ガキ低国@美しき野獣

『単騎、千里を走る』を観る予定が時間に遅れてしまったので、たまたま時間が合った『美しき野獣』を鑑賞。

韓国映画に対するおれのイメージ(偏見)は、ポン・ジュノキム・ギドクという二つの巨塔がどーんとそびえ立っていて、その周りにそこそこの塔がそれなりにあって、あとは雑草がぼーぼー氾濫している、て感じ。
巨塔の新作は何があっても絶対に観たいが、他はほぼどうでもいい
世評高いパク・チャヌクもおれには全然おもしろくない。
ポンさんキムさんがあまりにズバ抜けているのだ。
あとこれは自慢だけど、おれは岩手に住んでたとき映画祭でまだそんなに有名でなかったときのポン・ジュノと会った・・・って言っても舞台挨拶に立ち会っただけだが、それでもちょっと自慢だ(このときポンさんは「ボクの映画はなんだか分からないとよく言われますが、観てもらえれば楽しんでもらえるように作っているつもりです」と実に謙虚で知的な感じだった)。
でもそのとき上映された『ほえる犬は噛まない』(傑作)は観なかった(後でDVDで観た)。
ゴメンネ、ポン師。

で『美しき野獣』だが、これが衝撃的だった。
この映画が韓国映画の中でどの程度のポジションにあるのかはさっぱり分からないが、信じられないほどの駄目映画だったのだ。
まさかこれほどとは・・・ひどすぎる。
ヒッチコックの下手真似オンパレードというのはよくあるが、これは本当にひどい。
テクニックが何一つ効果を発揮していない。
ただ引用してるだけ。
画面は感情を説明するためのクローズアップがほぼ全編を占める。
まるでテレビの手抜き2時間ドラマのようだ。
いや、そんなことだけでここまで腐したりしない。
この映画の中でおもしろかったのは「ヤクザが政界を乗っ取る」という表裏逆転の設定だけで、あとは全部ダメなのだ。
『最終兵器彼女』よりもはるかにダメ(映画技術という意味では)。
なんとまあびっくり。
韓国映画にはこういう超級の駄作がいっぱいあるのだろうか?
日本に来ているのはごく限られた出来のよいものだけなのだろうか?
映画祭に来ていた韓国の映画人たちは口を揃えて
「今の韓国映画は層が薄い。ブームが去ったら必ず危機がくる。
その点日本映画は多様で層が厚く、うらやましい。
小さな作品も、たとえ小規模でもビジネスとして成立できている。
韓国では本当に一握りの大作しかヒットできない」
と嘆いていたが、それはこういうことだったのだろうか。
おれは、ちょっと韓国と韓国映画が心配になった。

具体的に何がダメかと言うと、(本当は何もかもなんだが決定的なのは)登場人物が全員ガキなこと。
みんなガキ。まともな大人がひとりもいない。
この映画には、社会的地位を得た人間は確かに登場する。
しかし、その全員がバカで愚か者なのだ。
ちっちぇー人間しかいない。
要するに、「この国はダメになっていまいました」というあの状態。
唯一ちょっとだけまともなのがユ・ジテなんだけど、それでもこの事態に対処できるほどの人物ではない。
いや、そんな状況を俯瞰で映し出そうとするならまだ分かる。
しかしこの映画の視点は、そういうアホガキどもに感情移入してしまっている。
それもおそらく意図的に。
はあ?である。
バカで愚かな人間に対して「可哀想に、気持ちは分かるよ、そうだよなあ、そうなるしかないもんなあ」とくる。
何考えてんだ?
バカにはバカって言えよ!
少なくとも映画の中ではそうしろよ!
「世の中がどうなろうと知ったこっちゃない。今必要なのは、みんなの気持ちを分かってあげることなんだ」
この映画が訴えるのはそういうことだぞ。
もしかして、この映画にけっこう感動しちゃったりする人いるの?
だとしたら相当にヤバイ。
末期症状である。
絶望である。
「もしこの映画が評価されるようであれば」という仮定の上で、だが。

しかし悪役として登場するヤクザのボスすら弱っちぃというのはどうなのか?
このボスキャラは完全に無能人間である。
推定戦闘力5。
「ふっ、ゴミめ・・・」というヤツだ。
予測可能なことには素早く対応できるが、予想外のことが起こるとすぐ焦る
気に入らないやつがいたらすぐ感情的になって殺す、消す。
狂気ゆえにじゃなく、ただ「ムカツクから」とか普通にダメな大人の論理で行動する。
そんなザコをラスボスにした映画の何がおもしろいのか。
おれには本気で分からない。

業務報告
●この映画を観た後なら、『プライドと偏見』や『オリバー・ツイスト』に大感動する自信がある。
●本文内でも書いたヤクザの弱ボスが誰かに似てるなあと思ったら、なんと松岡修造だった。
すごい、ある意味すごい。
しかもその側近が舞の海
なんというか・・・深刻な学芸会のようだ。
●ユ・ジテってけっこう好きな俳優なんだけどなあ、感情皆無型で。
西島秀俊とかピーター・サースガードと同じタイプ。
その俳優の役が「無表情だが実は情にもろい」というのはどうも・・・。
それって決まりきった教訓の説明だろ?
何がおもしろいの?
おれなら、「無表情に見えて、しかも本当に冷酷無比」なんて感じの役をやらせたい。
見たまんま主義だからな、おれは。
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