大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・永遠女子高生・11《塔子の場合・3》

2018-04-25 06:27:17 | 時かける少女

永遠女子高生・11
《塔子の場合・3》
        


 女子高生の朝の身支度は10分~20分だそうだ。

 あたしは計ったことは無いけど、2~3分。
 ざっとブラッシングして、前髪を整えるくらい。メイクはしない。唇が荒れているときにリップつけるくらい。
 スキンケアとか眉毛のお手入れなんか、一ぺんもやったことはない。

 言ってみりゃ生成りの女子高生。

 ビジュアル系だとかモテカワだとか意識したことはない。街を歩いていて、他人様に不快がられなきゃ、それでいいと思ってる。
 だから、教室の机につまづいてスネに傷ができてもへっちゃら。ナオタンとお揃いのバンソーコー貼って喜んでいる。

「塔子、グラビアまるまる1ページだよ!」

 廊下の端からナオタンが突進してきた。
 ポッペティーン今月号の『日差しの中のナチュラル』というタイトルで、あたしとナオタンの写真が載っている。
 先日、マックを出たところで、ポッペティーンの瀬戸内さんが撮った写真だ。
「エー、うっそー!」
 目立つことはヤなんで、屋上に続く階段の踊り場に行く。
「こんなに、オッキク取り上げられるなんて思わなかったねーーー!」
「まるで、売れっ子ドクモじゃん!」
 8ページにわたる『街角ギャル 秋バージョン』特集で、瀬戸内さんたち4人のカメラマンの競作になっている。
 カメラマンそれぞれがキャプションを付けていて、瀬戸内さんのが『日差しの中のナチュラル』になっているわけ。
 
 嬉しかったけど舞い上がることは無かった。

 その日は「すごいじゃん!」「やったね!」とかクラスの子たちに言われたけど、三日もすると忘れられた。
 高校生にとって面白いことは、日替わり定食みたいに目まぐるしい。あたしら自身もテストや進路のことで忙しい秋の本番に突入していった。
 
「贅沢言わなきゃ、推薦入試ってのは無理じゃないけど、修学院女子なあ……」

 進路懇談でのグッスンは厳しかった。
 担任としてはいい加減だけど、進学指導では定評がある。グッスンがウンと言わなければ本当にむつかしい。
 修学院にこだわっているのはナオタンもそうで、理由は卒業後の進路保証がしっかりしているからだ。安定した一部上場企業のOLさんになって、普通の安定した人生を歩みたいという、手堅いと言うか地味と言うか、そういう路線なんだ。

 あたしもナオタンも、校門出たとこで親とは別れて2人でノラクラと下校する。

「安定した普通を得るためには、一ぺんは頑張らなきゃならないのかねぇ~」
「せめて学年の始めに言ってくれりゃ、頑張りようもあるんだけどねぇ~」
 もう2年生の成績は半分がとこ確定している。今から評定を上げようとしたら、4月の倍の努力が要る。
 そんな努力は自信が無いし、やりたくもない。

「あ、焼き芋屋!」

 交差点の向こうに焼き芋の軽トラが停まっている。タイミングよく青になった信号を渡って直行。
「嬉しそうな顔して買ってくれるんだねえ、おじさんも嬉しいからオマケしとくよ」
 おじさんこそ商売がうまい、50円負けてくれたんだけど、調子に乗っておっきい方を買ったので、けっきょく50円高くついてしまった。とうぜん食べるのも大変なので、みっともないように裏の生活道路を通る。
「ん、どーかした?」
 焼き芋を齧りながら振り返ったので、ナオタンが「あれ?」っと思った。
「こっちがわさ……もう一軒家があったような気がするんだけど……」
 道の両側は似たような一軒家が続いているんだけど、南側と北側では家の数が違う。少ない南側に、もう一軒あったような気がして気持ちが悪い。
「このへん建売だからさ、業者が違ったら建坪とかビミョーに違うんじゃない?」
「……そっか」
 
 釈然としなかったけど、とりあえずは大きすぎる焼き芋を食べることに集中したのだった。

 秋はたけなわになろうとしている。

 

ジャンル:
小説
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