大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・かの世界の片隅へ:70『ローゼンシュタット・4』

2018-12-07 14:28:52 | 小説5

高校ライトノベル:かの世界の片隅へ:70     

 

『ローゼンシュタット・4』

 

 

 月は人を化かすという。

 タングリスが迎賓館に戻っても、しばらく月を見上げていたせいだと思った。

 

「く、来るなああああ!」

 

 庭とホールを隔てるドアに手を掛けると、タングリスの慌てた声がした。

「どうした!?」

 緊急事態だ!

 腰の剣に手を伸ばすというデフォルトの行動をとりかけたが、戦車乗りのコスに剣は付いていない。

 剣の位置にあったモーゼルを引き抜くと傍らの窓の隅っこから中を、瞬間覗いた。

 着飾った町の幹部たちが見えた……ような気がした。

 同じところから覗いていては気取られるので、ほんのコンマ二秒ほどだ。

 場所を変えて二度三度……人数は八名か……ミュンツァー町長、ゼイオン司祭、他にレセプションで紹介された幹部の男たちが四名。それに、こちらに背を向けているスタイルのいいドレス姿の二人の女性。

 たった今、声がしたタングリスは?

 うかつに見てしまったので、ゼイオン司祭と目がってしまった!

 ゼイオン司祭が組んだままの手をひらりとそよがせた。

 

 カシャリ……掛け金が外れて窓が全開になった!

 

「どうぞ、テルキ殿もお入りになって」

 司祭にニッコリ言われ、オズオズと窓枠を跨ぐ……そう広くもないホールなので、背を向けた女性の直ぐ横に立ってしまう。

「み、見るな……」

 と言われてしまうと見てしまう。

 数秒かかった。横に立っているのは、髪も整え、美しくドレスアップした……

「タ、タングリス!?」

 ホールが明るい笑い声に満ちた。

 タングリスが女性なのは、ムヘンの流刑地で出会った時から分かっていたが、いつも軍服姿だったので意識しなかった。

 なかなか、どうして……同性のわたしから見ても、震えがきそうな美少女なのだ。

「お、おまえ、こんなに可愛かったのか……」

「み、見るなと言ったろが!」

「いやあ、明日の降臨祭にはドレスアップしていただかなくてはなりませんので、ちょっと試着していただいておるのです」

 ミュンツァー町長が嬉しそうに言う。

「似合ってる……恥ずかしがるな。ほんとはまんざらでもないんだろ。こうやって自分で着たんだし」

 そう、自分から進んで着なければ、こんなバッチリな着こなしにはならない。

「ち、ちが……呼ばれて、ホールに入ったら、瞬間で、こうなったんだ!」

「え?」

 ゼイオン司祭がニヤニヤ笑っている。どうやら、白魔法で有無を言わせず着替えさせたようだ。

「テル! わたしのことも見ろ!」

 初めて気づいた!

 タングリスの隣の赤いドレスは、自慢げに鼻の穴を膨らませてさえいなけてば、そして口さえ開いていなければタングリスの倍ほどもキュートなブリュンヒルデであった。

「すごいぞ、まるでバラの妖精だ!」

「それが気に入らぬ。我は真正のナイトメア、漆黒の堕天使の衣こそ相応しいのだぞ!」

 そう言うと、ここのところ小康状態であった中二病全開の顔を半分隠すポーズをとる。

 

「やっと、捕まえてきた!」

 

 騒がしく入ってきたのは、わが相棒のケイト。ケイトに腕を掴まれてジタバタしているのはロキだ。

 二人とも、立派に王子・王女の出で立ちで、空中をプカプカ浮いているポチまでもがドレスアップしている。

「さあ、あとは慣れていただくだけです! さあ、次は……」

 一同の目が集まる。

「え、え? わたし!?」

 

 わたしについては省略……。

ジャンル:
小説
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