大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・イレギュラーエッセー GO AHEAD! 003『とと姉ちゃんの初月給』

2016-06-02 09:37:40 | エッセー
イレギュラーエッセー GO AHEAD! 003
『とと姉ちゃんの初月給』
 



 とと姉ちゃんが初月給をもらった。

 昭和12年だから、あたりまえであるが手渡しだ。

 で、これに感動したので、いささかの駄文を書く。

 現役時代の前半の給料は手渡しだった。初任給は2号給の4号俸、手取りは14万ちょっと。それまでもらっていたバイト給料の倍近い厚みがあった。とても幸せな気持ちになったことを覚えている。
 給料は定型大型の茶封筒に入っていて、事務長のデスクの上に、全職員分が箱に収まっていたように記憶する。
「はい、大橋先生」
 顔を見ながら手渡しされ「ありがとうございます」とか「いただきます」とか「どうも」とか言って受け取り、朱々と朱肉を付けたハンコで受け取り表に捺印。人にもよるが、その場で金額を確認していた。

 年月を経るに従って、給料袋は分厚くなり、給料の重みが実感できた。

 箱の中に給料袋が並んでいるので、人の給料の多寡も、ザックリと分かってしまう。
 今の郵便料金で言うと、82円の厚みと92円の厚みのものがあり、82円のものでも、薄いものから厚いものまで色々である。
 また、受け取りの書類には職員全員の名前と給料の金額が書かれていて、捺印するときに、嫌でもお仲間の金額が目に入る。

 冬のボーナスの日に、所用が合って校長室に行ったことがあった。

「校長先生、ハンコお願いします」
 そう言って、事務長が黒塗りの盆に載せたボーナスを持ってきた。
「大橋センセも、帰りにお願いします」
 そう続けている間に、校長は受け取りにハンコを捺した。
 このとき、校長になんの話をしに行ったのかは忘れてしまったが、盆の上に載った校長のボーナス袋は忘れない。

 なんと、ボーナス袋の口が閉まらず、開きっぱなしの口からは岩波ジュニア新書ほどの札束が覗いていた。
 用事を終えて、事務所でもらったボーナス袋の中身は、テレビゲームのマニュアル程度の厚みしかなかった。

 これが振り込みになって、そっけなくなった。

 給料は通帳の数字でしか分からない。ときめきと言うか実感が乏しい。まして、お仲間の給料の多寡などは知る由もない。

 55歳で早期退職したので、退職金を最後に給料が振り込まれることは無くなった。
 しかし、習慣で給料日の17日に生活費を引き出しに行く。
 引き出す作業は、給料をもらっていたころと変わらない。同じキャッシュカードと通帳を機械に飲み込ませ暗証番号と金額を打ち込む。出てきたお金を備え付けの封筒に入れ、通帳とキャッシュカードを回収。

 通帳を見れば身銭が減っていくことは分かるのだけど、作業が現役のころと同じなので、給料袋時代の退職者と比べると、はるかに実感は薄いだろう。

 ほんの僅かだけれど、毎月息子に小遣いをくれてやる。
 銀行で引き出すときに(一部両替)のボタンを押す。すると1万円ぶんだけ千円札で出てくる。
 で、息子には千円札で小遣いを渡す。五千円札や万冊よりも分厚くなって、たくさん渡した感じになる。
「ほれ、今月分」
「どうも……」
 小遣いを渡すときの、息子との定型文のようなやりとり。

 わたしは、昭和原人なので、あっぱれ小遣いをやった気になる。

 息子がどう感じているかは……聞かないことにしている。

 ちなみに、とと姉ちゃんのモデルになった大橋鎭子さんとわたしは同じ苗字である。なんだか親類の子が初月給をもらったような気になった朝ではあった。 
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高校ライトノベル・小説大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・30『モノ言えば……秋の風』

2016-06-02 06:45:35 | ノベル2
大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・30
『モノ言えば……秋の風』


