寓話の部屋

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エルフイヤーは地獄耳

2021-07-15 09:23:11 | 召喚大統領が異世界を逝く!

それは、ちょうど戦略級極大魔法船をモトヒノの都市、ヒロスエとアレナガに投入・起動させることに成功した数日後のことであった。

大洋戦争中の激務の結果、前大統領フランクフルト・D・ルーズソックス(FDR)が、持病の高血圧のため、女子高生の愛人とラブ・アフェアの最中に腹上死した(公式には食事中の脳卒中と歴史には記された)後を継いだハリー・ショウ・トゥルーマン(Harry Show Truemann、つづりの最後に“n”が二つ付くマンよ!)大統領は、長い戦争にようやく終わりが見えてきたと、昼食後のコーヒーの香りを楽しみながら、しばし寛いでいた。
そこに大統領補佐官が血相を変えて部屋に飛び込んできた。
”姉さん”事件です!!

「ブゥッーーー!!」
トゥルーマン大統領は口に含んだコーヒーを思いっきり吹き出した。

その数分前、ワシントウ・DCにある大統領官邸ホワイトライハウスにどこか(とくに耳)奇妙な妙齢の美女(爆乳)が訪れた。
「こんにちはぁ、エルフのパコママお姉さんと言うんですけど。今、大統領さんいらっしゃいます?ちょっと近くまで来たんでご挨拶に来たんですけど、入れて貰えます?ほほほ」

財務省シークレット・サービス指揮下ホワイトライハウス警察隊隊員は、「神の念話指令を受信した」類の不審人物には、慣れっこであった。
しかし、オンステージの警察隊シフトの中には必ず、課長級以上の高官が配され、彼らの間では「エルフを自称する」「かつ耳が長い(それは 耳と言うには あまりにも長すぎた 長く 細く  そして あざとすぎた)。」「驚異の胸囲」の複数の条件を満たす人物、すなわちエロフが現れた場合、コード「姉さん」を発動し、大統領まで上申することが課長研修で叩き込まれていた。
「すぐに大統領に知らせるんだ!」

「エルフ」それは、人造人間である。
古代超魔法文明の人間が製作したデザインヒューマンである。
魔法能力に特化し、莫大な魔力抽出力・同時行使魔法数を誇る最強の魔法兵器として作られた。
魔法行使に特化しすぎて、ちょっと知能の方はアレげであった。
容姿はおっとりとしたカワイイ永遠の17歳で固定されているが、なぜ爆乳にする必要があったかは謎である。
強力な魔法兵器だったが古代超魔法文明人もちょっと頭がアレ過ぎると反省した。
こんなに強いのに、寿命も魔力が続く限り、殺されない限り不死というデザインも、よく考えると危険だったなと、少数ロット生産で打ち切られた。
後継のデザインヒューマンには、エルフほどの魔法能力は無いが知能を高めたタイプの妖狐族を作った。野良化すると困るので寿命も500歳くらいで死ぬようにした。ちなみに妖狐族がロリ貧乳体系になったのは、エロフをデザインした学閥とライバル関係の学派がヒンニュー教徒であったからであるが、筋には一切関係が無い。
妖狐族は、古代超魔法文明人の思惑通り、古代超魔法文明が滅んで数が減っていき、現代に生き残っているのは、モトヒノの時間庫を住処とする一匹のみである。
エルフは、古代超魔法文明人の危惧した通り、古代超魔法文明が滅んだら、主人を失い、やはり野良化したのである。生殖能力はないが、強力な魔法能力でめったに死なない。
古代超魔法文明人は、強力すぎるエルフが反逆しないように、人格にセーフティをかけた。

まず上位者権限を持つもの命令には絶対逆らえない。
その権限者の命令と自衛以外の人間への攻撃はできない。
人間の家屋や施設には許可を得ないと立ち入ることができない。
魔力が無いところでは、わりとすぐ死ぬ。故に大きい川や海を渡れない。
生存に必要な最小限の欲望しか持てない。

