大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・ここは世田谷豪徳寺・81『さくら その日その日・3』

2019-01-14 06:50:30 | 小説4

ここは世田谷豪徳寺・81(さくら編)
『さくら、その日その日・3』



 あたしのブログは炎上した。

 久米久のトーク番組『上から下』に出て、言いたいことを言ってきたからだ。
 久米久は、今度のC国との事変……C国は日本に宣戦布告していたが、かえって国内が分裂。戦争どころではなくなり実態としての戦闘は佐世保沖の海戦だけだったので、日本は戦争の意思がないことを明らかにするために、戦争という揮発性の強い言葉を避けて「事変」という「戦争」からは2ランク穏やかな表現にしていた。
 で、久米久は、C国が分裂したのが日本のせいで、戦争を引き起こした海上自衛隊が一方的に悪く、したがって、その時戦った『たかやす』が悪く、その『たかやす』の砲雷科の士官であったさくらの兄の惣一にも責任があり、妹であるさくらは、これに批判的でなければならない(暗に、芸能界で生きていけないとまで言った)と、さくらを責めた。
 さくらは、日ごろ何気なく聞いていた兄の言葉を思い出しながら、一つ一つ返答し、結果的に久米を論破してしまった。

 とどめは、この一言だった。

「この戦争が広がったら、自衛隊にも犠牲者が出るかもしれないし、C国の人たちは難民になるかもしれないんだよ。語るんだったら、自分が戦闘に参加したり、難民になる覚悟で話さなきゃ」
「それって、変ですよ。第一に、この話題振ってきたのは久米さんでしょ? それに、戦う覚悟とか、難民の気持ちなんか言ってたら、なにも喋れなくなります。久米さん自身コメンテーターで、いろんなことお話しになりますけど、いちいち、その立場になってます? 岡目八目でしょ。この岡目八目が保障されてるのが、民主主義なんじゃないかしら。その人の身になれっていうのは一見正しいようだけど、それって戦時中の「戦地の兵隊さんのことを思え!」って、みんなを黙らせた論法といっしょじゃないですか」
 
 コメントの大半は、あたしに賛成のものだった。ま、コメントなんてみんな匿名だから、そもそもがマトモに相手をするようなもんじゃなかった。ただスクロールしていると四ノ宮忠八の実名のコメントがあったので、たまげた。「君が正しい」の一言だけだった。一瞬本物かなあ? と思ったけど、なんとなくチュウクンらしいので、メールで――ご声援ありがとう――と打っておいた。折り返し返事がきた。
――ドンマイ。お互い自然体で、のんびりがんばろう――

 あたしは、このとき「お互い」の意味をしっかりとは分かっていなかった……。

 はるかさんからは直接電話がかかってきた。
「さくらちゃんが言ってくれたことは『はるか ワケあり転校生の7か月』にも通じるわ。思うところに忠実に行動して、結果は思う通りにならなくても通じるものは通じるわ。あの放送を聞いて、あのころの自分を思い出したわ。そろそろ吾妻さんが放っておかなくなるわよ」

 はるかさんの予言は当たった。

 あたしは、今日から次の仕事……具体的には分からないけど、女優としての演技や、踊り、発声の練習を徹底的に仕込まれ始めた。

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小説
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