緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

ギター弦 ハナバッハ(黄)を試す

2016-06-04 22:28:06 | ギター
今弾いている古い国産ギター(1972年製)の12F上の弦高は、6弦で4.5mm、1弦で3.5mmである。
今のギターの殆どは、6弦4.0mm以下、1弦3.0mm以下である。
これはタッチがアル・アイレ中心の軽いタッチとなり、弦高が低くても弦がビリつかなくなったからであろう。
しかし1970年代のギターはかなり弦高が高い。
ホセ・ラミレスⅢ世に至っては、6弦5.5mm、1弦3.5mmである。
昔はタッチの強い弾き方が主流だったため、その要求に応えるために弦高を高くセットしていたのであろう。

冒頭の古い国産ギターは弦の張力も強い楽器なので、弦高が高いと左手の押さえはかなりきつい。
ミスタッチや音のビリつきが発生しやすい。
これまで弦はオーガスチンの赤かプロ・アルテのノーマルを張ってきたが、楽器そのものの張力が強めなので、弦の張力が標準でも押さえは厳しい。年齢とともに筋力は少しづつ衰えていくものだ。

では弦高を下げて弾きやすくすればいいのではないか、という選択もある。
しかし、サドルを削って弦高を低くすると、楽器にもよるが、音が変わってしまうことが多い。
私は先のホセ・ラミレスⅢ世で、低いサドルを自作して交換したことがあるが、音が顕著に変わってしまったので、元に戻したことがある。
ラミレスは意外に弦の張力は強い。
古いラミレスの中古品などで弦の張力が弱くて弾きやすくしているものを見かけることがあるが、大抵サドルを限界まで削っている。しかし肝心の音は、甘いが平面的で張りに欠けている。
それ故に、サドルを削って弾きやすくするという選択は、最後の手段にした方がよいと思う。

では弦高の高いギターを弾きやすくするにはどうしたらよいか、と考えて試してみたのが、張力の弱い弦を張ってみることであった。
クラシック・ギター弦で最も張力の低い弦は、私の知る限りではハナバッハの黄ラベル(スーパー・ローテンション)である。
この弦は、以前、ドメニコーニが絶賛しているのを現代ギター誌の記事で知っていたので、張力が弱くても、弦の鳴りは劣らないのではないか、という期待をこめて、今回試してみることにしたのである。

アマゾンで検索すると、オーガスチンやプロアルテよりもはるかに高額であったが、 ハナバッハの黄ラベルが見つかり早速注文した。
今日それが届き、楽器に張ってみる。
こういう張力の弱い弦は、往々にして弦の伸びが無く、力や輝きが弱い、というイメージがある。
ヤマハの安い弦がそうであったからだ。

しかし今回試してみた ハナバッハの黄ラベルは想像以上の結果であった。
まず音の強さ、輝きはオーガスチンの赤ラベルよりもいいように感じた。これは意外。
また音の伸びは低音は全く問題なく、高音もオーガスチンの赤ラベルに比べてみても殆ど遜色はない。
張力が低い(37.1kg)ので、押絃は若干楽になった。

あとは劣化する速度がどのくらいかだ。
すぐに音が劣化してしまうのであれば、値段が高い分、買い続けることはなかなかできない。
最終評価はしばらく後になりそうだが、張り替えたばっかりの時は想像以上の感触を得ることができた。

ハナバッハの弦を初めて張ったのは、大学生の時。今から30数年前。
青ラベル(ハイテンション)であった。
その時の印象は、ナイロン弦は今のようにクリスタルではなく、白濁した色。
音色はカサカサしており、軽く、腰もない弦であった。1回張っただけでその後使うことは無かった。
10年ほど前に、黒ラベル(ノーマルテンション)と緑ラベル(ローテンション)を試したことがあったが、値段の割にはこれといっていい感触は得られなかった。
しかしこの黄ラベルはいい。

ビニール袋に入れずに、紙の袋1枚に入ったままなので、在庫の回転の速いショップから買わないと、買った時にはすでに劣化していることもあるかもしれない。



【20160606追記】

Tommy様

コメント欄に記載しました、シンプルチップの写真を掲載しました。
注意点として、チップから弦が外れないようにしっかりと固定する必要があります。
私は、1弦を3回、2弦を2回、4弦を2回巻き付けて固定しています。


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Unknown (Tommy)
2016-06-06 15:13:00
早速現在使用中のギターを測定してみました。

