Dreaming Dragon

ryuu's diary and more...

M宮コーポ

2006年09月22日 | weblog
何年ぶりかで西荻窪へ。某有名劇団の演出家によるワークショップで半月ほど通ったことがあるくらいで、ほとんど縁のない街。待ち合わせまで時間があったので、その会場となったスタジオに足を向けてみるも洒落たゲルマニウム・サロンになっていてガックシ。
時間まで駅前のジョナサンでノートを広げる。思い切り煮詰まっている。締切りまであと10日。
以前映画のオーディションで知り合った友人が駅まで迎えに来てくれた。とってもジューシーで美味しい餃子で腹を満たし、コンビニでお酒やつまみを買って彼のアパートへ。築後40年で老朽化も進み、来月には解体作業が始まるという「M宮コーポ」。某SNSサイトでの取り壊しを惜しむ声が非常に気になって、どうしても解体前に訪れてみたかった。
友人の部屋は増築した端の部屋で、外見はさほど古いと思えなかった。しかし他の部屋は…。跳ねれば抜けそうな薄い床の廊下を挟んで両側に、「一応ドアですけど、何か?」的扉が並ぶ。そして廊下の突き当たりには、夜中に催してもきっと我慢するだろうなという集合トイレ。大半の住人は、先月の退去依頼を受けて既に引き払っているらしい。空き部屋になった部屋の扉は、台風前夜の木造住宅よろしくガッチリとクロスに板が打ち付けられている。扉の板より打ち付けられた板の方が頑丈そうなのはきっと気のせい。
そんなアパートだから、いくら増築されて新しめの部屋とはいえ相当…なのかと思っていた。しかしいざ彼の部屋に入ってみて、そこに広がる小世界に息を飲んだ。こざっぱりとして清潔感があり、それでいて暖かみがあって、随所にアート・デザイナーとしてのこだわりが見られる和的空間。そんな中に大画面のMacが白く浮き上がって見える。なるほど。これは・・・素敵だ。
部屋の中に流れる懐かしい昭和歌謡。映画、音楽、絵画、旅行、そして人生について。貴く、贅沢で、心地よい時間の流れの中で、話は尽きることなく止め処なく続く。もう二度と訪れることのできないこの部屋だからこそ、一刻一刻が愛おしい。
まだ薄暗い窓の外で、始発が動き始めた。そろそろ帰らなければ。一旦帰って、今日も仕事だ。何も書けないまま締切り日がまた一日近づいてしまった。でもそれでも、こういう日があるからこそ明日に希望が持てるわけで。
「M宮コーポ」、解体されてしまう前に来られてよかった。T村さん、お邪魔しました。今度は新居で鍋でも囲みながら引っ越し祝いをやりましょう。