大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・27「自然の摂理かパラレルワールド」

2018-02-04 16:28:02 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・27

『自然の摂理かパラレルワールド』

 

 

 あんな目に遭いながら、佐伯さんは三宅先生を気遣った。

 

「どうだった?」

 別館から出てきた佐伯さんに小さな声で聞く。

「人が変わってたでしょ?」

 天気を確認するくらいの気楽さでイスカ。三人の足は自然に藤棚に向かう。

「あ……うん」

「なにか引っかかった?」

「それが……見て」

「あ」

 佐伯さんが出した日本史のノートを見て、イスカは小さな声を上げた。バトルしている時とは違って西田佐知子としてのリアクションなので、とても控え目なのだ。ちなみに、オレはノートを見てもなんのことやら分からない。リアルじゃ劣等生だもんな(涙)

「中身が変わってる」

 ?な顔をしていたので、佐伯さんが解説してくれる。

 佐伯さんは、質問を装って様子を見に行ったのだ。

 

――板書に質問があるんですが――

――はい、どこかな?――

――ここです……あれ?――

 佐伯さんが示したページは正しく書かれていた。巣鴨でA級戦犯が処刑されたのは、キチンと十二月二十四日の天皇誕生日になっていて、注釈で『天皇誕生日と重ねたのは占領軍の悪意の繁栄かもしれない』と書かれていた。

――ごめん、先生、話下手だから聞き間違ったのかもしれないね。ま、板書の方が正解だから、こっちの方を信じてください――

 

 三宅先生は丁寧に解説してくれただけでなく、お茶を入れて世間話までしてくれたらしい。あまりの変わりようにオタオタする佐伯さんだったが、三宅先生は冗談なども交えてほぐしてくれたらしい。

「ま、先生は何事もなく……フフ、さま変わりだったけど、お元気な様子で、ホッとしたわ」

 リアルでもバトルでも大変な目の合わせてくれた先生だけど、モンスターとして倒れた後を心配する佐伯さんは、とてもいい人なんだと、オレの心まで温かくなった。

 

「パラレルワールドかも……」

「「え?」」

「並行世界。三宅先生がいい人であるという点だけが違う。三人揃ってパラレルワールドに飛ばされたのかもしれない」

「それって……」

「自然の摂理かルシファーの企みか……とにかく、三宅先生が不在であるというアクシデントは修正された……あ」

「「え?」」

 イスカが驚いた方角を見ると、当の三宅先生が穏やかに別館を出て、飄々と本館に移るところだった。

 姿かたちは三宅先生なんだけど、先生特有な神経質な陰惨さが無く、藤棚のオレタチに気づいて「ヤア」と白い歯を見せながら手を上げてくれる。反射的に笑顔でお辞儀するオレタチも、なんだかいい生徒という気がしてくる。これなら生産的な気持ちで日本史の授業が受けられる。

 

 これが自然の摂理で、このあと何も起こらなければ、パラレルワールド大歓迎……だったんだが……。

 

「ちょっと、救急車だ!?」

 掃除当番も終わり、昇降口に下り始めると救急車が学校に入ってくるところに出くわした。放課後の開放的な喧騒を不安な沈黙に変え、救急車は本館のアプローチに停車した。保健室の先生が待ち受けていて救急隊員をストレッチャーごと玄関に誘った。

「病人? 怪我人?」

「…………………………」

「ちょっと遅いわね」

「あ、出てきた」

「え、なんで?」

 出てきたのは救急隊員だけで、ストレッチャーは空のままだ。

 不思議に思っていると、今度は別のサイレンが聞こえてきた。

「パトカーだ!」

 

 お巡りさんたちは、他の野次馬に混じって二階の職員室に向かって行った。

 そこで、オレタチは悲劇を目にすることになった。

 

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高校ライトノベル・音に聞く高師浜のあだ波は・1『天女の日』