などの様々な制限を刷り込まれていたのだった。もっともその条件を現代の人間がすべて知っていたわけではない。

古代超魔法文明が滅んだ大戦争が終わるとエルフに命令する権限を持った人間も死に絶えた。エルフは好んで戦争行為に加担する性格にはされていなかったので、性格的に向かない戦闘を指示する人間がいなくなって、内心はせいせいしていた。しかし、上位権限の委譲のシステムがエルフにもよくわかっていなかったので、再び、「ご主人様」が現れる危険性のある人間たちとは没交渉の生活スタイルを貫いていた。

整教徒たちが新大陸に少人数で入植し、地元住民と混交しながら、勢力を広げ始めて80年程度したころだった。
開発が森の奥深くにまで及ぶようになり、そんな引きこもりのエルフとのファーストコンタクトを果たした。
最初は開拓者達も友好的に振る舞い、物珍しさと、エルフの一見温和な態度もあって、仲良く交流していたのだが、人間集団の中にはやはり不埒な人間は必ずいるものである。エルフのあまりの爆乳のエロフさに目がくらみ、乱暴を働こうとしたものが出現した。
その途端、友好的だったエルフ達の態度は一変し、機械的に殺戮を始め、強力な魔法で開拓者集団の街を焼き尽くした。銃で武装した集団もまったく相手にならない。
そんな事件が数回起こると、エルフは恐怖の象徴に変化した。
政府も腰を上げ、エルフ達になぜ殺戮を始めたのかと慎重に聞き取り調査をしたところ、単に害されようとしたから自衛しただけとしれっと言われて、呆然とした。
一人の不埒者の処罰に街ごと焼くという、彼女らに罪と罰の定量という概念は理解しがたかったのだった。街をひとつ焼くのは、それでも彼女ら的には最小単位だったらしい。あまりの思考の異質さに、人間に似た姿から彼女らの思考様式を人間のように考えたのは大きな間違いだった、とんでもねえバケモノだ、と当時の政府首脳は悟った。
古代超魔法文明人が扱えきれねえと少数ロット生産で打ち切られたのは伊達ではない。ピーキー過ぎて現代人にゃ無理だよ!

しかし、魔力さえあれば生きていけるエルフは特に人間側に要求することはなく、没交渉にさえしておけば概ね無害なので、少数の彼らの住む居留地の森を国定公園に指定し、自然保護の名目で禁域として扱うことで問題に蓋をすることにした。
その後、100年以上、人里にエルフが降りてくることはなく、一般ツイステ人にとってエルフはおとぎ話の住人と化していった。
かつて猛威を振るった居留地付近の地域では冬に長い耳のコスプレをして「悪い子はいねがー焼いて灰にするぞー」という風習が残っている。

その危険性と慎重になるべきエルフ対策は、代々、ツイステ合州国大統領の申し送り事項に含まれていたのだった。
ちなみに上記の人格に刷り込まれた性質から、敵勢力であろうが、かならず訪問先で、入場・入室許可を得ようとするのだが、「ふざけるな!入ってくんじゃねえ」と震えて拒絶すると、にっこりと笑って、屋敷だろうが軍隊の籠もった要塞だろうが敷地の外から敷地ごと丸焼きにするので、そんな厄いエルフが「きちゃった♥」と来たら、なんとか穏便に帰っていただくしかないのだ。

ホワイトライハウスのオパールオフィスのソファにパコママお姉さんが座って紅茶とケーキを嗜んでいる。
「(なぜ自分の代で現れたんだ…100年以上出なかっただろうに…!!)」
懊悩しながら、トゥルーマン大統領が尋ねた。
「我が方の記録では102年前にアーカム市に現れた振りですよね(ちなみに焼き払われた)。この度はどうして来られたのですか?」

「いや、大した用件やあらへんのやけどね。いや100年ぶりにって、もうそんなになりますか。久々に人里に下りたら、いろいろ町も発展してて、お姉さんビックリやわあ。いやね、森から出て、歩いてきたんやけど、途中で魔動列車っちゅうすごい機械見て、更にビックリ。そういえば昔(約5000年前)はあんなのがあったわねえとか思って懐いわー乗ってみたいと思ったら、なんか改札とかいうとこで入れてくれなくて。しょうがないのでまた歩いたんよ。何ヶ月か、かけてテクテクってな。昔は大きな川には難渋したけど、なんかどこも大きな橋が架かってて便利になったわよねえ。思い切って息(魔力補充)を止めてピューッて渡っちゃいました!」

