大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・48『スナイパー』

2018-10-13 06:44:48 | ボクの妹

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妹が憎たらしいのには訳がある・48
『スナイパー』 
     

 

 イゾウは閉じた思念の中で装備の最終確認をした。

 義体一体吹き飛ばすのには、十分な装備だ。

 炭素繊維の短銃身のグレネードランチャー。本来ゲリラ戦の対戦車用の使い捨て武器である。イゾウはこれを二本まとめて、二発発射できるようにしていた。一発で仕留める自身はあったが、義体の脳は頭にあるとは限らない。胸や腹に仕込んだもの、中にはバックアップのCPを持っているものもあり、義体を完全に仕留めようとしたら、頭部と胴を同時に破壊しなければならない。
 今まっさかりの極東戦争でも、こういう義体には手を焼いているが。イゾウは仕留め損なったことはない。その腕を買われて、こちらのグノーシスに引き抜かれた。むろん正式にではない。今回佐伯幸子という義体が、スニーカーエイジに出るので、できるだけ派手に破壊して欲しいという要請だ。どうやら、こちらのグノーシスは結論を出したようだ。
 しかし、イゾウは、そのことに関心はない。向こうの世界で、イゾウのようなスナイパーは、南西諸島や大陸の山岳部、時に都市部でコッソリと使われ、報酬だけが与えられ、その名が世に出ることはない。
 それが、部内だけとは言え、今度の仕事は記録に残る。三万の観衆が見守る中、まるでショ-のように自分の仕事は注目される。腹の中で沸々と喜びが湧いてくるが、それは思念バリアーの中に封じてある。思念バリアーには物理的な防御力は無い。自分の思念が読み取られ、あるいはハッキングされないためのバリアーで、スナイパーには必須のものである。ただ、このバリアーの能力を最大に上げると、聴覚が低下する。視覚とスナイパーとしての能力に集中するのに都合がよく、戦場の様々なノイズを遮断するのに有効である。

 だから、午後の部開始のアナウンスは、はっきりとは聞こえなかった。

 聞こえていれば、ただちに撤収したであろう。

 ステージにターゲットが現れた。あらかじめ登録していた桃畑律子の衣装のシリアルと合致した。

 イゾウは観衆に溶け込むために、演奏にノッた。バリアーのため、歌詞の内容までは分からないが、パワーといい、エモーションといい、人の心を動かす力を十分に持っている。こういうものには素人のイゾウにもいいパフォーマンスのように思えた。

――せめて、最後まで歌わせてやるか――

 ああ ああ レイブン レイブン レイブン 傭兵少女隊……ただ今参上! 

 笑顔で決めポーズになった瞬間、イゾウはトリガーを二度引いた。
0・1秒の間隔を空けて、優奈の頭と、胴体は血しぶきをあげて吹き飛んだ。
 会場は騒然となった。
――ブラフか、ターゲットが違う!――
 そう思った瞬間、パルスレーザーが飛んできた。イゾウは磨き抜かれたスナイパーの勘で、跳躍して、会場の天井板を突き抜けた。
――しまった、こんなところに戦闘用の義体が――

 

 ねねちゃんはシーリングライトのスペースで演奏を聞いていた。

 ラストの決めポーズになって、精一杯の拍手の最初の一拍を打ったところで、グレネード弾の発射を感知した。あまりの至近距離なので、グレネード弾の破壊には間に合わなかったが、すぐに発砲者にパルスレーザーを撃った。発射位置を悟られないため、ステージ上のミラーボールに反射させた。その間0・1秒。優奈の胴体が吹き飛んだとき、そいつは天井板をぶち抜き、目の前に現れた。そいつは意図的に現れたのではなく、緊急避難としてここに逃げてきたのだろう。スナイパーらしからぬマヌケ顔にねねちゃんはパルスレーザーのパワーを最大にして撃った。イゾウは視神経が捉えた映像情報を行動に反映する前に、周囲に僅かな煤をのこしただけで蒸発してしまった。

 舞台の仲間や、観客席の前の方にいた者達は、優奈の返り血を浴びてパニックになっていた。幸子は、無意識にバラバラになった優奈の側に寄り、優奈の前頭葉の破片を探し、優奈の遺体を抱きしめるふりをして、それを飲み込んだ。なかば無意識な行動だった。
「幸子、しっかりしろ!」
 俺は、幸子が義体であることも忘れて、抱き起こした。
「優奈、優奈が……!」
 幸子は、そう叫びながら、優奈の前頭葉を喉の奥経由で自分のCPの予備スペースに保存した。幸子自身、そんな機能が自分にあることに驚いていた。

 そして、その会場にいた人たちは、認識の多寡に差はあるものの、とんでもないことが起こり始めていることを実感した……。


 

 

ジャンル:
小説
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