的条件、押すか退くかという判断、人間心理については、よく考察すべきである。



◎それぞれの場所で、司令官が兵士たちに対して取るべき態度

およそ敵国を攻撃するやり方は、敵国深く侵攻すれば結束が固くなるが、まだ浅いうちだと脱落する者が多くなる。
本国を去って国境を越え、敵国に侵攻したところが絶地である。四方に道が通じる中心地がク地である。敵国深く入り込んだ所が重地である。
ちょっと入っただけの所が軽地である。背後が固く、前が狭いのが囲地である。どこにも逃げられない所が死地である。
それぞれの場所で、司令官が兵士たちに対して取るべき態度は、
散地…つまり自国内では、気持ちが離れやすく脱落者が多いので、司令官はよく統率し 、兵士たちの気持ちを一つにするように努める。
軽地…少し敵国に入り込んだ場所では、部隊間の連絡を密にする。
争地…敵味方双方にとってそこを占領すれば有利で争われる場所では、遅れている部隊を急がせる。
交地…敵味方双方が進攻できる場所では、守備を固める。
ク地…多くの勢力に隣接した交通の要衝では、結束を固める。
重地…敵領土深く入り込んだ場所では食糧の調達に注意する。
ヒ地…山林や沼沢地など、進軍が困難な場所では、さっさと通り過ぎるようにする。
囲地…入りやすく退きがたい、狭くうねうねした場所では、敵が作った逃げ道をふさぎ、味方を死地に追い込む。
死地…死ぬ気で戦わないと全滅する場所では、敵を倒す以外生きる道が無いことを示す。
兵士の心理として、囲まれれば抵抗し、戦わざるをえない状況では戦い、あまりにもまずい状況だと敵の言いなりになる。



◎死地に陥れて然る後に生く

外国の諸侯のはかりごとを知らないでは、同盟を結ぶことはできない。山林やけわしい土地、沼沢地などの地形を知らなければ進軍することはできない。地元の案内人を雇わなければ、地の利を引き出すことはできない。
これら三つのうち一つでも知らないなら、覇王の軍とは言えない。
覇王の軍とはどういうものか。もし覇王の軍が敵国を撃てば、その大国の部隊は散り散りになって結集できない。覇王の軍の勢いが敵国に加われば、その敵国は助けを求めて諸外国と同盟を結ぶことができなくなる。
このように、外交に努めるのでもなく、権力を積み上げるのでもなく、ただ自分のやりたいように勢力を伸ばして、結果として敵国に圧力が加わる。
自然に城は落ち、国は敗れる。こういうのを覇王の軍というのだ。
規格外の賞を施し、規格外の法令を掲げれば、大部隊を統率するのも一人の人を扱うようにうまくいく。
軍隊を統率するにはただ命令だけを与え、その理由を説明してはならない。有利なことだけを知らせて、不利なことを知らせてはならない。
ギリギリの極限状態に追い込んでこそ兵士は死のもの狂いで戦い、結果として生き延びるものである。
困難な状況に陥ってこそ、はじめて勝敗を自分のものにできるのだ。



◎始めは処女の如く、後には脱兎の如し

軍隊を動かす時は、十分に敵の意図を把握していることが大切である。敵の意図に沿って直進し、千里先で敵将を討ち取る。巧妙な戦い方とはこういうものだ。
いよいよ開戦となれば、敵国との関門を封鎖し、通行のための割符を折り捨て、使者の行き来ができなくする。
朝廷では全力を尽くして戦争に関する事を進める。敵が動揺していれば必ずそれにつけこんで攻め入り、まず敵が大切にしている所を密かに攻撃目標に定め、黙って敵の動きに従っているように見せて、ここぞという場面で一気に攻撃に転じる。
はじめは処女のようにしなやかに。そうして敵が門戸を開いたところで、後には駆け出す兎のように、鋭く攻撃する。こうすれば敵はとても防ぎきれるものではない。








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