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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

千早 零式勧請戦闘姫 2040・28『何ごとも馴染むまでは』

2025-04-11 09:35:37 | 不思議の国のアリス
千早 零式勧請戦闘姫 2040  
28『何ごとも馴染むまでは』




 家に帰ってから、千早はずっとトモエ(鏡の神さま)の姫鏡を睨みつけている。

 人が見たら、年頃の少女らしく、自分の姿に見惚れたり自己嫌悪に陥ったり、自意識の沼に嵌っているように見えるかもしれない。

 じっさい、前の廊下を通った父の一彦は「選ばれてあることの恍惚と不安、二つ我にありという様子だなぁ(^▽^)」と微笑ましく思った。

 一彦は高校大学と小説やライトノベルに嵌って、作家を目指していた時期がある。才能も根気も無く家業の神主に収まっているが、娘が鏡を睨みつけている姿に思わず太宰治の名言が浮かんで、青春時代の自分と娘を重ねてしまったのだ。

 ……しかし、当の千早は、そんな悠長で微笑ましい自意識の沼に嵌っているわけではない。 

 姫鏡に映し出されているのは、ついさっき、ウズメを勧請して黒ウサギと戦った時の様子なのだ。

「ああ……なんで、こんなにカタイのかなあ……なんか、これじゃ歌舞伎の立ち回りじゃん……よく言っても戦闘馬鹿の姫騎士だよ。もっと軽いノリっていうか、普通にやれないのかなあ……」

『仕方ないでしょ、普段の会話はともかく、戦闘はスピードと緊張感と力の籠め方。今みたいなJK語じゃあ、調子が出ない』

「それにさぁ、なんで、戦闘中の記憶がないのぉ……太陽光パネルの時はちゃんと覚えてる。市役所で戦った時も、バブルの森で戦った時も、でも、今度は完全にとんでしまったよ。それで、トモエの姫鏡で確認したらこれだもん、ちょっと凹むよ」

『それはね、勧請の深度が深くなったからよ。このウズメの力を100%発揮しようとすると、ウズメ本来の言葉でなきゃ十分に力を発揮できないのよ』

「じゃあ、あなたたち神さまは、わたしの体だけが目当てなのぉ?」

『ああ……その言い方、なんかヤラシイ』

「あ、もう、そういう意味じゃないわよ(''◇'')」

『まあ、慣れてくれば人神一如(じんしんいちじょ)って感じになれると思うよ。その時目指して、まあ、ボチボチやっていこう(^_^;)……あ、宅配便が来るわよ』

「え、あ、ひょっとして!?」

 ドタドタドタドタ!

 慌てて社務所まで出て見ると、玄関に立っているのは二人の配達員。神社には一般家庭より宅配が多いが、二人で来るのは初めてだ。

「ちわっす。今度からはこのロボットが配達に来ますんで、よろしくお願いします。ほれ、お渡しして」

『クロクマトヤマのクロックと申します。これからは、この地区を担当しますのでよろしくお願いいたします(^▽^)。はい、お荷物です』

「ありがと……なんか本職さんよりソフトねえ」

「センターの方にオペレーターがいて、半分遠隔操作なんす」

「え、人がオペレーターやってたら省力化にはならないでしょ?」

「あ、試運転期間だけっス。問題が無いようなら、順次AIだけでの運用になるっス」

「ああ、そうなんだ。どうもご苦労さま」

「ところで、お姉さんお嫁に行ったってほんとうっスか?」

「あ、うん。これからはあたしが、ここの看板巫女だから、よろしくね」

「あ、はい、それはもちろんっス。じゃあ、これからもクロクマトヤマよろしくお願いしまっス!」

『お願いいたします』

 元気にトラックに戻っていくクロクマの人とロボット。

『あの配達のニイチャン、挿がお気に入りだったみたいねぇ』

「フン、あたしは、まだ馴染みが無いからよ」

『そうねぇ……でも、これからは、あのロボットだよぉ』

「うっさい。あ、これ、さくらさんからだあ(^▽^)!」

『あ、結婚式で言ってたお下がりの服だ!』

「うんうん、さっそく……なんで、ウズメさんまで実体化するわけぇ?」

「もちろん、わたしも着てみるわけよ。サイズは千早といっしょにしといたし(^^♪」

「あ、でも、わたしが先だからねえ」

「うんうん、でも、ウズメの方がきっと良く似合う!」

「なんでよ」

「だって、ウズメは芸能の神さまでもあるんだからねえ(^▽^)」

「と、とにかく、あたしが先。あたし宛なんだからね!」

「まあ、そう言うな。十着は入ってるぽいから、とっかえひっかえじゃ(^▢^)!」

 
 それから晩ご飯の準備までファッションショーの神さまと巫女であった。


 で、どちらが似合っていたかというと、どちらも微妙。

 何事も馴染むには時間が必要と思われた。

 

☆・主な登場人物
  • 八乙女千早           浦安八幡神社の侍女
  • 八乙女挿(かざし)         千早の姉
  • 八乙女介麻呂          千早の祖父
  • 神産巣日神          カミムスビノカミ
  • 天宇受賣命           ウズメ 千早に宿る神々のまとめ役
  • 来栖貞治(くるすじょーじ)  千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子
  • 天野明里            日本で最年少の九尾市市長
  • 天野太郎            明里の兄
  • 田中            農協の営業マン
  • 先生たち          宮本(図書館司書)
  • 千早を取り巻く人たち    武内(民俗資料館館長)
  • 神々たち          スクナヒコナ タヂカラオ 巴さん
  • 妖たち           道三(金波)
  • 敵の妖           小鬼 黒ウサギ(ゴリウサギ)

 

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