にわか日ハムファンのブログ記念館

2004年8月から2014年6月にかけて更新してきた当ブログを静態保存しております。

ポスト合併を生きる:10年を経た6月13日に寄せて

2014-06-13 07:09:23 | 2004年を絶対忘れない・球界再編抵抗記
 2004年6月13日、日経新聞に大阪近鉄とブルーウェーブの合併が報じられてから10年が経ちました。この数日、当時についての関係者のインタビューを大手紙が掲載しています。

■ プロ野球:近鉄との球団合併から10年 オリックス宮内オーナーに聞く(毎日・2014年6月10日)

 会員登録が必要な記事もあるので、それらを紹介するのは忍びないのですが、タダで読めるし少なくとも私自身はそれだけの価値を認める連載ですので、あえて掲げたいと思います。

■ (球界再編10年)プロ野球の価値、最強ですよね 堀江貴文さんインタビュー(朝日・2014年6月11日、要会員登録)

■ (球界再編10年)パの隆盛、近鉄とファン犠牲に 佐野正幸さんインタビュー(朝日・2014年6月12日、要会員登録)

■ 梨田元近鉄監督が語る球界再編「セ・パ、シャッフルも」(朝日・2014年6月13日)

 合併の一報に端を発した、当時「球界再編問題」と呼ばれた問題は、私のネットでの言論、さらには当ブログ開設の引き金となった出来事です。ゆえに、本来ならきちんとした論考を書くべきところです。
 ただ、極めて無念なことに、その余裕が目下私にはない。こんなところにも10年という時の流れを痛感します。
 ですので、ここでは思いついたいくつかのサブテーマに基づいて、断片的な文章を寄せ集めることでお茶を濁させていただくとします。