「いえ、畏れながら、どうやって来たかでは無くて、なぜ来たかの話なんですが…」

「ああ、せやったなあ。いや、森に住んでると人里の出来事には疎くなって。まあ別に困らんのやけど、これでも、うちら魔力にはちょっと敏感でなあ。」

「よく存じております。」

「なあんか、最近、龍脈の強い乱れが感じられてなあ。乱れた龍脈を辿って、アラモードとかいうところに行ってみたんよ。そしたら、あったんだけど。」

「はぁ…」
一応しらばっくれてみるけど、もちろん戦略級極大魔法の実験場である。

「つかったんでしょ、アレ…」
おっとりしたふんわかした雰囲気がカチッとスイッチが入ったように無表情に一変した。

「戦略級無限再帰陣熱核術式の行使後と認定される魔力枯渇・龍脈損傷を認めました。この種の攻撃は我々人類隷属下の知性体を含む全人類類縁種への攻撃と認定され、無制限報復対象となります。」

そして、またもとの雰囲気に戻った。
「まあでも、死者は出なかったって話だし、実戦使用でないなら、まあ一回くらいは大目に見てあげようかナ♪あれを使われると魔法文明滅びちゃうのよ、マジで。ホント危ないのよ。実際、前のご主人様達は滅んじゃったし。」
そして、魔力枯渇はエルフにとっても彼女らを殺しきる可能性の高い、数少ない危険な脅威だった。

とても、既にモトヒノに対して二発も使ってしまったとは言えない雰囲気だった。
「そ、そうですか。知らぬこととは言え、申し訳ない」

「気をつけてねー。どこにあるのか知らないから、この大陸ごと焼くのはちょっと大変なのよーホホホ。お姉さんとの約・束・だ・ゾ♪」

「(お姉さんって歳かよ。不老のバケモノがっ!)アッ、ハイッ、ハハハハ」

「あらこのケーキ美味しいわね。ちょっと包んで貰える?あ、でもエルフの里までは持たないわね。まあ途中で食べちゃっても良いわよね。」

この事件以降、ツイステ合州国の戦略級極大魔法は抜かずの宝剣と化す。
コーライ戦争でマサカ将軍の使用申請を足蹴にしたのはこういう背景があった。
モトヒノへの使用の報道記事が目に入らないように報道管制を引き、帰り道はアテンダントを付けて、アゴ足つきで魔導列車の一等車で速攻、居留地に送り返した。パコママお姉さんは列車に乗れて大喜びしていた。

ダイシン帝國が機密を盗み出して、実験に成功したときは報復がないかヒヤヒヤしたが、どうやら海を越えるとエルフにも使用は検知できなかったようだ。あるいは海を超える手段が無かったせいかもしれない。
北コーライが、戦略級極大魔法実験を行ったという主張に過敏になったのもこういう背景があった。



4 コメント

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Unknown (チキンサラダ)
2021-07-18 05:29:39
このエロフの語り口って、何をモチーフにしてるのか、考え中。
女子高校生の愛人のところで腹上死は、ネルソン・ロックフェラーがモデルですか?愛人は女子高校生ではなかったようですが。
Unknown (チキンサラダ)
2021-07-18 05:39:43
出た!「来ちゃった♥」!!!w
Unknown (ryouchin)
2021-07-18 10:48:47
関西弁の女キャラは、定番です。
特に京都弁は腹黒キャラとして描かれる創作物が多いようです。
年齢的に関西のおばちゃんが入っています。
ネタ探しが楽しみになっていたら余計なお世話ですが、特定の正答がないのはさすがに気の毒なのでw
Unknown (チキンサラダ)
2021-07-19 20:12:53
なるほど、関西弁女は定番なんですね。どこかで見聞きした言い回しと思ったのですが、それらの創作物を、見たときの私の記憶にも残ってたのかもしれませんね。

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