大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・〔普通科高校の劣等生・2〕

2017-12-15 06:09:11 | 小説4

ライトノベルセレクト
〔普通科高校の劣等生・2〕



 オレには、魔法とは言えないけども特技がある。

 ここ一発と言うときに、相手の心が読める。確率で言うと85%ぐらい。だから特技と言っていいと思う。
 でも、念のため繰り返しとくけど、いつも読めるというわけじゃない。いつも読めたら落第なんかしない……いや、ちょっと違うな。

 カッコつけるわけじゃないけど、試験の時に人の心を読もうとは思わない。実力じゃないのに優等生の心から答えを読んでまで合格点を取ろうとは思わない。だから、素直に欠点を取る。ここまで読んでくれた人は、オレの事をシニカルな反体制的な人間と尊敬してしまうかもしれない。オレは、そんな尊敬に値するような人間じゃない。いや、ほんと。

 気ままなんだという自覚もある。

 去年の学年末テストでも、親友の高砂澄人からノートを借りた。いっちょ前の悪あがきだ。
 でも、澄人のマメな性格を表す字やノートの美しさには感動したが、書いてある中身の無機質さにはゲンナリした。国語にしろ英語にしろ、生きた言葉をどうして死体を解剖するように無意味にいじくりまわすんだろう。「You」をスラングでは「u」と縮めて表現する。プレステのチャットで覚えた数少ないオレの英語の知識。でも、オレは感動した「You」も「u」も発音すれば大差はない。会話にもスピード感が出る。ただ、アメリカにもシャワーみたく言葉を発してないと落ち着かない人間はいるんだなと思った。
 会話っていうのは、間があってこその会話だと思う。「なるほど」「そうなんだ」「だけどな」などと考えながら会話していると、自然な間が空く。だからこそ人間と言うのは共感して友達なんかになったり、恋人や夫婦になったりする。

 ラインやメールも同じだと思う。やりとりに隙間ができるのが嫌だから、絶えず返事を打たなきゃならないハメになる。だから、オレは、ある時期から携帯を止めた。パソコンはやっている。メールは、そこで受ける。パソコンは持ち歩くもんじゃないから「なんで、直ぐに返事よこさないのか!」などと責められることはない。

 あ、オレが聖人君主でないことを言っておかなきゃ。

 澄人からノートを借りて、オレはしばらくホッポラカシだった。ノートの中身の無機質さもあるけど、やっぱオレの気ままなんだと思う。
「トドム(留)そろそろノート返してくれないか」
 澄人は遠慮がちに言った。これに、オレはとんでもない返事をした。
「澄人は、このノートが無くても進級できるだろうけど、オレはこのノートが無ければ落第するんだ!」
 言いながら、オレは『走れメロス』のメロスに仮託した太宰治の言い訳のような気がして、受話器を置いた後すごい自己嫌悪に陥った。澄人は、メールじゃなくて固定電話で話してくれた。オレは澄人らしい距離の取り方だと思い、かつ反省した。

 オレは、直ぐにノートを持って……澄人の家にチャリを飛ばした。

「いいのかよ、トドム?」
「大丈夫、大丈夫、そこのコンビニでコピーしてきたから。最初から、こうすりゃ良かったんだよな、アハハ」
 そう言って、オレはA4の紙袋を澄人に見せた。

――トドム、見栄張りやがって――

 澄人の心が読めてしまった。だけど、澄人は「そっか、そうだよな。がんばれよ」としか言わなかった。
 オレの見すぼらしい自尊心を、澄人は笑顔で労わってくれた……。

 そうそう、オレの親が離婚したのに同じ家にいるってこと話してなかったよな。

 うちの両親は、オレが小5の時に離婚した。オレは親父に、妹の伸子はお袋に引き取られることになった。
「兄ちゃん!」
 妹は、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしてオレに抱き付いてきた。オレもきつく抱きしめて泣きながら妹の髪をグシャグシャにした。
 でも、あてにしていた実家にもどることができなくなって、お袋は、そのまま居続けになった。

 親父とお袋が、こうなるのには数年の確執があった。オレは保育所のころから感じていた。「ただいま」「おかえり」という何気ない言葉にも親の気持ちを推し量る子になった。オレが人の気持ちを読めるようになったのは、このへんに原因があるのかもしれない。

 お袋は、そのまま居続けた。で、いつの間にか離婚状態は解消してしまった。いっそ元に戻ればと思ったが、言いだせば、今度こそ、本当に別れてしまいそうで、オレは言えなかった。親父もお袋も、それを恐れて休戦みたいなバーチャルな平和な家庭を続けていた。

 ああ、なんか話がマジっぽい。今度は、もっと真っ当な劣等生の話すっから!

ジャンル:
小説
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