不整脈が心配なあなたに心臓のお話
脈が跳んだり抜けたりする期外収縮は問題ない
(長野 修)
生命維持の要となる心臓。これが不具合を起こすことは、死に直結する可能性を秘めているだけに、怖い。今回は、この心臓に注目し、不整脈について考えてみよう。
◎非常に幅の広い病気、不整脈
取材したのは、杏林大学医学部・第二内科の准教授・池田隆徳先生だ。同氏は、同大学内の不整脈センターの統括責任者を務める不整脈の第一人者である。
不整脈は、文字通り脈の乱れを生じる病気。その種類は多く、大きく分けると、脈の規則性が失われるもの、規則性はあるが脈が速くなる「頻脈」、逆に遅くなる「除脈」などに大別できる。池田医師は、不整脈の特徴についてこう話す。
「不整脈は非常に幅の広い病気です。一言で不整脈と括ってしまいますが、ほとんど心配のないものから、突然死する可能性があるものまで様々です、非常に幅が広いのが、この病気の特徴です。ですから、不整脈と診断されたら、どんな不整脈で、どのくらいの危険性があるのか、必ず医師に聞いて確認することが大事です」
まずは、「問題のない不整脈」についてのインタビューを紹介する。
◎脈が跳んだり抜ける期外収縮
Q:危険ではない不整脈とは、どういうものでしょうか?
A:池田 脈が跳んだり抜けたように感じる期外収縮という不整脈は、心配いりません。脈が跳んだように感じるのは、トントントンと同じリズムで脈が打つ中で、少し前倒しに早く打ってしまうものがあって、その部分の脈が跳んだように感じられます。中には「首元や喉元が何かトクッとしたりピクッと感じる」という患者さんもいます。
Q:脈が跳ぶ感じが続くと、本人は非常に不安に感じると思いますが。
A:不安に感じる患者さんもいます。ただ、人間の心臓は、1日に約10万回鼓動していますが、仮にその3分の1、つまり3万回くらい期外収縮が出ても危険性はありません。場合によっては、2段脈といって、正常脈と期外収縮を交互に繰りかえす不整脈でも、心臓の機能に全く問題がなければ、一般的には危険ではありません。
Q:私も期外収縮がありますが、結構、こうした症状を持つ人は多いのでしょうか?
A:100人くらいの患者さんに対して24時間心電図をとると、だいたい7~8%は期外収縮が検出されます。
心臓は、心臓が動かしている
Q:そもそも期外収縮が起きる原因は、何なのでしょうか?
A:特別な原因はないことが多いです。ただ、自律神経との関連は多少あって、緊張したり交感神経が高ぶっていると少し出やすくなります。しかし、多くの場合は、異常なことが何も起きていないにもかかわらず、気まぐれのように出てきます。
Q:老化は、関係ありますか?
A:ありません。そのため若い人にも出ます。面白いのは、期外収縮があっても、しばらく様子を見ているうちに自然となくなるケースがかなりあるということです。
Q:心臓を動かす電気的な信号は、どこから出てくるのですか?
A:心臓そのものから出てきます。人間の体を動かす信号が脳から発せられるように、心臓を動かす信号は、心臓の中の洞結節という部分から1分間に約60~80回出ています。
Q:一般的には、脳から発せられた信号によって動いていると考える人も多いと思います。
A:違うんです。心臓で1つの世界を形成しているのです。例えば、心臓を体から取り出しても、しばらくの間は心臓が動いています。時間が経過すると血液の供給がなくなるのでやがて動かなくなっていきますが、それまで動くのは、心臓の中に電気信号を出す中枢があるからです。
生命維持の要となる心臓。これが不具合を起こすことは、死に直結する可能性を秘めているだけに、怖い
Q:脳とは、関係がないのですか?
A:ありません。ただ、心臓は自律神経に支配されているので、それによって脈拍が速くなったり遅くなったりはします。人は興奮したり緊張したりすると交感神経が優位になり、脈拍は速くなります。逆にリラックス状態になると副交感神経が優位になり、脈拍はゆっくりになります。
非常に極端に自律神経の働きが偏った場合は、問題を生じることもあります。例えば、副交感神経が何らかの原因で極端に亢進すると、心臓に抑制的に働くので、一過性に心停止を起こしたり、逆に交感神経が極端に亢進すると速くなりすぎて、動悸を感じることもあります。
このように、自律神経は心臓の動きに影響を与えますが、ただ、心臓を動かす電気信号そのものは心臓内から発せられています。
治療の必要はない
Q:期外収縮が何か重篤な心臓病の前段階ということはないのでしょうか?