1. 「経営者の論理」の敗北と勝利

 朝日の12日付の記事冒頭にあるように、球団合併は「経営者の論理」で進められました。大阪近鉄、ブルーウェーブという2つの球団をいったん残したうえで、新たな解決を目指そうとするファンの論理は敗北しました。
 合併を進めた「経営者の論理」は、宮内のインタビューで展開された通りなのでしょう。
 そこで述べられている内容が客観的事実に忠実なのか、それを裏切り、虚偽に基づいたものなのかはあえて問いませんが、宮内が押し通したい「主観的真実」であることには疑いはないものと思います。
 ただ、この男の弁解に反応し過ぎると、大きな論点を見落とす恐れがあります。簡単に言えば、「経営者の論理」とはこの程度のものなのか、もっと別なものはないのか、ということです。
 もう少し詳しく言えば、球団合併を進めたもう1つの当事者である近鉄の「経営者の論理」とは何か、そして、彼ら以外の「経営者の論理」というものはないのか、この2つのポイントが重要になるのです。
 このうち、近鉄の「論理」を、当事者が直接述べた1次的な記事は、私が見る限りありません。それを追うことをメディアが思いつかなかったのか、当時の近鉄の経営者がそれを拒んだのかは分かりません。
 ただ、佐野正幸さんのインタビューから、その一部を窺うことは可能です。彼が一言でいみじくも示したように、近鉄は「あやめ池遊園地をなくし、近鉄劇場をなくし、いわゆる遊びの部分を切り捨て」たのです。
 加えて、これらに先立って、近鉄は手持ちの鉄道路線すら整理を始めている。バブルの後始末(それだけではないでしょうが)に必死になった末の、リストラの嵐です。
 収益につながらない部門を切り捨てるのは、ビジネスの発想としてはありうべきことで、時に必要ですらある。それは私が述べるまでもない「経営者の論理」です。だから、「経営者の論理」自体が問題なのではない。
 致命的なのは、切り捨てたその後をどうするかという次の展開についての発想が貧しかった、絶望的に貧しかったことです。
 「身売り」ではなく、安易ではあるが顧客たり得る一般の人々に受けが悪い球団合併を選んだのも、その貧しさ故のものと言えるでしょう。
 そして、その貧しさは何を生み出したのか。これも佐野さんでインタビューで語る通りです。「あべのハルカスを建てましたけど、東京では騒がれていませんよね。近鉄はいまや関西だけの会社なんですよ」
 近鉄の経営陣は、彼らにとって不要な部門の切り捨てには成功したのでしょう。いや、相次ぐ鉄道の減便、一部路線の分離など、その後も引き続き「結果」を生みつつある。
 ですが、その後の事業展開において、彼らは切り捨てたものに代わって何を生み出したのか?
 神戸への乗り入れは彼ら自身の手柄ではないですし、「しまかぜ」も悪くはないですが、鉄道ファン以外を巻き込む全国区の話題かというと疑問符が付きます。
 結局のところ、10年を経て、彼らは縮小再生産を続けたに過ぎない。球団を手放した後の近鉄には、その本質において変化を見出すことができない。だとすれば、彼らの「論理」は敗れたと言わざるを得ません。
 そして、ここで先に提示したもう1つのポイントが出てきます。別の「経営者の論理」はないのかということです。
 「ビジネスとして成り立つ」ために、コストを切り捨てる。支出が減れば収支は改善する。分かりやすい理屈です。
 しかしながら、この理屈には重大な欠点があります。なるほどコストは減るとして、その一方で「どう稼ぐか」という内容が決定的に欠落しているのです。
 いや、本来ビジネスは「稼ぐ」ことを目指すものでしょう。支出を減らすだけならビジネスである必要はない。家計でも非営利の組織でも、どこだって考えることです。
 むしろ、ビジネスに携わる主体、「経営者」が真っ先に考えるべきことは、「どう稼ぐか」あるいは「どう稼ぎを増やすか」なのです。そして、そのために必要なロジックこそが、本来の「経営者の論理」なはずです。
 ただ、今更それを批判しても始まらない。むしろ、はるかに大事なことは、ビジネスにおいて本来考えるべき収入源の拡大という動きがこの10年で実際に見られるようになった点です。
 パのほとんどの球団が先行する地域密着への取り組み、パシフィックリーグマーケティング社の設立や、パ・リーグTVなどの事業展開は、その好例と言えるでしょう。
 一方のセ球団も、新球場でのシートの多種類化や膨大かつ迅速なグッズ(特にTシャツ)展開を続ける広島に加え、新規参入したDeNAが企画チケットの多様化等で話題作りに努めている例が見られます。
 そのような中、オリックス球団はどれだけの存在感を見せているでしょうか?「ビジネスとして成り立たせる」成功例を示すことができたと言うことは、はたして可能でしょうか?
 彼らが何もしていないとは言いませんし、客観的な指標が示せない以上、判断を留保すべき部分はあるでしょう。
 ですが、私が見る限り、コストカット以外の何物をも持たない「経営者の論理」は、収益機会を少しでも増やそうとするもう1つの「経営者の論理」に敗北した感があります。それは健全なことでしょう。
 何より、野球チームとして見た場合、彼らに与えられるべき言葉は、とある書物に記された1つだけです。「楽天にひきかえオリックスは」。
 もっとも、この辺りを考えると深刻な不安が生まれる。ほかならぬ北海道日本ハム球団に対してです。
 主力選手を放出し、若手主体と言えば聞こえはいいが、知名度も能力も未熟な選手層に、慣れない守備位置など過剰な負担をかけ続ける。
 軸となる投手は育たず、堅守というかつてのチームのセールスポイントは忘れられ、失策数はリーグワーストレベル。
 それで総年俸は抑えられるのでしょうが、はたしてチームの魅力はどこにあるのか。一般の人々にアピールできるファイターズの特長とは何なのか。大谷?中田?陽?そりゃ結構ですが、「チーム」の魅力はなんなのか。
 よしやそれらが見つからなかったとしたら、そんなチームを好き好んでみる人が、これからどうやって増えるのか。いや、減らないで済むものか?
 あと半年で退くブロガーが、今更多くを語るのもどうかとは思いますが、ただ、このチームがブルーウェーブの轍にはまりかけている、とだけは述べておきましょう。

2. 「不都合な真実」?

