緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

グラナドス作曲「スペイン舞曲第2番」

2019-08-24 23:24:54 | ピアノ
ピアノ曲で好きな曲はたくさんあるが、スペインものでは先日紹介したフェデリコ・モンポウの他にエンリケ・グラナドスの「スペイン舞曲集」がある。
「スペイン舞曲集」の中で最も好きな曲は第2番「オリエンタル」だ。








(譜面はサラバート社編)

「オリエンタル」を初めて聴いたのが高校3年生のとき。
オリジナルのピアノ独奏ではなかった。
FMラジオから録音した、ジュリアン・ブリームとジョン・ウィリアムスの2重奏のライブ録音だった。
「オリエンタル」の原曲はハ短調であるが、彼らの編曲はロ短調だった。
ギターの2重奏はイ短調への編曲が殆どで、古くはプレスティとラゴヤが残した1960年代の録音が知られている。

とにかくこの「オリエンタル」という悲しい曲がすぐに好きになり、ブリームとジョンの録音を何度も聴く日々が続いた。
しかしこの時のジョンの音は素晴らしかった。
とくにLENTからの高音の単旋律の音は心に喰いこんでくる凄い音だった。
このブリームとジョンの「オリエンタル」の録音、何故かその後で発売されたCDやYoutubeでも探すことはできなかった。

高校3年生のとき、この曲をどうしても弾きたくなり、今は無き好楽社のカタログから、クエルバス=プホール編の2重奏(ニ短調の編曲)の輸入楽譜(ウニオン・ムシカル・エスパニョーラ)を見つけ買ったものの、最初の出だしの重音にハーモニックスを使用したかなり難しい編曲だったことや、ブリームとジョンの2重奏編ともかなりイメージが異なっていたこともあり、すぐに断念してしまった。







その後、大学1年生のときだったと思うが、全音ギターピースで大西慶邦編のギター独奏版(ホ短調への編曲)の楽譜を見つけ、早速弾いてみたが、これもとても難しい編曲だった。
(楽譜を探したが見つからなかった。実家に置いたままか?)

しかし大学2年生のから3年生に上がる春休みに、この曲をどうしても弾きたくなり、マンドリクラブの親しかったギターパートの4年生のために、おなじく親しかったギターパートの後輩と3人で、マンドリンクラブの卒業演奏会で演奏させてもらった。
先の大西慶邦編のギター独奏版をベースにイ短調へ移し替え、3重奏版にした。
(因みにイ短調にしたのは、ブリームとジョンの2重奏編がイ短調への編曲を2Fでカポタストを付けてロ短調で演奏しているのではないかと思ったため。あとでギター2重奏はイ短調への編曲が一般的になっていることを知った)
そして後輩の家(大学のある町からから3駅のところに住んでいた)で練習したのが思い出として蘇ってくる。
この4年生だったKさんは秋田県の鉱業メーカーに就職した。
卒業後手紙を一度いただいたがその後一度も会っていない。
今どうしているのだろう。
マンドリンオーケストラ曲の中で、レスピーギ作曲の「古代リュートのための舞曲とアリア第3組曲」を絶賛し、この曲を最高の曲だと評価していた先輩だった。
後輩のK君の方は昨年の母校マンドリンクラブ50周年記念演奏会の終了後、ロビーで30数年振りで再会した。
驚いたのは彼が学生時代と殆ど変わっていなかったことだ。
学生時代、彼は武道もやっていて、私もマンドリンクラブと並行して、そっち系の活動もしていたので、気が合った。
熟のアルバイトで貯めた金で、あの名車、トヨタAE86の新車を買って、ときどきその車に乗せてもらった。

原曲のピアノの録音を聴いたのは就職して間もない頃。
今は無き秋葉原の石丸電気で、アリシア・デ・ラローチャの1954年の録音CDを買って聴いたときだ。



その後、1982年、1994年の録音CDも聴いたが、1954年の録音はANDANTEの速度がかなり速い。
しかしLENTOの演奏は素晴らしい。
この悲痛なフレーズの、ピアノのタッチが心に食い入るように響いてくるのは1954年の録音の方だ。





