S&R shudo's life

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真冬の狂想曲22-6

2007-10-04 17:16:31 | 真冬の狂想曲
 平井は事の成り行きを松から聞き終えると、全身の力が抜けたようになっていた。安堵感から来るものか、脱力感から来るものか分からないが、ちょっと前とは明らかに顔色が変わっていた。しかし、暫くすると堰を切ったようにまくし立てた。
「松崎さんの下で働くのは一向に構いませんが、中村のヤツと一緒に働くのは絶対に嫌です!私一人に全て被せて逃げようとしたヤツですよ、この件が片付いたからと言って、仲良く肩組んではやっていけません!絶対に許せません…」
「分かっとるよ平井。中村の事は俺もちゃんと考えとるから、お前は何も心配せんでいい。何も考えんで俺のために働け。悪いようにはせんから」
 松の話を聞き終えると、平井は俺を睨んだ。ただ見ただけかも知れないが、俺には睨んでいるように感じた。俺は平井の襟首を掴み、身体を壁に叩きつけ思いきり持ち上げた。平井は足をバタつかせたが、逃れようもなく平井の身体は壁伝いにせり上がっていた。
「平井よー、お前と松の話は決まったかも知れんけど、俺とお前の立場はなんら変わらんのど、ちーっと態度考えんか!おう!」
 平井の顔からみるみる血の気が引いていった。松は平井を持ち上げている俺の肩を叩き、
「もういいやろ、やっちゃん。コイツもよく分かっとるよ。のう平井」
 平井は血の気のない顔で首を縦に振っている。俺は手の力を緩めて平井を床に落とした。水槽から出された金魚みたいに口をパクパクさせている。俺は平井の足元に唾を吐き捨て、ベッドに腰を下ろした。

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