 ここまで近鉄とオリックスという2つの企業に批判的な内容を書いてきました。特に、オリックスについては、球団であれ親会社であれ、論理的に理解することも、感情的に受容することも、永遠にないだろうとは思います。
 ただ、それをすべて踏まえた上で、1つ気の重い、考えずに済むなら済ませたい、でもそうもいかないであろう疑問があります。

 「宮内亡き後、オリックス球団はどうなるのか?」

 宮内自身は私にとってはその名をかたるもおぞましい仇敵です。その存在や、彼が支配するオリックスという企業の名を見聞きせずに済む日が1日も早く来てほしいと心から願っています。
 ですが、その一方で消せない疑問があるのです。
 彼が消え去った後、球団はどうなるのか?オリックスの中で球団を持ち続けようとする者はどれほどいるのか?もしいなかった、あるいはいたとして、その意見が容れられなかったとしたら、どうなるのか?
 気になるのは、宮内がオリックスグループの多くの役職を退きながら、球団オーナーの地位は保持したという点です。これが彼の球団への固執なのか、あるいは他に引き受ける人物がいなかったのか。
 ふと思い出すのは、合併前の話になりますが、チームの低迷に際して「僕はサラリーマンだから」とのたまった球団社長がいたこと。歳月は流れましたが、当時と今とで、親会社から送られる人物の意識は変わったのか。
 オリックスという企業に対しては、親玉ともども、少なくとも野球界からは消え去ってほしいという感情を持っています。それは、1日でも早いに越したことはありません。
 ですが、いざ彼らが手を引くとして、球団を無傷で残していくだろうか。この点には、大きな不安を持たざるを得ません。
 合併球団とて球団です。野球チームです。その出自はどうあれ、簡単に無くなっていいものではない。これ以上潰される球団があっていいなどという話はないのです。
 だからこそ、忌まわしい災厄の権化の消滅を願いながら、同時にそれが消えることへの懸念を抱かざるを得ない。この矛盾に引き裂かれそうな思いです。

3. 「されどまたゲームは始まる」

 多くのファンや選手・関係者を傷つけた球団合併から10年目。この歳月は、ある程度の癒しを与えたでしょうが、解決はもたらしませんでした。
 いや、解決が実現することは、この先も恐らくないのでしょう。大阪近鉄とブルーウェーブが戻ってこない限りは。
 それゆえに、あの年からファンが、私が、負い続けているものは、このまま彼らが、私が人生を終えるまで、追い続けなければならない。
 それらは、2つの球団を消滅から救えなかった傷、怒り、悲しみ、あるいは罪と罰としての断裂と不理解、不寛容……
 ただ、です。
 それでも、人生は続く。同じように野球も続く。またゲームも始まります。
 あの年に生まれた、ありとあらゆる負の感情と刻印を、消し得ないものとして抱えながら、それでもまだ野球場に向かう人々がいる。テレビ、ラジオ、PCやスマホタブレットの画面に向かう人々がいる。
 このエントリを「ポスト合併を生きる」としたのも、取りかえしのつかない過去を振り返るだけではなくて、それがあってもなお、野球ファンとして生きてきた人々がいることをも思い起こしたかったからです。
 今日も、明日も、いつまでなのかは分からないけれど、野球と、それを観る人生は、とりあえずは存在する。
 過去のどうしようもない重みを引きずりながら、それでもまた「われわれ」は、良い面も悪い面も含めて変わってしまった「ポスト合併」の野球を観ていく。
 そこに何がしかの価値を見出そうとすることは、野球のある日々、あるいはそんな将来に価値を見出すことに他ならない。それこそを大事にしたいという思いはあります。

 今日も野球はあります。

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6 コメント

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Unknown (M・K)
2014-06-14 13:25:56
毎日新聞の紙面では、宮内氏のインタビュー当日から、
スポーツ欄で当時の経営者たちの思惑を振り返っています。

そこで大きく動いていたのが、ロッテの重光オーナーと西武の堤オーナーでした。
「やっぱり、貴方たちだったのですか」という感があります。

合併球団が「1つだけ」できたことで、オリックスの宮内氏が象徴のように語られますが、
実際には、重光オーナーも堤総帥もそこに含まれて、
そしてマリーンズファンもライオンズファンも失うものが出てくる。
そんな結末(現実)を迎えてもおかしくなかったのだと。

