今度は、わたしが正一の家にお泊まりしていたということになってしまった……!
わたしは、もう一度正一のマンションにタイムリープした。で、今度は正一の議論ににものっからず、さっさと帰ろうとしたら。正一が、リビングで転倒。拍子で、ローテーブルをひっくり返し、テーブルの上に載っていた果物ナイフが正一の手首を切った。で、救急車を呼ぶハメになり、事態はさらに悪くなる。
――真夏、ハーネスの正一とお泊まり! 口論の果てに正一手首を切る! 愛憎の果てか!?
で、その次は、転びそうになった正一を抱き留めるが、今度は、なぜか裏のビルにカメラマンが張り付いていて、その瞬間を望遠で激写される。
――真夏、ハーネスの正一と熱い抱擁。禁断のアイドル同士の恋!
で、その次は、もっと早めに行き、カーテンを閉め、転ばないように正一に注意。正一は「オット……!」と転びかけただけで済んだが、ガスストーブのホースを引っかけていた。二人がマンションを出た後、ハンパに抜けかけたゴムホースがガスの圧力でスッポリ抜けてガス漏れ。冷蔵庫のサーモスタットの火花で引火。
――ハーネスの正一のマンションで大爆発。巻き添えで住人三人が重軽傷!
やるたびに状況は悪くなる。
最後の手段。わたしは潤のアバターを作り、事務所の前で、タクシーを拾った。
「へえ、君たち、AKRの潤と真夏なんだ。こんな時間まで仕事なんだね。おじさんファンでさ、スマホ撮ってもいいかなあ」
「いいですよ、どうぞ!」
運ちゃんの期待に応え、狙い通りアリバイができた。明くる日スポミチのスクープが載ったが、運ちゃんがスマホで撮った三十秒の映像が動画サイトに投稿されていた。で、わたしや運ちゃんの証言もあり、スポミチのスクープは画像を加工したガセと言われ(むろん、本物の潤と正一には口裏を合わせてもらった)明くる日の紙面で、お詫びと訂正の記事が出た。
「オーシ、メデタシメデタシ!」
ベッドにひっくり返ると、エリカがささやいてきた。
――あのスポミチの記者、クビになっちゃって、恋人にもふられちゃったんだよ……。
わたしは、タイムリープによる事件解決のむつかしさを痛感した……。
――あのスポミチの記者、クビになっちゃって、恋人にもふられちゃったんだよ……。
わたしは、タイムリープによる事件解決のむつかしさを痛感した……。