大橋むつおのブログ

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Regenerate(再生)・11≪幸子のセンチメンタルジャーニー・1≫

2019-12-15 06:22:51 | 小説・2
Regenerate(再生)・11
≪幸子のセンチメンタルジャーニー・1≫
  


「ハハ、また幸子に擬態してんのすか?」

 カーテンを閉めながら、ドロシーが笑う。
 帝都大の女子寮は夏休みになって、半数ほどが帰省。バイトや就活に忙しい上級生たちがわずかに残っている。部屋に残っている者たちは、暑さに耐えきれずエアコンをフル稼働させてしのいでいる。中には冷房代を節約するため、互いに部屋を行き来して、電気代の節約に努めている者もいた。詩織とドロシーは並の人間ではないのでエアコンなど点ける必要はないのだが、並の人間でいるためにエアコンを点けている。
 ベラスコたちは、ドロシーと詩織の存在には気が付いていない。存在を確信しているのは幸子のことだけだった。ただ、成田空港や帝都大など、不審な痕跡のあるところは、不定期なスキャニングを繰り返している。ベラスコの中にも慎重派がいるようだ。

「幸子になっていると、おぼろげながら分かってくるの……幸子はガイノイド(女性型アンドロイド)じゃないみたい。幸子には人間だったころの記憶が残っている……擬態していると、外形だけじゃなく、心の中までがリジェネされていくみたい」
「んだか。すたども、もうそろそろ9時だす。出かけねばなんね」
「分かった」
 二人は帝都大の女学生らしくバイトにいそしんでいる……ように見せかけるために、週に五日、教授のラボに資料整理のバイトとして通っている。

「先生、幸子には人間としての記憶があるんです」
 教授は一瞬パソコンのキーを叩く手が止まった。
「ほう……では、幸子はガイノイドではないということかね?」
「ええ、サイボーグのようです。それもかなり高等な技術でサイボーグにされています」

 教授は正直に驚いた。幸子がサイボーグであることにではない。擬態しただけで幸子の内面まで再生してしまう詩織の能力の高さに。しかし、それはおくびにも出さない。

「それが不思議なんです……」
「なにがだね?」
 教授は平気な顔をしながら、幸子のプロフを呼び出し暗号化してドロシーのパソコンに送った。ドロシーは鼻歌を歌いながら暗号を解凍していく。二人とも詩織に対しては思念をブロックしている。
「幸子の記憶は1980年代なんです」
「ほう……その根拠は?」
「あたし、日本航空の123便に乗っていました」
「1985年(昭和60年)8 月12日月曜日18時56分に、御巣鷹山に墜ちたジャンボジェットかね?」
「はい。その時、すでにこの高校二年生の姿でした。他の記憶は断片になりすぎて復元に時間がかかりそうです」

 教授は、今の幸子に擬態した詩織の音声を分析。意志の固さを数値で感じた。

「よかろう。ここに幸子に関するデータがあるが、これは解凍しない。詩織自身が、幸子として記憶を取り戻してきなさい。ただむやみに幸子に擬態しないように。いいね」
「はい」
「それと、ドロシーは連れて行かないように。山形弁のアメリカ人なんて目立ってしかたがない」
「ムゥ……」

 ドロシーが、顔を赤くして言葉を飲み込んだ……。
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