大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・オメガとシグマ・88『祝 突撃新人賞受賞! 妻鹿菊乃!』

2018-11-11 06:45:20 | 小説3

オメガとシグマ・88菊乃のターム

『祝 突撃新人賞受賞! 妻鹿菊乃!』




 ほんのガキンチョのころ、うちはパブをやっていた。

 で、今でもお店はそのまま残っていて、応接間代わりにしたり、時には、あたしたちの遊び場や、たま~には勉強部屋になったりする。
 でも、家族やご近所の人たちが使っているだけでは、現役当時の賑わいはない。
 お店そのものは、お祖父ちゃんのこだわりで、昔のマンマ。
 マンマなんだけど、えと……たとえばね、お客さんが出入りしていると痕跡が残るのよね。シートのレザーのテカり具合、棚に納められたグラスや食器の佇まい、テーブルやカウンターの微かなシミや汚れや傷、そういうものが違うのよね。
 シミも汚れも傷も歳をとる。二十年前のそれと夕べ付いたそれでは、かなり違う。
 なによりも空気が違う。
 空気清浄機があるとはいえ、営業していたころは、タバコやお酒のニオイ、香水とか加齢臭とか、シャンプーとかコロンとか、お客さんが運んできた外の空気のニオイとかがする。
 
 要するに、生きているお店のオーラ、閉店してからは、そのオーラが無い。

 え……?

 学校からまっすぐ帰り、お店のドア開けて戸惑った。
 お店に営業中のオーラがあるのだ。
「お祖父ちゃん、今日、人が集まったりした?」
「え、そうかい」
 ……お祖父ちゃんは、なんか隠してる。
 お店に大勢の人が集まるのは、町会とか神社のお祭りとかで、たまにあるんだけど、その感じでもない。
 でもまあ、大人の事情ということもあるんだろうから詮索はしない。

 二階の自分の部屋に戻ってエアコンを点ける。

 制服のブラウス脱いでハンガーにかける。ほんとは洗濯したいんだけど、昨日のを洗濯籠に入れるの忘れていたので致し方ない。
 着替えとタオル持ってお風呂場にシャワー浴びに行く。
 シャワ-浴びていると、お店ではない玄関の開く音がして、廊下をドタドタとお店の方に。
 足音で腐れ童貞だと知れる。

 それも、なにか重い荷物を持っている気配。
――あいつ、なに企んでるんだ?――
 先週までは、帰宅後のシャワーでシャンプーまではしなかったけど、ここんとこのムシムシでシャンプーすることにしている。
 シャワーの音に紛れて、微かにざわめきがしたような気がする。
 濡れた髪をガシガシ拭きながら廊下に出る。

「菊乃、こっちこっち!」

 二階へ戻ろうとしたらお母さんに呼び止められる。
「え、なに?」
「いいからいいから!」
「なによ……」

 お店と廊下を隔てるドアを開ける。

 パパパパパーーーーン!!

「きゃ!」
 音と閃光に思わず目をつぶった。
 恐る恐る目を開けると……お店はご近所の人で一杯だ!

 祝 突撃新人賞受賞! 妻鹿菊乃!

 横断幕が張られ、あちこちでビールの栓を抜く音、風信子ちゃんにエスコートされてお店の真ん中へ。
「よし、胴上げよ!」
 町会長夫人が黄色い声を上げて、あっという間に担がれる。

 あ、あ、ちょっと、胴上げもいいけど、オッサンたちは加わらないでよ、ちょっと、どこ触って……。

 その間に、腐れ童貞は、段ボールに入ったトツゲキ6月号を配り始めた。手伝っているのは、ノリスケ、シグマ先輩、それに増田さんまで!

 あ、ありがたいんだけど、これは……キャ!

 胴上げに力が入りすぎ、天上にぶつかってしまった!
 

ジャンル:
小説
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