大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベルベスト・『魔女の宅配便』

2018-06-22 06:26:17 | ライトノベルベスト

ライトノベルベスト
『魔女の宅配便』
          


 文化祭で、みんなでコスパレードをやることになった。

 コスは手作りでも、借りてきても、買ってきてもOK。
 それを着て、学校から駅前までパレード。途中AKBの恋チュンを流して街の人たちも巻き込んで、一大イベントにしてユーチューブに投稿しようというタクラミだ。

 言いだしべえは、家が洋裁店をやっている生徒会の文化部長・片平恵美。家が洋裁店だから、どんなコスも自分ちでロハでいけると、その時はひがんだ。

 そのころのあたしは、とにかくひがみっぽかった。

 でも、パレードに恋チュンなら楽しくやれそうだ。あたしはママゾンにアクセスして、仮装コスプレ衣装で検索した。
 ため息が出た。

 コス衣装とは言え、高校生の懐具合からは桁が一つ違う高さだった。
 AKB関連のコスだけでも70近くある。でも条件にあうようなものは一つもなかった。

 あきらめて、夕食の用意。家では半年前から、あたしが炊事係。

 簡単なものがいいので、冷蔵庫の中身と相談。即カレーライスと決まる。なんせ材料を刻んで炒めて煮込めばしまい。あとはいつもの二割増しぐらいにご飯を炊けばいい。上手い具合に今日は金曜日。元海上自衛隊だったお父さんは、金曜はいつもカレーだった。それにかこつければ文句も出ないだろう。
 煮込んでいる間はヒマだ。でも、時々かきまわさなきゃならない。その間いろんなことが頭をよぎる。
 この六カ月のこと……そして文化祭のこと。あたし三年だから最後の文化祭。やっぱ精一杯ハッチャケたいよ。

 あたしは、もう一度ママゾンを検索してみた。

 トップに『ラフライブ』の制服とウィッグのセットが出ていた。Mサイズ送料こみ2000円だ。この人気アニメのコスなら目立てる。それもウィッグ付。モデルのオネエサンが、ちょっと若作りにみえたけど。問題は商品。コンビニ決済で即注文。

 ちょうどカレーも、ころあいに煮えたので、ガスを切ってコンビニへ。

 でもって土日を挟んで、学校へ。

 文化祭は週末だ、気の早い連中はコスの見せっこをしている。
 何人かはママゾンで恋チュンのコスのレプリカを見せびらかしていた。クソ、あたしだって着たかった。でも、あれって、どこの通販みても一万以上。あたしには高嶺の花。まあ、2000円のラフライブで逆転と空元気を付ける。

 その日の帰り、駅の改札を出たところで声をかけられた。

「立花恵梨香さんですね?」
 振り返ると、ラフライブの制服を着たオネーサン。
「魔女の宅配便です。ママソンからのお届け物です」
「はあ!?」

 気が飲まれたというところだろう、受け取りにサインすると……なんということ、ラフライブのコスを着ているのはあたしだった。

     

 オネーサンは、年相応のカットソーとジーパンの姿になって……で、気が付いた。このオネーサンともオバサンともつかない人は、ママゾンを検索したときのコスのモデルだった。

「ごめんなさい、ウィッグ忘れてた!」

 そう言われると、頭に違和感。駅前の洋品店のガラスに写ったあたしは、ラフライブの主人公そっくりな姿になっていた。
 メイクもしていないのに、際立ったアイライン。目が二回りも大きく見える。制服もぴったり、ウィッグも特徴あるサイドのテールがピョコンとしていて、根本の黄色いリボンがライトブラウンの髪を引き立てていた。
「あれ……?」
 ウィッグを引っ張ると、頭の地肌が引っ張られる。まるで自分の髪だ。
「それ、特殊な最先端のウィッグで、つけると自分の髪同然。外してって思えば元にもどるから」
 信じがたいけど、そう思うと、元の自分の髪に戻った。

 だが、オネーサンは戻らなかった。

「あ、受け取りのサイン済ませましたけど……」
「あら、あたしも商品の一部。分かってなかった?」

「ええ、うそ!?」
 オネーサンは家までついてきた。で、パソコンを操作した。
「恵梨香が二度目に打ち込んだのは、ママソン。ZとSって近いからミスタッチしやすいのよね。で、この商品よーく見て。商品内容はここに写っている物全てです……ね、だからあたしも付いてきたわけ」
「そ、そんな……」
 ちょうどびっくりしたところへ、お父さんが早番で帰ってきた。

「おお、そうやって並ぶと生まれながらの母子だな!」

 お父さんは、ごく自然に自分の妻に対するように、オネーサンに接していた。

「それが文化祭の衣装か、よく似合ってるぞ」
「ね、そうでしょ」
 二人は、まったく自然な夫婦だった。そのうち弟が帰って来て、弟も、ごく自然に「お母さん」と呼んでいる。

 それは、半年前に崩れてしまった家庭には無かった自然な温もりがあって、お風呂から上がったころには、あたしも、ある意味自然に受け入れていた。

「ええ、やだよ。こんなクマちゃんのついたパンツ!」
「なに言ってんの。クマちゃんパンツは、恵梨香の保育所からの勝負パンツじゃないの。それ穿いて、文化祭がんばんのよ!」
「文化祭は、週末だよ」
「七枚セットで買ってあるから、文化祭終わるまではクマちゃんパンツ大丈夫!」

 宅配お母さんの予言は当たった。

 文化祭のパレードでは、あたしが断トツで、グランプリをとった。
 人生は捨てたもんじゃない、奇跡がおこるんだもん! 秘密だけどね……。

ジャンル:
小説
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