マンハッタンでもビクトリアパークでもなく・・・時代は高雄だ！！

　この美しい夜景、いったいどこだと思われますか？ニューヨークのマンハッタンでも香港のビクトリアパークでもありません。ここは、台湾が世界に誇る港町、南部の大都市・高雄です。台湾といえば首都・台北を連想する方も多いと思いますが、今、台湾中で最も熱い場所と言えば、高雄をおいて他にないでしょう！
　高雄は台湾第二の都市とは言え、これまでは、台北と比べるとどうも、「カッコよさ」ではイマイチ劣る「のんびりした地方都市」、なんとな～く垢抜けない、「イケてない」イメージが付きまとっていました。

　確かに、高雄は、国際都市・台北に比べるとどうしても土臭い。気温が高すぎるせいなのかバイクに乗るためなのか、街を行きかう若者も、ハイセンスとは言い難い地元ルックが目立つ。外国人、特に西洋人を見かけると、みんな目を丸くして凝視。昨年、新交通システム・MRTが高雄に初めて通った時など、自動券売機の使い方や改札の通り方が分からない人が溢れて大パニックになった。

　ところが。「高雄なんてダサ～い」と思っていた若者の「間違った」認識が、ちかごろ覆されつつあるようなんです。

　そのきっかけは、この4月から6月にかけて、国営テレビ・公共電視台で放送された刑事ドラマ「痞子英雄・ブラック＆ホワイト」。台湾版「花より男子」となる「流星花園」や、台湾版「白い巨塔」などを手がけ、台湾ドラマ界のトップを走り続けてきた蔡岳勳・監督が「台湾ドラマ史上最高の作品を目指す」と宣言したこのドラマは、あらゆる意味でこれまでの台湾ドラマと大きく違っていました。
　まず、ロケのほとんどは高雄市内で行われたという事。ドラマ自体は、「海港城」という架空の都市を舞台にしているんですが、高雄のシンボル・85階ビルや、高雄きっての高級ホテル、美しい高雄港などが次々登場し、高雄MRT構内では迫力満点の銃撃戦、市街地では切ないラブストーリーが繰り広げられました。制作費用は、なんと台湾元8,700万元と、台湾ドラマ史上かつてない規模。台湾のドラマ界はなかなか製作費用に恵まれる環境になく、セットや撮影技術、効果音など、どうもあれこれ物足りない・・・と思う事も少なくないのですが、これだけの制作費を当てただけあって、一話一話がまるで映画なみの迫力。キャストも、日本でも人気の台湾のトップアイドルグループ「F4」のメンバー・周瑜民（ヴィック・チョウ）と、大型二世新人の趙又廷（マーク）を主演男優に据えたのをはじめ、大御所や実力派がずらり。ストーリーも、長期間かけてゆっくり話を進めるドラマが多い台湾では見たことがないほどの息をつかせぬ展開で、放送開始直後から大評判を巻き起こしました。

　これまでは、トレンディードラマの舞台と言えば決まって台北、それ以外の場所となると、中国大陸の上海だったり、という具合で、高雄なんていう選択肢はあり得ませんでした。実際、このドラマでは高雄があまりにカッコよく撮られすぎていたため一回見たくらいでは分からず、一部で「上海かしら？香港かしら？」という議論が交わされたほど。

　実は、このドラマ、高雄市政府新聞局の強い意向で、市政府をあげて全面的に撮影に協力しています。7月16日から高雄で始まる、非オリンピック種目の世界大会「ワールドゲームズ」の宣伝と、高雄市そのものの広報がその目的でしたが、新しいスタイルの広報として、期待以上の効果を上げたと言っていいでしょう。
　最終回が放送された6月27日には、高雄市内の大型ショッピングセンターの広場に大型スクリーンが設けられ、駆けつけた監督やキャストたち、そして陳菊・高雄市長ら政府関係者が、台湾各地から集まった大勢のファンと一緒に、最終回を見届けました。

　今、この「痞子英雄・ブラック＆ホワイト」を見た多くの人が、「高雄って意外とカッコいいじゃん」と思い始めています。これまでは、何となく台北に対して気後れ気味だった高雄の若者たちも、「高雄の魅力を台湾中に見せる事ができた」と大喜び。
　日本での放送の話も持ち上がっていて、製作会社は今、放映権などについて日本のいくつかのテレビ局と具体的な交渉に入っています。日本のみなさんが、高雄の魅力を堪能できる日も、そう遠くないかもしれません。時代は高雄だ！！ （華）

最終回のスクリーン放送に集まったスタッフとキャストたち。前列右端が蔡岳勳・監督

主演男優の一人、大型新人の趙又廷（マーク）と、主演女優の一人、陳意涵（アイビー）。日本での人気沸騰間違いなし？