2018-02-04 07:05:30 | 小説6

高校ライトノベル・音に聞く高師浜のあだ波は・1  
『天女の日』


 10月24日は天女の日なんやねんて。

 10をテンと英語読み、24でニョと読ませて、合わせるとテンニョになる。
 せやから天女の日。
 うちの街が、こんな語呂合わせ丸出しの日を制定してるとは今日のNHKニュースを見るまでは知らんかった。

 先週の木曜日に激しい腹痛に襲われて学校を早退。薮中医院に行ったら「これは盲腸やなあ」と診断されて金曜日に入院「月曜日にオペしよう」ということになり、土日は痛み止めの注射で抑えて、月曜にめでたく手術。火曜日は安静にして、今日から学校に復帰。

 で、天女の日は安静でぼんやりテレビを観てて気ぃついた。

 なんともベタすぎる語呂合わせに思わず笑うたら、死ぬほど傷口が痛なってしもた。

「あんまり笑たらあかんよ」

 お祖母ちゃんのお言葉はありがたいねんけど、お言葉のあとで派手なクシャミ、で、入れ歯が飛び出してしもて、トドメの大爆笑! 

 グヘヘヘ……イダダダ……(涙 涙 涙 涙 涎)

 もう気絶寸前になってしまう。こんなに笑うのが苦痛になったんは生まれて初めて。

「ホッチ、もう学校きてええのん?」

 下足室ですみれが聞いてくる。

 すみれは中学校からのお友だちでクラスメート、弓道部のエースでもあって成績優秀の文字通り文武両道に秀でたベッピンさんやけど、うちみたいなもんにもわけ隔てなく付き合うてくれるできた子。

「いまどきの盲腸は、ほんのちょっと切るだけやし大丈夫。笑ろたら響くけどな」
「ざんねん、笑かしたらあかんとはな」
「笑かすのんはカンニン」
 すると、すみれは吉本のギャグをカマス。ちょっとも面白ない。

 すみれは、ようできた子やけど、ただ一つギャグの才能はない。無くてよかった、今度笑わされたら救急車や。

 すみれと教室への階段を上りはじめると、生徒らが逆流してきた。

「なんや、臨時の朝礼らしいで」
 踊り場で出くわした染井(うちの委員長)が教えてくれる。
 回れ右して体育館へ。

「あ、せや……」

 すみれが何か言いかけたのは、もう体育館の入り口。
「早く並びなさい、男女一列ずつ、出席番号順!」
 生活指導の真田先生に急き立てられて自分の定位置に。
 あたしは天生(あもう)やから一番前、すみれは畑中で、もうちょっと後ろに分かれる。

 機嫌用よう定位置に着くと、グイっと押しのけて、あたしの前にシャンプーの匂いも香しく現れた見知らぬセミロング。

「ちょ、なにあんた!?」
「え? ああ、盲腸で休んでた天生さんね?」
 振り返った笑顔は、すみれの水準をツーランクは超えていようかというベッピンさん。
「わたし、阿田波姫乃(あだなみひめの)。月曜に転校してきて、出席番号は天生さんの一つ前、どうぞよろしくね」
 悪気はないのだろうけど、握手しようとして出してきた手が、盲腸の傷口を触っていく。
「ウグッ!」
「あ、ごめんなさい!」
 阿田波さんは、ものすごく済まなさそうな表情をすると、なんと、傷口である下腹部にヒラっと手を当てた。
「え……」
 と思っていると、スーーっと痛みが引いていく。

 あたしと阿田波姫乃との出会いであった。
 

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・『イケメーン!』

2018-02-04 06:42:17 | ライトノベルセレクト

ライトノベルセレクト
『イケメーン!』
        


 わたしが剣道部に入ったのは、弟を鍛えるためだった。

 弟の信二は、姉のあたしから見てもたよりない。
 体裁よく言えば草食系なんだけど。ようはヘラっとして、いつも半端な微笑みで、意見をすると目線が逃げる。

 それになにより、不男だ……と、決めつけるには、まだまだ早い小六なんだけど、来年は中学だ。

 いまでも少しハミられているような気配がある。勉強こそは真ん中だけど、こと人間関係に関してはダメだ。けなされようが、ごくたまにだけど褒められても不器用にニヤケルことしかできない。その笑顔は姉のあたしがみても苛立つほどに醜い。
 
