大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・15『心合寺山古墳のソンナワケ』

2017-01-10 10:56:25 | 小説6
ひょいと自転車に乗って・15
『心合寺山古墳のソンナワケ』
        


        


 いやー 知らんかったわ!!

 京ちゃんがドラマのオープニングのように感嘆の声を上げた。
 通り過ぎる中河内中学の生徒たちが変な目で見ている。
 京ちゃんの声が大きすぎるのが直接の原因なんだけど、ここは中河内中学のテリトリー、制服が全然違う中学生がドラマの主人公みたいにキャピキャピしていては、あまり好意的な関心を持たれない。ちょっとアセアセ。

 ね 中に入ってみよ!

 小気味よく自転車のスタンドを立てると、兎を思わせる足どりで古墳の頂上目指す京ちゃん。
「あ、ちょ、鍵、待ってぇーー!」
 わたしは、京ちゃんの自転車の分まで鍵をかけて追いかける。
 ドジなので、途中で躓き、早くも堀を跨ぐ土橋に差し掛かった京ちゃんがケラケラ笑う。
 背後で中河内中学の男子たちが注目しているのを感じる。やっぱ京ちゃんはヒロイン、わたしはモブ子だ。

             

「ミッチーが誘ってくれへんかったら、知らんままに卒業してたやろなー」
「ほんとうに知らないの?」
「うん、心合寺山古墳 (しおんじやまこふん)は授業では習たけど、じっさい来るのは初めてや」
「うん、初めてなんだよね」
 あたしには軽い失望があった。京ちゃんなら八尾のネイティブなんで古墳と古墳にまつわる話を知っているんじゃないかと、始業式が終わるのを待ってやってきたのだ。
「ここてビフォーアフターやねんねえー」
「なんか古墳の美容整形の見本だね」
 この心合寺山古墳は、西半分が作られた時そのままに石なんかが葺いてあり、そこだけ見ればロケットの発射基地みたい。
 東半分は草や木が生えたままで、ボンヤリ見ていると丘にしか見えない。古墳の今と昔が同時に分かる仕掛なんだと、わたしにでも分かる。
「八尾市は貧乏やから、復元するお金ケチったんやろなあ」
 腕組みしてしみじみ言う京ちゃんは、雰囲気の割に身もふたもない。
「そんな理由なの?」
「うん、ゴミ袋は小さなるし保育所は少ななるし、台所事情は苦しいと思うでー」
 そうい言われると、なんだかケチっているようにも見える。
「ね、ここって、どんな人が葬むられてるんだろ?」
 なるべく自然に聞こえるように声にした。
「そら決まってるやん、昔の偉い人!」
「えと、どんな偉い人なんだろ?」
「そういうのは、ただの偉い人でええねん。それがロマンというやっちゃ!」
 そう言うと、京ちゃんは古墳の頂上に走り出した。
「あ、コケるよ!」
「ダレかさんとはちゃいます~」

 そう言いながら、京ちゃんは頂上に上がる階段の途中で見ごとにつまづいた。
「ノワーー!」
 女の子らしくない悲鳴を上げた京ちゃん。スカートが翻ってシマシマパンツが見え……ぱなし?
 京ちゃんは、つまづいた直後の姿勢のままストップしてしまった!
「え、え、えー!?」
 京ちゃんの向こう、頂上の上を飛んでいた鳥も停まって……古墳の東側の道を歩いたり走ったりしていた中河内中学の生徒たちもストップモーション。西の眼下を走っていた近鉄電車も上りと下りが交差したまま停まっている。

「やあ、よく来たね」

 松坂桃李さんの声がした!
 振り返ると、頂上脇の二本の木の前に大魔神みたいな昔の鎧を着た髭面が立っている。わたしは金縛りになって身動きができない。
「驚かしたなら申し訳ない、わたしは、この陵の主でソンナワケという者だ」
 喋りながら髭面は近づいてくる。
「めったなことで昼間に現れることはことはできないんだけどね、君の能力と条件設定がピッタリ合わさって、君の前に現れることが出来た……」
 そう言いつつ、髭面はむき出しになっている京ちゃんのシマシマパンツをしげしげと見ている。いやらしいオッサンだ。
「あ、あの、京ちゃんのスカート下ろしてやりたいんですけど」
「それはダメだ。この階段のちょうど真ん中で乙女のお尻がむき出しにならなければ、わたしは姿を現せないんだよ」
 声は松坂桃李さんにソックリなのに、言うことがイヤラシイのでムカついてきた。
「他にも条件がある。近鉄電車が高安と山本の間で交差していることも重要な条件なんだ、そして触媒になれるほどの能力を持った君の存在がね」
 なにをこのエロ大魔神が!
「えと、髭面でもエロでも大魔神でもないで、さっきも言ったけどソンナワケと呼んでくれないかなあ」
「ソンナワケかドンナワケか知らないけど、いったいなんなのよ!?」
「あ、すまない、君のいましめは取らなきゃね……」
 エロ……ソンナワケが手首を振ると、つんのめるようにして金縛りが解けた。

 ソンナワケの髭面が迫ってきて、思わず目をつぶってしまった……。
ジャンル:
小説
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