シンプルだけど、だから故に悲しみをストレートに感じられる曲でもある。
この曲も優れた奏者でないと、この曲のもつ強い感情を感じ取れない。

アリシア・デ・ラローチャはスペインものの演奏家として知られ、ギター愛好家の多くに知られた存在であるが、彼女はスペインものだけが得意なわけではない。
そのことを最も端的に感じたのは、彼女のリスト作曲「ピアノソナタロ短調」の録音を聴いたときだった。
この時、彼女が恐るべき実力の持ち主であることを心底思い知らされた。

卒業演奏会でこの曲を一緒に弾いた先輩のKさんは今どうしているのだろう。
また先輩のKさんと後輩のKと一緒にこの曲を弾きたいな。
その時の編曲譜も捨てないでとってある。

Yutubeでこの曲を検索したら、ピアノ演奏よりもギター演奏の方が圧倒的に多かった。
しかしこの曲の真価はピアノ曲でしか味わえない。

アリシア・デ・ラローチャの1982年の録音と、グラナドス自演のピアノロールでの録音の2つを貼り付けさせてもらう。

Granados / Alicia de Larrocha: Dance No. 2 in D minor (Oriental), Twelve Spanish Dances


Granados plays Granados, Danza espanola no 2, Oriental
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2 コメント

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オリエンタル・・・。 (fado)
2019-09-06 22:07:49
緑陽さん、こんばんは。

今日、まとめて緑陽さんのブログを読ませていただいております。
『オリエンタル』私も、最初はジョンとブリームのレコードで聴きました。
ジョンは、フレタ、ブリームはロマニリョスを使用していたように思います。
後半、訴えかけるようなジョンの音に鳥肌が立ったものです。
若い時、この曲は、どうしてもソロで弾きたくて、阿部恭士さんの編曲で練習したのですが指が届かず諦めました。
5年ほど前、佐藤弘和さんの編曲を見つけ(これもかなり難しいものです)3年ほどギターを習っていたので、先生に『オリエンタル』を持って行ったのですが、『この曲をソロで弾く意味が分からない』と言われ涙を呑んだのですが、ある日、『fadoさん「オリエンタル」のソロの楽譜ある?』と言われ、何でもバレーとギターのコラボで弾くことになったようです。
それから、3ヶ月ほどで何とか完成させてその年の発表会(いろいろな)で、3度ほど弾きました。

先生に言わせると、今まで取り組んできた曲の中で一番難しいそうです。私の先生はドイツに8年ほど留学されていて、佐々木忠さんやロベルト・オーセルなどに習っていたり、クラシカルコンクールで優勝したり、札幌で一番のテクニシャンです。『シャコンヌなどかなりの難曲を簡単に弾いてしまいます』この先生が言うから、オリエンタルのソロはかなり難しいのでしょうね。

私は、毎日の練習の中にこの曲を必ず入れています。

オリエンタルに反応してしまいました。(笑い)

それではまた。
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Unknown (緑陽)
2019-09-07 13:16:25
fadoさん、こんにちは。コメント下さりありがとうございました。
スペイン舞曲第2番「オリエンタル」の演奏、私もジョンとブリームのライブ録音で聴きました。
楽器はジョンがフレタ、ブリームがロマニリョス、おっしゃるとおりです。
二人とも1970年代にこの楽器を長く愛用しましたね。彼らの最盛期の頃です。
オリエンタルの後半のジョンの音は素晴らしかったですね。心に食い入るような音でした。
この頃までのジョンの音は本当に素晴らしかった。
私もこの曲を弾きたくて、fadoさんの同じような過程をたどりました。
大西慶邦編→阿部恭士編→佐藤弘和と変遷しましたが難しく、レパートリーには至りませんでした。
ソロでこの曲を録音している方は極めて少ないですね。
Youtubeではホセ・ルイス・ゴンサレスの演奏が聴けます。
もともとピアノ曲ですが、ピアノ曲にしては音域が狭く、和声もシンプルなのでギターにたやすく編曲は出来たのでしょうが、実際に演奏となるとこれがまたとても難しいのですね。
fadoさんの先生が「この曲をソロで弾く意味が分からない」とおっしゃった意味が何となく分かるような気がします。
2重奏ではYoutubeにたくさん録音がありますが、自分としてはこの曲はソロの方が好きです。
(原曲がソロということもありますが)
fadoさんは、この曲を毎日の練習に取り入れているのですね。
難しいけど好きな曲を毎日の練習に取り入れる。並大抵のことではないですね。凄いことだと思います。
私もモンポウの「歌と踊り第13番」をそのようにやってみようと思います。
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