 あれでは中学でイジメに合うのは確実だろう。

 あたしも、運動部に入ったことは無い。中学でちょっとだけ演劇部にいたが、やってることが学芸会並なので、直ぐに辞めた。
 体育は4で、授業でやる程度のことなら、人並みにはやれる。
 だから、高校では声のかかった演劇部をソデにして運動部を目指した。

 格闘技がいいと思った。で、柔道部と剣道部に見学に行った。

 柔道部は女子もいるんだけど、胴着の下のTシャツを見ないと性別の分からないような子たちばかり。男子は言うに及ばない。
 あたしは、ただの体育会系は好きじゃない。体だけできていても、その分脳みそとかハートを落っことしたようなやつはごめんだ。
 柔道は、体を密着させる競技だ、寝技なんか、胴着を着ていなきゃ動物的なカラミに過ぎない。柔道部はメンツをみただけで却下。

 で、剣道部に入った。

 剣道部も似たりよったりの顔ぶれだけど、防具をつけると、完全に体はおろか、顔もはっきりとは分からない。第一体が密着することが無い。
 最初は素振りとすり足で、手はマメだらけ、足の皮は剥がれるんじゃないかと思うくらいだった。

「ようし寛奈、素振りの切っ先もぶれなくなった。明日から防具つけて打ちあい稽古だ」
「あの、明日からは連休ですけど……」
「あ、そうだな。じゃ連休明けからだ」
「遠足挟んで代休ですけど」

「あ、じゃ、その次」

 このさりげないツッコミがおもしろかったのか、部員みんなが笑った。やはり、しまりのない笑顔だ……。

 立ち合い稽古が出来ると言うので、あたしは近所の八幡様にお参りに行った。
――まあ、気いつけてがんばりや――
 本殿の奥から、そんな声がしたような気がした。でも弟には聞こえないようなので、空耳だったのだろう。

「初心者にしては筋がいい」

 最初に立ち会った二年の副部長が誉めてくれた。
「ただな、面のときに『イケメーン!』ていうのはよせ、ただの『メーン!』でいい」
「うそ、そんなふうに言ってました」
「言ってた」
「すみません、気を付けます」

 それから、何人かと立ち会ったけど、あたしの「イケメーン!」は直らないらしい。
「たぶん、気合いのイエー!がイケー!に聞こえるんだろう。まあ、気にするな」
 顧問の立川先生が慰めてくれた。

 あれから、一か月近くたって剣道部に異変が現れた。

 男子部員のルックスがアドバンテージになってきたのだ。
 あたしは、部員の中でも部長だけは買っていた。見るからに運動バカだけど、自分を諦観したところがあって「オレは女にモテなくても剣道できれば、それでいい」というところがあって、表情が澄んで屈託がない。も少し顔の造作が……と思っていた。

 立ち合いは、この一か月近くで百回ほどになった。

 すると、心なしか、男子部員のルックスが確実に向上。中にはコクられ、生まれて初めて彼女ができた者も現れた。
 一学期の終わりには、すっかりイケメンの剣道部で通るようになり、女子部員も増えた。

 部長は、その中でも一番変化が大きかった。

 あたしは、正直に嬉しかった……が、技量は目に見えて落ちてきた。試合に出ても負けがこんできた。

 部長は、ただ一人言い寄る女生徒も相手にせずに稽古に励んでいた。いつのまにか、あたしが部長の立ち合いの専門になった。
 で、気づいてしまった。
 防具の面越しに見える目が、あたしを異性として見ていることに。凛々しい目の底にいやらしさを感じる。

