大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・オメガとシグマ・44『少しは成長したかと思う兄ちゃんであった』

2018-09-28 06:23:10 | 小説3

オメガとシグマ・43
『少しは成長したかと思う兄ちゃんであった』




 入学式も済んでいない新入生の振る舞いとしてはいかがなものか?

 先生が説明の真っ最中だと言うのに教室を飛び出してきやがった。

「入学式に、あんな席はあり得ないわよ!」


 どうやら、式場での自分の席が気に入らないらしい。

「学校は集団生活だ、多少のことは辛抱! さっさと教室に戻れ!」
「だって、あれじゃ留年生だと思われちゃうよ!」
「な、なんだよ」

 菊乃は一枚のプリントを差し出した。

 担任はよくできた先生のようで、式場での着席場所をプリントで配ってくれていたのだ。
 入学式は中央通路を挟んで上手側が女子、下手側が男子になっている。
 各クラスは男子20人女子22人……なんだけど、菊乃の三組だけが女子23人。
 席は横方向に22しかなく、女子ドンケツの菊乃はあぶれてしまう。
 で、あぶれた菊乃は下手側の男子の一番端っこに飛ばされている。
 男子は全クラス20人なので、菊乃の男子列だけが21人になり、それも女子の菊乃がなのでひどく目立ってしまう。

「ほらね」
「でも、なんで留年生なんだよ」
「いるって噂なのよ、女子でね」

 一瞬大丈夫だと思った。ダブった生徒は式には出してもらえないのだ。二年生以上になると、このことは知っている。
 だが新入生は知らないだろう。ひとりポツンと男子の横に座っていたらワケ有と思われても仕方がない。

 ためらいはあったけど、一年三組の教室に戻った。
 菊乃は先に席に戻し、廊下から他の生徒には見えないようにして担任の先生を呼んだ。
 俺に顔を向けたので分かった、担任は田中という目立たないオジサン先生だ。
「なにか、緊急連絡?」
「ま、そんなとこです」
 俺はかいつまんで、菊乃の席の問題点を指摘した。
「うーーん、君の言うのももっともだね」
 堂本やヨッチャンと違って聞く耳は持っておいでのようだ。
「僭越な申し出ですみません」
 相手がちゃんと対応してくれると、こっちも丁寧な返答をしてしまう。
「ちょっと相談してみるよ」
 そう言うと田中先生は「二分間だけ待っていなさい」と教室の新入生に告げ、隣の四組に向かって担任と相談し始めた。
 きっかり二分で済ませると「善処したよ」と言って戻って来た。

 結果、三組の女子は式場の椅子の間隔を詰め、菊乃の席を増設することになった。

 だが、物言いがついてしまった。

「一列だけ間隔を詰めると列が乱れてみっともない」
 言い出したのは堂本だ。
 けっきょく式の開始を五分遅らせるという結果だけ残して、元のまま実施されることになってしまった。

 席には不満の残る菊乃だったけど、俺や田中先生の気配りには納得している様子だ。

 やっぱ、高校生になって少しは成長したかと思う兄ちゃんであった。

 


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