緑陽さんの国産ギターと同じで12F上の弦高は、6弦で4.5mm、1弦で3.5mmでした。

最近左手が弦をかたく感じるので講師に相談したら
オーガスチンの黒がいい音がすると勧めてくれまし
たがどんなものでしょう。

因みに現在は製作者に勧められたSAVAREZの
Cantigaを使用しています。

因みに現在現在はSavarezのCantiga

Unknown (緑陽)
2016-06-06 22:06:28
Tommyさん、こんにちは。いつもコメントありがとうございます。
Tommyさんの楽器の弦高は、私の楽器と同じ6弦で4.5mm、1弦で3.5mmだったのですね。
弦高は12F上で、フレットの頂点から弦の真下までの距離となりますが、その距離で上記のサイズですと少し高いように感じます。
しかし、楽器の張力、ネックの反りの有無、ネックの厚み、指板の形状等によっても弾きやすさは左右されますので、弦高だけで弾きにくさを断定できないと思います。
サドルの高さに十分な余裕があれば少し削って、6弦で4.0mm、1弦で3.0mmまで下げるとかなり弾きやすくなると思いますが、音が変わってしまう(音の張りが失われる)こともありますから、その場合はどちらかを優先するか考える必要があります。
サドルを下げて、もし音の張りが失われてしまったら、弦止めのチップを活用する手段があります。
サドルの弦の接点と弦穴との角度が高くなるため、弦の張りを増すことができます。
(私はヤフオクで購入した、象牙製のシンプルチップというものを使っています。記事に写真を載せておきますので、参照いただけると幸いです。)

オーガスチンの黒は張力は弱いのですが、1~3弦のナイロン弦の音程の精度がよくありません。
元々ナイロン弦の元祖であり、私も昔は随分使いましたが、あまりいい記憶がありません。
張力が弱くて、品質のいい弦となると、今回試したハナバッハの黄色か、セシリアの緑色が思いつきますが、最近弦の銘柄を試す機会がないので何ともいえません。

高音弦と低音弦を別の種類の弦にして試してみるのもいいかもしれません。

今から十数年前に色々な銘柄を試したことがあります。
その結果、アラフェスのクラッシクシルバーが最も自分に合う弦だとわかりましたが、その後弦の価格が高騰し、現在は、プロアルテ・ノーマルかオーガスティン赤の最安値のものを探してまとめ買いしています。
Unknown (通りすがり)
2019-02-09 19:31:03
こんばんは。
ハナバッハの張力を調べていてこちらに行きつきました。
アウラギターサロンというサイトでは、黄色、緑、黒の高音弦が同じ張力だと掲載されているのですがどうも違うような気がします。
こちらのサイトに掲載されている写真のハナバッハ黄のパッケージが写っている後ろに、色んな弦の張力が掲載されている本が見えまして、緑陽さんならご存知かと思い質問させていただきました。
お忙しいところ申し訳ありませんが、お答えいただけるとありがたいです。
Unknown (緑陽)
2019-02-10 07:39:13
通りすがりさん、こんにちは。コメント下さりありがとうございました。
ハナバッハの黄、緑、黒の高音弦が同じ張力だとのこと、現在のオーガスティンも青、赤、黒全て同じ高音弦だそうですね。
1年ほど前に、ある楽器店の店主に聞いたことがあります。
オーガスティンの高音弦は現在、端に青や赤の染色はされていませんが、昔はされていました。
店主がいうには昔は区別されていたとのことです。
しかし現代ギターのバックナンバーで調べてみたところ、張力は黒、赤、青の順に高いデータではありませんでした。バラツキがあります。
青の方が赤よりも張力が低いものもありましたね。
昔から黒はピッチが不正確で悪評がありました。
もしかすると、同一のナイロン弦を検査の過程で、楕円率等の精度の違いによりランク付けし、色分けしていたのかもしれません。
現在はリーガルが出ていますが、紫色に着色されています。
これは明らかに他の製品との差別化を図っています。
黒、赤、青の弦とは別の工程で製作されているか、同一行程で製作されていても、最終検査で精度の高いものを選別し、それをリーガルとしているのかもしれません。
ハナバッハのデータを探すことができませんでしたが、この弦もナイロン弦は同一の可能性があります。
黄、緑、黒、青、その他のブランド毎に製造工程を持つことは莫大なコストがかかりますし、クラシックギター弦の需要の大きさを考えると、スタンダード弦の工程は同一の可能性が高いと言えます。
出来上がりの精度の良し悪しで製品の値段に見合う選別をしているのかもしれません。
Unknown (通りすがり)
2019-02-10 10:02:38
おはようございます。
緑陽さん、早速の回答ありがとうございます。
確かにオーガスチンの黒、赤、青の弦は高音弦は全部同じらしいですね。
しかし、同じ弦であれば何故色別に高音弦がバラ売りされているのだろうと思ってしまいますが、緑陽さんの仰る通り、同じ弦ではあるが、ある程度選別して振り分けていると考えれば納得できますね。
ハナバッハもそうなのかもしれませんね。
丁寧な回答ありがとうございました。

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