大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・トモコパラドクス・26『バニラエッセンス』

2018-10-14 06:42:18 | トモコパラドクス

 

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トモコパラドクス・26 
『バニラエッセンス』 
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された!



 後年言われた結衣のフェロモン騒動はひとまず収まった。

―― 普通で十分だ ――

 昭二の心で、結衣は思った。やっと人並みの青春が取り戻せる。ただし女子高生としてだけど。
 そう思いながら、結衣は昭二の心でしみじみしながら乃木坂を下った。
 もう、あまり人も振り返らない。でも、これでいい。昼休みまでのわたしは、宇宙人のマネが作った残り物のアテンダントの義体でしかない。紀香と友子が、それを程よく抑制してくれた。これで普通。あこがれの普通!

 そう思うと、結衣は駅までの三百メートルをスキップしていた。

 パンケーキの店の前で、信号に引っかかって、スキップは止んだが、六十八年ぶりの生きた体はリズムをとることをやめなかった。
 その姿がかわいく、パンケーキ屋の前の列が乱れ、マスターはパンケーキの鉄板でヤケドをしてしまった。

 信号が青になり、結衣が地下鉄の駅に降りていったので、パンケーキ屋の騒ぎは、これ以上大きくならずに済んだ。

「ま、大丈夫か……」

 結衣の後をつけている友子は安心した。
 ただ、結衣に見とれた地下鉄の運ちゃんが、停止線の十メートル手前で車両を停めてしまい、定位置に戻すのに一分少々かかってしまった。むろん、結衣に見とれてしまったせいである。
 住居を設定されている本郷三丁目で降りたところまではよかたっが、結衣は住まいとは反対の東京ドームの方に歩き出した。

「あれー……」

 そう思いながら、友子は後をつけた。

 東京ドームの周辺には、東京都から「ヘブンリーアーティスト」という資格をもらって、路上パフォーマンスをやっている人たちがいる。主に路上ライブをやるユニットが多かったが、友子には、それらのものが雑多な騒音としてしか聞こえていない。もっとも結衣が興味を持てば、それだけをピックアップして聞くこともできたが、結衣の心からは、そういう関心も感じることができなかった。

 実は、結衣は無意識のうちに心を閉ざすという特技を会得していた。昼間、紀香と友子に心を覗かれたことがスイッチになってしまったようだ。
 これは昭二の性癖が影響している。優秀な兄に常に劣等感を持っていた昭二は、努めてそれを表に出さず、親兄弟、友だちにも悟らせずニコニコしていた。
 
 今、結衣は一組のユニットに引きつけられている。だが、心を閉ざして居るために、友子には分からない。

「バニラ」という風采の上がらないディユオの前で結衣の足が止まった。
 結衣の様子から、興味があるんだろうと思って友子は聞いてみた。

  《ぼくの おいたち》 作詞:岩崎広也   作曲:西川康志

 ぼくのおいたち ぼくのおいたち ぼくのおいたち

 でも ぼくの姉貴のむすこじゃないんだよ

 ぼくをパシリに使うやつらのことでもなくってさ

 そうさ ぼくの生い立ち ぼくの人生 ぼくの生きてきた道のこと

 でも 人生とか 生きてきた道とか言うのは恥ずかしくって

 ちょっとマイナー ちょっとネガティブ ちょっとセンチメンタル 生い立ちが相応しいねえー!

 お姉ちゃんが太陽ならば ぼくは昼間のお月さま 目立たないったらありゃしない

 お姉ちゃんのスマホは三台使い分け 本命 アッシー みつぐくん

 こんな古い言葉は知らなかったけど アッシー みつぐくんのスマホを任されて

 読んだアッシー みつぐの孤独なメール 

 キーワード検索したら 出てきた二十世紀の悲しき男のカテゴリー! イエー!

 広也 どうして そんなにショボイ顔 どうしてそんなに泣き笑い ほら ほら そのヘラヘラ笑い?

 お姉ちゃん よせばいいのに ぼくに彼女をあてがった なんと なんと 本命彼氏の妹さ ああ~!

 本命彼氏の妹も ぼくに劣らぬ日陰の妹で お互い兄姉つなぐホッチキス

 ホッチキス キスキス ホッチキス スー スー すきま風

 そんなきみがかわいそうっていうんじゃない 自分自身に優しくするように 

 そっと掛けたブルゾンに 思わずキミは「あ、ありがとう」 ぼくは前頭葉で感じたよ

 潤んだヒトミ 最後の言葉が尻餅ついて震えるクチビルに

 ぼくは ホチキス キスキス キス キス キスー!

 そのとき ぼくは知ったんだ 互いのクチビルに付いたタコ焼き青のりに

 キ・ミ・は ぼくのアルテミス ミスアルテミス! オ~オ アルテミス!
 

 


 まばらな拍手が起こる中、結衣は一生懸命、目を潤ませて拍手した。周りの人たちは、その拍手より、結衣のかわいさに見とれてしまい、バニラの二人は、なにかテレビ局がドッキリでAKBかどこかの子を仕掛けてきたのかと思った。そして、結衣は意外なことを言った。

「コードをマイナーにして、わたしに歌わせてください!」

 そして、押されたように、結衣にスコアを渡し、マイナーで弾き始めた。

 コミックソングである《ぼくの おいたち》が、とても情感のあるバラードになった。観客はしだいに増えていった。
 その様子は、動画サイトに投稿されて評判になり、翌週にはテレビの取材が入り、週末には中規模のプロダクションにスカウトされ、ユニット名もバニラエッセンスと改名し、夏の終わり頃には忙しいテレビ出演に追われることになった……。    

ジャンル:
小説
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