子供のときから自転車が「マイカー」だった日本人の私には信じられなかったが、台湾では自転車に乗る人が極めて少なかった。とにかく車道はスクーターと自動車がわがもの顔で走り回っていて自転車は危ないのだ。加えて台湾は歩道の整備が今ひとつ進んでいない。自転車が普及しないのも仕方ないのかと思っていたら、健康志向やエコ、ローハスやガソリンの値上がり、それに映画の影響などでここ数年、一気に自転車ブームが起きた。折りたたみ式の小さくて便利な自転車、そして本格的なウェアを着込んだ人が駆るロードレーサーなどがあちこちで見られる。
すると行政もそうした人たちを無視できなくなったのか、川沿いのサイクリング道路や駐輪場、自転車に関する交通法規の整備などに取り組み始めた。そしてついに、台北市にある大通り、敦化北路と敦化南路に「自行車専用道」(自転車専用レーン)を作ってしまったのだ。(上の写真が敦化北路の自転車専用レーン。緑色だ)
(歩道に作られた駐輪エリア)
敦化北路と敦化南路は南北に走る一本の道。北側半分を北路、南側半分を南路と呼ぶと考えてもらっていい。敦化北路と敦化南路と言えば、北は国内線空港の台北松山空港から金融街、多目的体育館の台北アリーナ、南はショッピングエリアの「東区」、24時間営業の書店「誠品書店」、一流ホテルのファーイースタンプラザホテルなどを経て基隆路までをつなぐ、街路樹豊かな美しい通り。昔は国際線が飛んでいた松山空港から外国の国家元首を迎え入れる道路だったのだ。自転車専用レーンは正確には松山空港からではなく、敦化北路と民権東路の交差点から敦化南路と基隆路の交差点まで、全長4.7キロメートル。ここの一番外側、歩道に近いところ1.2~2メートルが自転車専用になったのだ。
自転車専用レーンは二種類。一つは全くの自転車専用。色は「緑色」。もう一つは自転車専用でありながら「歩行者優先」として「赤色」になっている。幅は緑色のところは1.2メートルのところと2メートルのところがありまちまち。赤色のところは1.2メートル。ちなみに台湾は右側通行。バスも右側の歩道にあるバス停に停まる。この「赤色」のところはバス停エリアなのだ。つまり、自転車で緑色のところをスイスイ走っていると、時々幅が狭まるとともに赤色に変わってバス停に出くわすというわけだ。そこではあくまでバスに乗り降りする「歩行者」を優先させる。
(「行人優先」・・・歩行者優先の自転車専用レーンは赤色)
(「當心行人」・・・「歩行者に注意!」で緑から赤に切り換わる)
(台湾のバスは歩道につけてくれないことが多い。ここでも赤いレーンの外に停まって乗り降りさせている)
敦化北路と敦化南路は二本の分離帯で分けられた中央の上下各二車線と、分離帯の外側の各二車線の大通り。全部で八車線で、右から数えて、北向き二車線、分離帯、北向きと南向き各二車線、分離帯、南向き二車線という並び方だ。この一番外側に自転車専用車線を作ったわけで渋滞が心配。台北市政府では、「もともと二車線のさらに外側にあった臨時停車エリアを利用しているので大丈夫」としているが、自動車やスクーターの走れる面積が減るのは歴然。自動車の駐車もかなり難しくなる。敦化北路の自転車専用レーンの使用は先月下旬に始まり、南路では今月末にスタートする。自転車族にとっては福音だが、マイカー族やスクーター族の反応やいかに?
また、台湾では自動車を購入するのに車庫証明は必要ない。このため台北では路上駐車が実に多い。自転車専用車線は路上駐車のスペースを減らす。接触事故や渋滞の心配の他、自動車や二輪車の総数も含めた全面的な考慮はされているのか、すこし気になるところである。(U)
(「臨停区」・・・臨時停車エリア、タクシー用みたい)
(「貨車装卸専用区」・・・積み下ろし専用エリア、お店の前とか)
(「家長接送区」・・・保護者送り迎えエリア、学校の前です)
(かまわず自動車を停める人もいるよね・・・)
(敦化南路では完成を急ぐ。緑色の仕上げ材を塗る作業員)
(側溝にマンホール、これって危なくない?)
映画の影響とありますが、どんな映画だったのでしょうか。
日本と異なり、台湾の場合、自動車やスクーターが頻繁に車線変更するなど動きが読めない部分があるので自転車で走ると危なく感じます。かなり神経を使います。2007年4月に公開された『練習曲』という映画は大学生が台湾本島を自転車で一周するロードムービーです。地方の景色や人情、社会問題などに触れ、好評でした。2006年11月には『単車上路』という作品もあり、蘇花公路が舞台となりました。