大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・かの世界の片隅へ:71『ローゼンシュタッテンの儀』

2018-12-08 14:02:04 | 小説5

高校ライトノベル:かの世界の片隅へ:71     

 

『ローゼンシュタッテンの儀』

 

 

 いつまで、このナリでいなければならないのだ……

 

 わたしとタングリスの思いは同じだ。

 夕べは試着と言うことで、ほんの十分ほどで解放されたが、今朝はプリンツェシン・ローゼンの降誕祭本番。

 顔を洗うと、すぐに夕べのフランス人形のようなナリにされてしまった。

 ロキとケイトはハローウィンの仮装のように喜んでいる。ブリュンヒルデは日ごろのナイトメアの設定とは違う赤バラのドレスに戸惑いはあるが、まんざらでもない様子で、朝食のベーコンエッグにナイフを入れている。

「食べておかないと夕方までもたぬぞ」

「食べてからの着替えにしてほしかった」

「こう、コルセットを締め上げられては……レンジャーの訓練の方が百倍もましです……」

 タングリスの判断でパンは残すことにして、ベーコンエッグとサラダ、バナナ一本をなんとか胃袋に収めて本番に臨む。

 

 パパパパーン パパパパーン パパパパーン

 

 出迎えの時の三倍ほどの花火が上がって、パレードが始まった。

 そう広くもないローゼシュタットの町だが、時速二キロほどのバラの山車に乗って、にこやかに手を振っていると、けっこうな時間に感じられた。

 町の人たちは、わたしたちの衣装ほどではないが、色とりどりのバラをイメージした衣装で沿道に並び立ち、山車が目の前を通ると、そのままパレードに加わった。

 人々が喜んでいるというのは一種のエネルギーになるのだろう、パレードが広場に戻ってくるころには平気になってきた。

 

「それでは、本年のプリンツェシン・ローゼン、ブリュンヒルデ殿下によるローゼンシュタッテンの儀を執り行いまーす!」

 

 ミュンツァー町長が良く通る声で宣言すると、町の子どもたちによって五つのフラワーポッドが持ち込まれた。

「バラの花には、弱きもの悪しきものが一定の割合で咲いてしまいます。見かけは、どのように美しく華やかであろうと、シュタッテン、つまりは剪定いたしませんと、全体としては祝福の力が弱まります。そのシュタッテンを姫にお願いいたします」

 ゼイオン司祭が恭しく金の剪定ばさみを差し出した。

「あ、でも、どの花を切ってよいやら、わたしには分からぬが」

「鋏を構えていただければ分かります。むろん、司祭にして一級白魔導士であるわたしにも見えてはおりますが、聖人、あるいは王家の地を引く方が剪定しなければ効果がありません。さ、鋏を……」

「分かった……司祭の言う通りだ、黒く見える花が現れる……ん?」

「いかがなされました?」

「一株抜けているような……」

 町長が役人に、こっそりと聞いている。

「神聖花壇より運ぶ途中で取り落とし、埋め戻した時に抜けたようです。が、一株の事、どうぞ今見えているものをシュタッテンなさってください」

「分かりました」

 

 ブリュンヒルデは、最初の一株を手に取ると、チョキンと音を立ててバラを選定し始めたのだった。

ジャンル:
小説
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