大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル:真凡プレジデント・81《東京タワーの上半分》

2018-09-15 14:51:03 | 小説

真凡プレジデント・81

 

《東京タワーの上半分》   

 

 

 ガルパンのお蔭なのよ

 

 少し含羞を含んだ声でケイ・マクギャバン軍曹が言うと、境内に散った少女たちがエヘヘと笑う。

「あなたたち、東京タワーの上半分なのよね」

 ビッチェが言うと、エヘヘの笑い声がアハハと膨れ上がる。

 

 そうだ、増上寺の本堂の屋根越しに見えたんだ!

 

 幼い日のお正月、初詣で混雑する境内、お祖父ちゃんに肩車してもらったら、間近に東京タワーが見えてビックリしたんだ。

 しかし、本堂の上は青空が広がるばかり。

「もう少し山門の方に寄ってみたら見えるわよ」

 そんなに低いわけない。

 スカイツリーに取って代わられたとはいえ、堂々の333メートルだ。

「リフトしてあげよう」

 ケイ軍曹が手を上げると、山門付近にいた隊員たちがチアガールがやるようなピラミッドをつくり、アッと思った時には両脇に居た隊員二人に投げ上げられて、おっかなびっくりで三段目に着地した。

 

 あ………………

 

 見えるには見えたんだけど、東京タワーは第一展望台までしかなかった。

 なんだか、カメラを着けずに立っている三脚のようだ。

「リアルには、ちゃんと上まであるんだけどね。ここはスピリッツの世界だからね」

 ビッチェがニヤニヤしている。

「どういうことなの?」

「東京タワーの上半分は、朝鮮戦争でスクラップになった戦車で出来ているんだ。そうだよね軍曹」

「検索すれば分かることなんだけど、意外に知られていなかった」

「ホーー……でも、上半分とは言え、東京タワーになるんだ、大きな戦車だったのね!」

 ガルパンに出てきたドイツのカール自走砲とかマウス超重戦車を思い出した。

「一両じゃないわよ、この境内に集まった人数と同じだけ」

「……九十台?」

「うん。マヒロをリフトしてくれてんのがM24チャーフィー。わたしはM26パーシング、そっちがM4シャーマンの子たち」

 紹介される度に、一群の少女たちが顔を見合わせて微笑む。

 わたしも健二のお付き合いだったけど、映画版のガルパンは知っている。小五らしからぬ知識でガルパンの魅力についてYouTubeの動画を観ながら聞かされたので戦車の名前くらいは「あ、あれか」という程度には分かる。

「それが大事なのよ。M26とかM4とか言われてMサイズの区分とか思われてるようじゃ、たとえスピリッツの世界でも実体化はできない。戦車のことだって分かってもらえて、その何パーセントが――東京タワーの上半分は戦車で出来てる――ことも理解してくれて、初めて里帰りもできるのよ」

「そうなんだ……でも、戦車だったら男のイメージじゃないのかなあ」

「それは、マヒロもさ、わたしたちを見てガルパンのサンダース付属高校を思い出したでしょ?」

「あ、うん」

「ガルパンで、ほとんど忘れられていたわたしたちが思い出されて、その思い出してもらったエネルギーのおかげで実体化できているの」

「ああ、オタクの力だ」

 嬉しそうに画面に食い入っていた健二の姿が浮かんだ。

「軍曹、まもなく迎えが来ます」

 シャーマンの一人が山門の方を指さすと、十数台の軍用トラックがやってくるのが見えた。

「予定より早いなあ……よし、各自本堂の阿弥陀様にお礼を言って乗車しろ」

 少女隊員たちは、各々の居所で姿勢を正して本堂に一礼して山門に向かって行った。

 

「それで、みなさんは、どこに向かわれるんですか?」

 

「決まってるでしょ、六十五年ぶりのアメリカ」

 ふと、この少女……戦車たちの精霊は戻ってこないんじゃないかという気がした。

「あの……」

「サンクスギビングは向こうで過ごすわ」

「サンクス……?」

 アニメのスポンサーになっていたコンビニを思った。

「アハハ、感謝祭のことよ。クリスマスには帰って来るわ。じゃあね」

 

 九十人の少女……戦車の精霊たちは、わたしには『ゴンべさんの赤ちゃんが風邪ひいた』に聞こえるマーチを口ずさみながら山門を出て行った。

 

「さ、わたしたちも行くわよ!」

 

 ビッチェが消防車のステップに足を掛けながら気合いを入れた。

 

☆ 主な登場人物

  田中 真凡    ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生

  田中 美樹    真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしていたが、今は海外に居る。

  橘 なつき    中学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き

  藤田先生     定年間近の生徒会顧問

  中谷先生     若い生徒会顧問

  柳沢 琢磨    天才・秀才・イケメン・スポーツ万能・ちょっとサイコパス

  北白川綾乃    真凡のクラスメート、とびきりの美人、なぜか琢磨とは犬猿の仲

  福島 みずき   真凡とならんで立候補で当選した副会長

  伊達 利宗    二の丸高校の生徒会長

  ビッチェ     赤い少女

 

ジャンル:
小説
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