遊煩悩林

住職のつぶやき

お宝拝見

2009年10月20日 | ブログ

名古屋栄の松坂屋美術館で開かれている「東本願寺の至宝展」に行ってきました。

東本願寺の至宝展
東本願寺しんらんしょうにんホームページ http://www.higashihonganji.jp/
松坂屋 http://www.matsuzakaya.co.jp/museum/higashihonganji/

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写真は幸野楳嶺(http://ja.wikipedia.org/)作の「蓮池図」。
これは真宗本廟(東本願寺)の御影堂の後堂から式務所棟につながる廊下の杉戸に描かれたものといいますから、本山に出仕(袈裟と衣をつけてお参り)された僧侶は薄暗い廊下で観たことがあるのかもしれません。
御影堂には蓮の絵が多数描かれていますが、この蓮池図は一般の参詣者には目に触れることもない至宝といってもいいのでしょう。
個人の好みだけで鑑賞するのはどうかと思いますが、数々の至宝の中でも好きな作品です。どこが好きといわれれば・・・茎に描かれたブツブツも・・・気になるところではありますが、やはりその「水の色」です。私たちがこの世で目にする蓮は必ず「泥水」に咲きます。ところが楳嶺が描いたのは『群青』でありました。この群青色に何を込めたのか、いろいろ想像させられます。濁った泥水からしか咲かない花は、まさしく煩悩の濁りによって輝いてくる世界を表現するものですが、この群青色は欲望の「群れ」としての私たちでありましょうか、それとも極楽では清浄な水からでも「おさとり」の花が咲き乱れるということでしょうか。
仏説阿弥陀経に説かれる七宝の池[金・銀・瑠璃・玻璃(水晶)・硨磲(珊瑚)・赤珠(赤真珠)・瑪瑙(深緑色)]の8つの功徳(軽・清・冷・軟・美・香・飲無厭・飲無患)に由来するといわれるこの図は、明治27年の作とされています。ときの厳如上人に制作を依頼された楳嶺は、人力車で相国寺や御所の弁天池、二条城、神泉苑や伏見まで写生に行ったそうな・・・。
楳嶺が仏説をどのようにいただき、またどんな想いでこの図を仕上げたのか、しばし想いを馳せてみました。
車に乗って松坂屋へ行き、エレベーターで上階に上がり、これは好きだ嫌いだといって作品を眺めて帰ってくるような私にとっては、楳嶺の過ごした時間はとても「豊か」なものであったような気がします。

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