――引退するときに、コクりよるで~――

 八幡様の声が聞こえた。あたしの「イケメーン!」は、どうやら、男をイケメンにはするが堕落させることに気づいた。

 これでは弟を鍛えることなど出来はしない。

 あたしは次の部活を探している……。

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高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・103『第二十一章 受け継がれるもの・1』

2018-02-04 06:24:21 | はるか 真田山学院高校演劇部物語

まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・103   


『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。

『第二十一章 受け継がれるもの・1』

「忠クンさ、自衛隊の体験入隊で、なんか変わった?」
「変わったってか……分かったよな」
「なにが……?」
「それは……」
「自分は、まだまだダメだ。でも、自分が希望の持てる場所はここだ……かな?」
「先回りすんなよ、言う言葉が無くなっちまうじゃないか……」

 ゆりかもめの一群が川面をなでるように飛んでいった、忠クンはそれを目で追う。ゆりかもめは、少し上流までいくと、さっと集団で舞い上がり。それにつれて忠クンの顔は上を向き、遠く彼方を見つめる目……サマになってる。
 そんな彼を、まぶしそうに見るわたし。ますますサマになる。
 すかさずレフ板の位置が変わり、カメラが切り替わる。

 ちょっと説明がいるわね。

 これは、ちゃんとしたテレビの撮影なの。『春の足音』のね……って、別にわたしが主役になったわけじゃないのよ。
 プロディユーサーの白羽さんのアイデアで、毎回番組の最後に『素顔のキャストとスタッフ』というコーナーがあって、二分間、毎回一人ずつ紹介していくわけ。

 やり方は基本その人の自由。この荒川の下町が舞台だから、町の紹介をしてもいいし、他のキャストやスタッフさんとのト-クもOK。順番はジャンケンで決めるの。そのジャンケン風景も撮って流すんだから、この業界の人のやることにムダはありません。

 で、わたしが大久保流ジャンケン術で勝利し、その栄えある第一回に選ばれたってわけ。

 むろん、ただのエキストラなんで、あらかじめ、はるかちゃんが紹介してくれて、わたしが映っている何秒間かが流れて、このシーンになるのね。
 わたしは、無理を言って忠クンを引っぱり出した。
 忠クンの体験入隊は、忠クンの中ではまだ未整理になっている。わたしへの気持ちもね。だから、こうやをって引っぱり出してやれば、いやでも考えるだろうって、わたしの高等戦術。いちおうわたしの彼だから、しっかりしてもらいたいわけ。

 え……「いちおう」……それはね、乙女心よ乙女心。最終章まできて、のらりくらりしてるカレを持った、崖っぷちのオトメゴコロ!!

 分かんない人は、第一章から読み直してください。序章には忠クン出てこないから。
 でも、わたし的には序章から読んでほしいです。

 監督も、高校生の自衛隊の体験入隊がおもしろいらしく、A駐屯地まで行って取材もしてきた。教官ドノをはじめみなさん大張り切りだったみたいだけど、流れるのは、ほんの何十秒。それも大空さんがほとんど。テレビのクルーも絵になるものは心得ていらっしゃるようなのよね。

 で、ゆりかもめを見つめて、なんとかサマになった忠クンは、こう締めくくりました。

「大変なことを、自然にやってのける力……そういう心になれるまで……その、軽はずみな気持ちだけでフライングしちゃいけないんだなって、そう思った」
「ほんと?」
「うん。前さえ向いていたら……今はそれでいい」
「今度、火事になったら、また助けてくれる?」
「それは、もう勘弁してくれよ」
「それって、もう助けないってこと?」
「助けるよ。目の前で、それが起こったら……そういうことも含めて、まず目の前にあることを一つずつやっていこうって。あのゆりかもめだって、最初から、あんなに自由に飛べるわけじゃないだろう」
「……だよね」
「卵からかえって、餌をもらい、羽の筋肉が発育し、親を見ながら飛ぶことを覚えていくんだ」
「そうね……そうだよね。今の忠クン、かっこいいよ」
「ああ、きざったらしい。二度と言わないからな!」  