A:ないと考えてよいです。ただ、心筋梗塞や心筋症といった心臓の動きが悪くなる病気を患っている人、つまり心機能が低下した人の場合は、期外収縮も心臓の機能に影響を与えますので、治療することもあります。しかし、心機能が正常であれば、一般的には治療する必要はありません。
Q:そうすると、脈が跳ぶのを不安に感じて病院を受診した場合は、基本的には、様子を見るということですか?
A:そうです。心電図の検査などをして、心臓の機能に問題がなければ、基本的には治療は行わず、様子を見ます。ただ、病院を受診するということは、不安があってのことですから、患者さんの気持ちは大事にします。
例えば、「問題のない不整脈なので大丈夫ですが、不安ですか?」と聞いてみて、「やっぱり不安です」となると、不整脈の治療薬を出す場合もあります。「問題がなければ、いいです」となれば、「じゃあ、様子を見ましょう」ということで、1年に1回程度心電図をとりながら様子を見るというのが、普通です。
Q:期外収縮を治す薬があるんですね。
A:あります。ただ、一般的には不整脈を治す薬は作用が強いので、治療のいらない不整脈に対しては、あまりお勧めできません。
Q:不整脈の原因とは? 症状や解消法について
A:不整脈の原因は、ストレスや自律神経と深い関係にあり、不整脈は自律神経失調症の症状の1つでもあります。そんな不整脈の原因、症状、解消法について説明します。
Q:不整脈とは?
心臓は1分間に60回から70回、一定のリズムで脈拍をうっています。この脈拍が不規則にとぶ、遅くなる、速くなる、乱れる、といった状態を総称して「不整脈」と呼んでいます。
心臓には電気刺激の発生源があります。その刺激がリズミカルに収縮と弛緩(ちぢんだりゆるんだり)をうみだして脈拍をうっています。この規則的なリズムが乱れた状態が「不整脈」です。
ただし「脈拍がとぶこと」自体は健康な人でもたまに起こるもの。その程度の不整脈は日常生活には支障ありませんので気にしなくても大丈夫です。
Q:不整脈の症状
不整脈には、脈が不規則になる、速くなる、遅くなる、などのタイプがあります。
Q:脈拍が速くなる不整脈 (頻脈性不整脈) の症状
A:頻脈性不整脈では、脈拍が早くなって動悸がします。めまいなどの脳貧血症状をともなうこともあります。
重い場合は1分間に240回から250回も脈拍を打つこともあり、心臓が十分な血液を送り出すことができなくなって血圧が低下し、失神してしまうこともあります。
無理をして立っていると意識を失って倒れてしまう可能性もありますので、なるべくすぐに横になるようにしましょう。その時は、あお向けで背中の下に座布団などの当て物をして、上体が少し起きるような体勢をとるようにします。心臓に負担をかけないように、この体勢のまま落ち着くまで安静にしましょう。突然死や脳梗塞の原因となるケースもあるので、少しでも早く病院で検査をする必要があります。
Q:脈拍がゆっくりになる不整脈 (徐脈性不整脈) の症状
徐脈性不整脈は、脈拍が1分間に40回、または40回より少ない状態。重い場合は、数秒間、心臓が停止する状態が起こることもあります。
脈拍が5秒以上もとぎれると、目の前が真っ暗になってめまいを起こします。7秒から10秒とぎれる状態では失神やけいれんなどを引き起こします。
Q:脈拍が不規則になる不整脈 (期外収縮) の症状
A:期外収縮の不整脈とは脈拍がとぶ状態のこと。のどが詰まった感じがする、胸がぎゅっとなる、胸に不快感を感じる、胸にチクリとした痛みを感じる、というのが主な症状。
この期外収縮は不整脈のなかで最も多く、心臓に何の異常もないのに起こる場合がほとんどです。精神的ストレスや生活習慣からくる身体的ストレスによる「自律神経の乱れ」が原因。一過性のもので、一瞬または数十秒以内でおさまるのが特徴です。

