巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
はああ…………(-д-;)(´Д`;)
ナースチャとふたりでため息をついてしまった。
魔法で奈良の高松塚古墳に飛んだんだ。
安倍晴天に「人間の五人や六人、念じるだけで運べるよ」と教えてもらって、エイヤ!って飛んだ。
初めてなんで、高松塚古墳付近の地図を睨みながら飛んだんだけど、着いたのは最寄りの近鉄飛鳥駅前。
うぉっと( ゚Д゚)! キャ(>_<)! わ(〇△〇)! あぶねえ(><><)!
駅前から高松塚古墳に向かう人ごみのど真ん中に出現して、ビックリされたりヒンシュクをかったり。
「「すみませーん!!」」
取りあえず謝って、道のわきに寄ってため息をついたというわけ。
アハハハハハ
どこかで晴天のバカ笑いが聞こえたんだけどムシムシ!
「ごめんねぇ、まだ慣れないもんで(^_^;)」
「ううん、面白かった!」
「そか、じゃあ、気を取り直して行くかぁ」
「うん!」
飛鳥駅から現場までは緩い坂道。緑が多いんで宮之森城址公園の本丸を目指すのに似てるんだけど、あそこは花見の時でも、こんな人ごみにはならない。
混み方と熱気は万博に似ている感じ。
「でも、この人混みは悪くないわよ」
「そう?」
「うん、ロシアで人が行進してるって、あんまりいいイメージじゃなかったし」
あ、そうか。ナースチャは『血の日曜日事件』の悪い思い出があるんだ……。
「明日香美人だって評判だけど、どんなだろうね(^▽^)」
話題を変える。じっさいウキウキしてるんで、ごく自然に変えられる。
「すごいよね。新聞には6世紀のお墓だって書いてあったけど、そんなのがゴロゴロ転がってるんだものね! この先にあるのは高松塚だけじゃなくて、天武持統天皇合葬陵やら文武天皇陵、中尾山古墳とか終末期の古墳がゴロゴロしてるんだもんね。それも、駅から10分ちょっとのところだよ!」
「よく知ってるねえ(^_^;)」
「だって、なんの心配もしなくて勉強だけしてればいいんだもん」
「あ、そうだねぇ」
ナースチャは、百年も前に家族もろとも殺されるはずだったんだ。
「日本の皇室は、高松塚古墳のころには、もう盤石だったんだよね。たしか……うん、そのころは天武天皇のちょっと後の時代だけど、その天武天皇は……すでに40代目なんだよ!」
「なに、その本は?」
ナースチャはリュックから小さな辞書を出して確認している。
「日本史小辞典」
「あ、すごい……」
「お父さんなんて、やっと14代目だったんだよ」
「お父さ……ああ、ニコライ二世だったっけ?」
「うん、お父さんはジョージ五世と従兄弟同士でね、あ、ジョージ五世って、イギリスの王様。エリザベス女王の伯父さんでね」
「え、ナースチャってロシアの皇女でしょ?」
「うん。ヨーロッパの王室ってみんな親類同士だからね」
「ええ……ということは、エリザベス女王とナースチャは親類!?」
「そうだよ、マタイトコ? ううん、それはお父さんだし……マタイトコの娘がエリザベス女王……やだ、わたしってベスより年上なんだ!」
「アハハ……よく分からないけど、すごいよね(^_^;)」
「そういうのと関わりなく、極東で124代も続いてるんだぁ……すごいよ、日本は」
「そ、そうだね(^_^;)」
ナースチャのハイテンションに付き合っているうちに、人の流れに載って発掘現場に着いてしまった。
「あららぁ……」
着いてビックリ玉手箱。
そう、浦島太郎が玉手箱にワクワクするぐらいの期待に満ちてやってきたんだけど、玉手箱……古墳の入り口はガッチリ封鎖されていた。
「空気に触れると傷んじゃうんだ、カビとか生えたりして……」
ガッカリしながらも、ナースチャは納得。
魔法でビュンと飛んできただけだけど、わたしは、お昼に美味しいものでも食べなきゃおさまらないよ。
「ね、見て……」
ナースチャが横腹をつつく。
「ん?」
古墳の横には発掘の状況やら石室の中の様子やらがパネルになって掲示されている。
へえーー ほぉぉー なるほどぉー なになにぃ そうかぁ フムフムぅ
老若男女の見学者が合格発表を見る受験生みたいに真剣に読んでは、石室の封印や古墳の全貌を窺って感心している。細かい説明を読んでる余裕はないけど、石室に描かれていた壁画の写しは興味深いよ。
四神の玄武・青龍・白虎や人物像は自分の知っている日本画とは全然印象が違って素直に「ほぉ」と声が出たよ。ま、思えば、新聞、いや、スマホでググれば、もっと鮮明なのが観れるんだけどね。
それに、周囲の見学者さんたちの感動が伝染してるのが半分だと思う。
まあ万博と同じだ。月の石なんて、目の前で「はい、月の石」なんて出されても感動なんかしない。あれだけのシュチエーションと万博ってグレード、そんで、あの待ち時間と人混みだから思うんだろうね。
令和人間には微妙なんだけど、昭和に通うようになってまる二年。こういう昭和の感受性は、ちょっと生意気だけどかわいいと思ってしまう。
「うん……やっぱり感動だねえ……ここには1300年の歴史が息づいてるんだ……」
ナースチャは行儀がいい。人の感動を斜め上から評論するようなことはしない。たったいま「かわいい」なんて思ったことは、ちょっと封印。
すごいねぇ……すごいねぇ……と他の見学者さんと同じように呟きながら古墳を一周。
帰り道を見下ろすと、来た時よりもすごい人波が押し寄せてくる。
「人酔いするねぇ、ちょっと脇道通っていこうか」
「うん……ねえ、あの人物像気づいた?」
「え、ああ、ちょっと日本画とはタッチが違うかなあ……それと、衣装が予想してたのと違ったかなあ」
ゆったりというか、モッサリしてるというか、フワっとルーズで腰ひも的なのも思い切りローウェストだし。
「うん、それもそうだけど、着物の打合せが逆だった」
「え?」
「左前」
「そうだった?」
「うん、洋服と同じだからアレって思った」
「ナースチャ鋭ぉい~」
「ううん、ずっと洋服の生活してたからね」
「あ、そうか」
納得しかけて、わたしだって洋服ばっかの生活……なんだけど、言い返さないで、別の事を言う。
「左前っていうと、日本じゃ幽霊の証拠なんだよぉ」
「ええ、そうなの( ゚Д゚)!?」
「うん」
「ていうことは、あの女の人たちは幽霊!?」
「ということになるかなあ」
「うわぁ怖い~」
馬鹿を言いながら、いつのまにか林の中に踏み込んでしまう。
すると、後ろから「もうし……」と声がした。
「「え?」」
振り返ると、あの人物像にそっくりな女の人が怪しい笑顔で立っていた。
☆彡 主な登場人物
- 時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
- 時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
- 滝川 志忠屋のマスター
- ペコさん 志忠屋のバイト
- 猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
- 宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
- 辻本 たみ子 2年3組 副委員長
- 高峰 秀夫 2年3組 委員長
- 吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
- 横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
- 加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
- ナースチャ アナスタシア(ニコライ二世の第四皇女)
- ユリア ナースチャを狙う魔法少女
- 安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
- 藤田 勲 2年学年主任
- 先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 世界史:吉村先生 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
- 須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
- 御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
- 早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
- 時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
- 妖・魔物 アキラ 戦艦石見(アリヨール)
- その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長) 関根(MITAKA二代目リーダー)
- 灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人