思うに、宮内氏というのは、ダン野村のような存在かもしれません。
二人が関わっている内容は全く方向性の違うものですが、
言うことは正論だけれども、様々な理由で絶対に受け入れられない存在。

T-岡田のトレード報道に激怒したという話もあるだけに、
野球好きというのだけは間違いないんだと思います。

>楽天に比べてオリックスは
(ネタ的な要素をも多分に含んでいるとは思いますが)この言葉が、会社に向けられるのであればいいのですが、
本気で選手に向ける人が出てこないことが願いです。

もちろん、野球を観る上で選手の実力を比較して出てくるのは、この限りではありません。
M・Kさん (ルパート・ジョーンズ)
2014-06-15 05:30:40
当時「もう1つの合併」の当事者とされたダイエーが踏ん張っていなかったらと思うと、
今もぞっとします。
それだけに、ざまぁという思いもありますが。

宮内の発言には、成程正論も含まれているのでしょうが、
所詮は「盗人にも一分の理」で終わりなんですよね。
行動が行動である以上、言葉自体を信用できたとしても、
人間として信頼することが絶対にできない。
最後に黒字になったら云々という話がありますが、
これだってブレーブス以来の球団に思い入れがあったら言えるはずがないですし。
つまるところ、彼は野球そのものが好きなようでいて、本人もそのつもりなんでしょうが、
野球チームを支配していることが好きなだけではないか、そう私は見ています。

>>楽天に比べてオリックスは
これ、元ネタは檻ファンが他球団ファンに言われたって話なんで、
余計に具合が悪いような(苦笑)
京セラドームのサービスを始め、現場はようやく変わってきた気配もあるんですが、
上層部はどうなんでしょうねぇ……
Unknown (ろじぞう)
2014-06-15 06:58:54
合併の時はまだ野球に興味を持っていませんでした。
合併のゴタゴタでパリーグの他の球団が地域密着などのファンサービスに力を入れ始めたのかもしれないと思いました。
しかし、今の若手がメイン、人気で主力の選手を簡単に手放すハムにはやはり不安があります。
自分より若い選手ばかりで、同じくらいの年齢の選手がいないのはなんとなく寂しいです。
Unknown (M・K)
2014-06-16 00:14:08
>宮内氏
性質の悪いパトロンのようなものですね。

全くの余談ですが、合併を画策していた筆頭の堤オーナーがいなくなった途端に
ライオンズ球団フロントの能力そのものが落ちてしまったことは、何とも皮肉です。(苦渋)

この人の場合、本業で不始末をやらかしたので、そう考えると、やむを得ないと言うか、
必然の流れだったとは思いますが……。
ろじぞうさん (ルパート・ジョーンズ)
2014-06-16 05:29:14
合併問題がその後の球団経営を変えた面は確かにあります。
少なくとも、パ6球団に関してはかなり積極的な事業展開に打って出るようになりましたし。
ただ、やはり年月が経つと、その辺の努力も目新しさを失ってきますし、
新たなファンを獲得し、またつなぎとめるために次の一手が必要な時期ではあります。
それが何なのか、思いつかないのですが……

そんな時期なだけに、ファイターズには不安を感じています。
地域密着型の営業は結構ですが、肝心の売り物であるチームについて、
能力や魅力を高めることにつながる努力をどれだけしているか、
大いに疑問を持たざるを得ません。
ファンも「北海道」を名乗るだけで満足するはずがないわけで、
観客動員が落ちてきているのも、その表れではないでしょうか。
M・Kさん (ルパート・ジョーンズ)
2014-06-16 05:46:58
実際、これほど性質の悪いパトロンはいないと思いますよ。
絶望的なのは、自分に反省すべき点があるという発想が微塵も感じられないところです。
だからこそ事業でのし上がっていくことができたのかも知れませんが。

今のライオンズも、イベント等は積極的なんでしょうが、
戦力編成としては、かつてほど成功しているとは言いがたい状況のようで。
ふと思うのは、堤氏が健在で伊原監督が指揮を執っていたら、
今季はの展開は違っていたかも知れないなぁと。
少なくとも、管理野球を受け入れられないチームにはなってなかったような気がします。

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