大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベル・ポナの新子・59『今日は七夕だから』

2018-06-24 06:00:43 | 小説7

ライトノベル・ポナの新子・59
『今日は七夕だから』
         


「今日は七夕だから……」

 安祐美は、一昨日と、その前の日の二日続きのデビューライブで力を出し過ぎたんで、しばらくは姿が見えないと思っていた。
 テストが終わって、食堂に行ったら、いつもの席で安祐美が普通にララランチを食べていた。
 で、ポナもララランチをトレーに載っけ、黙って隣の席に着いた。
「案外立ち直り早いんだ」
 そう言うと、意外なほどにうろたえて「今日は七夕だから……」というワケの分からない言い訳が帰ってきた。

「どういうことよ?」

 ララランチを同時に食べ終えて、つまり安祐美の方が食べるのに時間が掛かっているというか、ポナの食べるのが早いのか、その両方か。
 食べ終わると、普通の生徒のように中庭に行った。
「七夕だから……なにがあるのよ?」
「んとね…………」
 長い間をおいて、安祐美はポツリと言った。

「ある人に会えるかもしれないんだ……」
「ある人って……もしかして、お・と・こ?」
「うん」
 思いのほか、あっさりと認めた。
「だったら、こんなとこで待ってたって駄目でしょう。牽牛と織姫は、天の川で待ち合わせでしょうが」

「それがね……だれか分からないんだ」

「え、ええ?」
「死んで二十六年もたっちゃうと、だれか分からなくなっちゃうの」
「そんな薄情な」
「ううん、その子も死んでるの。生きている人間なら、こっちから会いに行く。あたしは会いに行く幽霊だから」
「死ぬと分からなくなっちゃうの?」
「なんとかは日々に疎しって……」
「ここに居ていいの?」
「動かない方がいいと思うの。相手の方が少しでも覚えていてくれたら、ここに居る方が会える可能性が高い」
「そうなんだ」
「ポナ、もう行って」
「あ、お邪魔虫か?」
「ううん、あたし無理して実体化してるから、ポナのエネルギー吸い取っちゃう」

 そう言うと、安祐美の姿が急速に透明になってきた。

「ポナにも、近々、運命の出会い……」
 そこまで言うと、安祐美の姿は完全に消えてしまった。

――会えるといいね――

 そう思ってポナは、昇降口経由で正門に向かった。由紀たち生徒会が、正門の近くで七夕の短冊書きをみんなに勧めていた。生徒会も気の利いたイベントをやるもんだと感心、短冊に『会えるといいね』とだけ書いて笹に結び付けた。ポナの存在に気づいた由紀が短冊とポナを見比べて意味深な顔をした。
「あ、人の事だよ人の」
「ポナには、修学院の蟹江クンてのが居るもんね」
「ああ、あれは……」その他大勢と言いかけて止めた。その他大勢では失礼すぎるだろう。

 帰りの駅に着くと、なんとポチが実体化して待っていた。

「ポ、ポチ……そっか、あんたのことだったんだ、安祐美が言ってたのは」
 ポチを抱っこしてスリスリする。ポチがホッペを舐める。愛おしかった。
 久々にポチのリードを持って、いっしょに帰った。リードから確かなポチの感触が伝わってくる。

 家が近くなると、ポチの存在感が急速に希薄になり、家の敷地に足を踏み入れたときには消えてしまった。思い出したように雨がパラツキ始めた。晴れていたら、もっと長い時間いっしょに居られたかもしれないと思うポナだった。手のひらに落ちてきた雨粒が、だれかの涙のような気がした……。
 


ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母

ジャンル:
小説
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