 しきりに頭をかく忠クン。そして、程よい距離で、まぶしく、そして小さく拍手するわたしをロングにし、荒川の全景に溶け込ませて、お、し、ま、い。

 ほんとのとこ、まだまだ食い足りない。でも、忠クンとしては進歩。番宣でもあるし、「はいオーケー」の声もかかっちゃうし。
「ほんと、かっこよかったっすか!?」と、ヤツは目尻下げちゃうし……。

 オトコって、ほんとまどろっこしい! 

 ゆりかもめに気持ち乗っけて、それで「きざったらっしい」なんて、安物の青春ドラマ。めちゃくちゃショ-モナイって思わない!?

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高校ライトノベル・宇宙戦艦三笠・42[宇宙戦艦グリンハーヘン・4]

2018-02-04 06:15:42 | 小説3

宇宙戦艦三笠・42
[宇宙戦艦グリンハーヘン・4]



「いったい、どんな仕掛けになってるのよ!?」

 前の壁が消えて、ミネアが怒りに震えて立っていた。
「仕掛けも何も、クルーは全員ここに居るし、三笠は大破したままだ」
「なにか隠している。三笠とあなたたちの情報は、全て取り込んだけど、こんな能力が隠されているなんて分からなかった。手荒なことはしたくなかったけど、もう容赦しないわよ!」

 ミネアが手を挙げると、残りの三方の壁が消えて、バトルスーツに身を包んだグリンハーヘンの兵たちが100人ほど現れた。

「情報が得られれば、それでいい。本当のことを言うまで、一人ずつ死んでもらうわ……まずは、アナライザーのクレアから。あなたは本当の人間じゃない。ボイジャー1号が義体化しただけ。最初の見せしめにはちょうどいい……」
 100人の戦闘員が一斉に光子銃をクレアに向けた。
「待て、クレアは人間と同じだ、オレたちの仲間だ、手を出すことは許さない」
 修一の抗議に、ミネアは冷笑をもって応えた。
「バカにしないで、人間の中でさえ序列があるのよ。機械に仲間意識が持てるわけがないじゃない。クレアを殺して!」

 その瞬間、三方の壁が現れて、100人の戦闘員たちは壁の向こう側になってしまった。

「え……何が、起こったの。壁を開いて!」
 ミネアの声に応える者はいなかった。そして、天井の一部が開いてタラップが降りてきた。
「こんな操作、あたしは命じていないわ。だれがやっているの、返事をしなさい!」

「冷静な話をしましょう……」

 そう言いながら、タラップを降りてきたのは、みかさんだった。
 タラップは垂直なので、降りてくるみかさんの、スカートの中がチラリと見える。修一とトシは条件反射で見てしまった。
――やっぱ、神さま。パンツは純白なんだ――
 無邪気な男性本能に、みかさんは微笑で答えた。

「誰よ、あなたは?」
「三笠の船霊です。みんなは親しみをこめて『みかさん』と呼んでくれるわ。
「そんな情報は無い……」
「それは、あなたたちに信仰がないから。グリンヘルドもシュトルハーヘンも、はるか昔に宗教の概念を捨ててしまったものね。無いものは理解できない」
「そんなことが……」
「三笠にやってきた人たちは無事よ。ミネアさん、あなたとの話が終わったら解放します」

 みかさんは、日ごろから神さまらしくではない微笑を絶やさない。

『微笑女』というダジャレが言いたくなるほどに人の心を和やかにしてくれる。しかし、この時のみかさんの微笑は、神さまらしく慈愛に満ちたものだった。

 ミネアは恐怖を、三笠のクル-たちは頼もしそうに、みかさんの次の言葉を待った。

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