☆ご無沙汰いたしておりました

 先月の21日から、16日ぶりの公式ブログです。ちょっと校内でもめ事があって、事実上演劇部は休部状態でした。本当は公式ブログを書くことも差しさわりがあるのですが。わたしは憲法で保障された「表現の自由」で書いてます。校内事情を書くわけですから、月曜日には、なにがおこるか分かりません。それでも、あたしは書きます。

☆自衛隊への体験入隊

 これが問題になりました。基本的にはクラブ合宿の手続きで行きました。演劇部と、その顧問で行くんやから、クラブ合宿のカテゴリーしかないと思たからです。

 そやけど、ここで足をすくわれました。

 合宿は、一学期の7月末日までに顧問が合宿計画を校長に提出し、職員会議にあげられ、そこの承認を得た上で決定になります。しかし、これは校内の内規、あるいは慣例であって、基本は学校長の許可で専決事項になります。内規は、あたしら生徒には見られませんですけど、淀先生の言葉では明文化されてはいないそうです。淀先生も、その点をついて職員会議で説明してもらいました。せやけど多勢に無勢やったようです。むろん職員会議の中身は淀先生も言うてくれはりません。演劇部の無期限休部の結論から導き出したあたしの推論です。

 たとえ内規に明文化されてなくても、長年慣習化してきてるんで、内規同然。いや、慣習内規やいう理屈やと思てます。

 法律には、実定法と慣習法があります。商法なんかで慣習法が一部あります……むつかしいですね。日の丸と君が代が長い間慣習法でした。法律のどこにも日の丸=国旗、君が代=国歌とは書いてありませんでした。多くの国民にとっては、ごく当たり前のことやったんで、あえて法律にしてなかったんです。せやけど、これを楯にとって「法律にもなってないこと守る必要はない」いう理屈で、多くの先生が長い年月国旗・国家をないがしろにするタネになってました。そやから学校では長いこと日の丸と君が代については不毛な論戦がありました。賛成派の先生は「反動」とか呼ばれたらしいです。
 そやけど、あれだけ(消極的とはいえ)日の丸、君が代に反対してた先生らが、今は、当たり前みたいに起立して歌うてはります。「信念やったら、貫けや!」いうのがあたしの感想です。大阪では3人ほど卒業式で歌えへんかった先生がいてはったそうですけど、見上げたもんやと思います。せやけど、ほんまに歌いたくないんやったら卒業式休んだらええと思うんですけど、なんや、授業の前に、言われても起立礼せえへん生徒といっしょやと思うんですけど……話が横っちょいってしまいました。

 話題を戻します。

 合宿が慣習内規や言うて、それを守らへんかったことで、演劇部を休部処分にするのは、先生ら自己矛盾してないかいうことです。国旗・国家では実定法やない言うてサボタージュして、うちらの体験入隊を内規違反いうのは矛盾してます。
 これも推測ですけど、ほんまは自衛隊への体験入隊を問題にされたんやと思います。うちの先生の中にも「憲法をまともに読んだら、自衛隊は違憲や」いう骨董品みたいな先生がいてはります。集団的自衛権が閣議決定されたころには授業で演説めいたことも言うていかはりました。
 うちらは、いま集団的自衛権の行使に向けて運動中です。文化部の賛同署名は集めました。いま部員が手分けして運動部に働きかけてます。来週には文化部長から生徒会にあげてもろて、臨時生徒総会にもっていこと思てます。
 手の内ばらして「アホか」と思う人がいてるかもしれませんけど、これも作戦です。まず外堀から埋めよです。この公式ブログはゲリラブログです。これをもって、うちらのこと処分しよいうんやったら受けて立ちます。

 ここまで決心して、ブログに書くのに二週間かかりました。正直ビビってます。せやけど表現の自由を守るためにがんばります。

☆休部期間中の稽古

 部活が禁止されたんで、淀先生に迷惑かけんために完全に自粛してます。せやけど、部活は禁止されてますけど、スマホの使用が禁止されたわけではありません。部員同士でラインで稽古してます。スマホに台詞打ち込んで、台詞の稽古だけはしてます。喋る速度で打たならあかんので、部員は、みんな親指姫になった気持ちです。
 不思議なもんで、スマホでやってると変な現実感があります。案外練習法としては新発見かもしれません。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 
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