大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・〔普通科高校の劣等生・10〕

2018-02-20 06:58:25 | 小説5

高校ライトノベル
〔普通科高校の劣等生・10〕



 あろうことか、友美はマスコミに露出してしまった。

 むろん未成年なんで、仮名だし、顔写真にはモザイクがかかっている。
 だけど、こんなもの関係者なら正体が直ぐに分かる。SNSなどに実名と顔写真が出ることに、さほど時間はかからなかった。
 伸子の話では、ノンフィクションで本を出す企画も来ているらしい。現職教師と生徒の許されざる関係! センセーショナルだ。少なく見ても1万くらいは売れるだろう。1000円の本で、印税5%(上手くいけば10%)として50万円!

 むろん良いことばかりじゃない。露出したことで社会的に叩かれることもあるだろう。でも賛同してくれる人たちだって同じか、それ以上出てくるだろう。友美のメールなんかを伸子が見せてくれた。伸子は大ごとになって、ビビっている。だから普段同じクラスにいても他人のふりをしている。オレは落葉の苗字、伸子は登坂の苗字で通っていて、伸子が停学になって担任と生指の梅本が来た時には、家中のオレの痕跡が消され、存在しないことにもされた。

 でも、その伸子がメールを見せた。

 二つのことが分かる。伸子が相当まいっていることと、友美に文才があること。国語嫌いの劣等生が言うんだから、本当にうまい。友美の分掌は下手なラノベを読んでいるより面白い。
 友美は自信があるんだ。これをきっかけにライターになろうとしている。見た目も学校で10人に一人ぐらいに可愛いから、そっちのほうでも狙っているかもしれない。

 オレの伸子への忠告は、ただ一つだった「関わんな!」 伸子はあっさりと頷いた。正直、クラスで他人の関係になっていたことを、オレは喜んだ。

「トドム君、話があるの……」

 ミリーが、目を潤ませて、そう切り出したのは、絵の仕上がった成人の日だった。

 この三か月で、ミリーはみるみるきれいになっていった。なんて表現したらいいんだろう……上手く言えないけど、AKBの選抜がデビューしたときと卒業したときぐらいに違いがあった。

「オレは単に絵描いただけだから、あんま難しい話は分かんねえよ。劣等生だしさ」
「ううん、こんなに、あたしのことを見つめて、しっかり描いてくれたんだもの。トドム君なら分かってもらえる……ううん、もう気づいてる」
「え……」
「ほら、その顔。気づいてるんだ」
「いや、あ、え、絵とか写真のモデルになると、大人びた魅力が出てくるもんだよ」
「トドム君は正直だ……あたし早期老化症候群なの」

「え……?」

「去年の春に、保険にはいるためにDNA検査して分かったの。ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群でもコケイン症候群でもない。老化の速度は人の三倍。あたし18歳だけど体は25歳ぐらい。二年もすれば30歳……10年すれば60を超えてしまう。長生きしても40歳がいいとこでしょう……」
「ミリー……」
「このごろ老化の速度が早くなっているような気がするの……ひょっとしたら30まで持たないかもしれない」
「それで、オレに絵を……?」
「うん。自分の一番いい時の姿を残しておきたかったから……泣かないでよ。これでも希望を捨てたわけじゃないんだから」
「なんか治療方法はないのかよ?」
「そのために日本に来たの。日本の医療技術はすごいけど、規制が厳しくて自由な研究がでいない。でも密かに、この難病の研究をしている人がいるの。それにあたしは賭けているの」
「……治りそうなのか?」
「この三か月は上手くいかなかった。でも上手くいった」
「え、でも……」

 ミリーは裸のまま、オレに抱き付いてきた……なにが上手くいったと言うんだ?

 そう思いながら、ミリーの背中に恐るおそる腕を回した。


 あくる日からは、ミリーは学校にやってこなくなった。

 出来上がったキャンパスはミリーの家だが、オレは、ミリーの了解を得て写真に撮ってある。
「……そうだったのか!」
 思わず声になってしまった。授業中だったので先生に注意された。伸子は、相変わらず他人顔。
 ミリーは、ほんの数週間だったけど、理想的な大人の女になったんだ。それが上手くいったということなんだ。オレも初めて人を好きになった。

 今は、三回目の落第にならないように励んでいる。オレは普通の劣等生なんだから。

                                 落葉 留 

ジャンル:
小説
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