大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

永遠女子高生・26《塔子の場合》

2019-12-12 06:44:32 | 時かける少女
永遠女子高生・26
塔子の場合・1》   


 
 15分まで待って来なければ放って行くことになっていた。

 だから放ってきたんだけど、こんなことは初めてだ。
 当たり前ならスマホでラインとか電話なんだろうけど、凛子とは、そーいうことはしないことにしている。

 だから朝礼の時間を過ぎても空席になっている凛子の席が気になってしようがない。

 ラインしようかと思ったけど、朝礼が長引いて、担任のグッスンが教室を出ると同時に1時間目の八重桜が入ってきて起立礼になってしまい、きっかけを失ってしまった。

 八重桜というのは凛子が付けたあだ名。鼻から上は美人なんだけど、鼻の下はサンマちゃん。だから「ハナの前にハが出る」とい意味で八重桜。こうゆー言葉の感覚とかは、凛子はとってもいかしている。で、ずっと八重桜と呼んでいるんで、八重桜センセのリアル名前は忘れてしまった。

 休み時間になって直ぐにライン、待ちきれなくて電話もしてみる。呼び出し音はするけど出てこない。

 理不尽てほどじゃないんだけど、こんなことは初めてなので、イラっとくる。
「ね、凛子来てないんだけど、知ってる?」
 隣の席のナオタンに聞いてみる。
「リンコ? だれ、それ?」
「えー、凛子よ吉川凛子、ほら、あの空席の」
 廊下から二列目の一番後ろに目をとばす。
「あそこ……?」
「うん、たまに教科書立てて早弁とか……」
「あそこって、最初から空席だよ。グッスンが間違えて余計に置いて、メンドイからオキッパになってる」
「え、だって……」

 かつがれているのかと思ってスマホを出す。

「うそ…………?」
 なんと、スマホから凛子に関する全てが消えていた。ついさっき電話したばかりなのに履歴も消えていた。
 ボー然とするあたし。
「塔子、急がないと、次ウメッチの体育だよ!」
 ナオタンが急き立てる。

 2年になって、体育が1年の時と同じウメッチだと分かって、あたしとナオタンは叫んだ。

 ギョエー!

 ウメッチの体育はオニだ! 持久走や水泳は規定の時間数をこなさなければ絶対に欠点にされる。だから、見学が溜まってしまい10月になっても補講で泳がされている子も居た。単にプールに漬かってるだけじゃなくて、課題の泳ぎ方で250メートルは完泳しないと許してくれない。

 だから、ナオタンとダッシュしてプールの更衣室へ。

 正味45分、プールでみっちり泳がされる。
「よ-し、上がれ!」
 ウメッチの声でプールから上がる。

 3時間目の授業に遅れそう! 

 慌てて教室に飛び込む。
「ブグ………イッテーーー!!」
 廊下側2列目一番後ろの机の脚にスネを打ち付けて行きが停まりそうになる。
「くっそー、こんな空き机、さっさと片付けろよな!」

 あたしは、そこが、学年の始めから空席だったと思っていた……。

 
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