あいおらいと

主に、お友達への連絡用でたまに、日々を綴ったり…していたはずが、いつのまにやら作品置き場になりつつあります。

一日遅れましたが。

2013-07-08 23:47:53 | もうそうはきだし中
打ち終えたところで力尽き、アップするのをあやうく忘れそうになった七夕のお話です。
それでは、どうぞ。



新暦の七夕は大抵の場合梅雨と重なってしまう。だから。
(今年も雨、か…。)
どんよりとした空を眺めながら優子はため息をついた。空からは織姫の涙のような雨がぽろりぽろりと落ちてくる。
折角のデートだというのに、運悪く休日出勤になってしまったという研一から少し遅れると連絡があった。逢えないわけじゃないけれど、逢える時間が短くなるのは寂しい。時間つぶしに近くのカフェに入ってみたものの、一人はどこか味気ない。特にやることもなく、ただ空を眺めて彼を待ちわびていると、ついつい空の乙女に自分を重ねてしまいたくなる。雨だから、彼に逢えないのではないか、と。
一年に一度の逢瀬の日に会えないのは寂しすぎると言う優子に、雨でかささぎの橋が流された時は、お月様の船に乗って会いに行くのだと研一は教えてくれた。橋が流されても逢う方法があるのだと知って、その時は嬉しく思った。なのに、今度は折角のデートのに晴れないのが解せないなんて。人はどうしてこうも自分勝手な生き物なのだろう。故に、牽牛織女は罰を受けだのだが。
自分の役割を疎かにするのは良くない。けれど、恋をしてる女子としては、好きな人と片時も離れたくないという気持ちはわかる。もう二人も十分反省したはずだから、天の神様はそろそろ二人を許してくれてもいいんじゃないかしら?
そんなことをつらつらと考えていると、ぱたぱたと慌ただしい足音が聞こえ、程なくして優子のそばでぴたりと止まった。
「ごめん!」
頭を下げる研一に、気にしてないよと言って優子は着座を促す。やることをやらなければ、天の神様は怒って二人を引き放してしまうだろう。だから、逢う前にやるべきことを終わらせてくるのは間違ってはいない。逢う時間が減るのは寂しいけれど。
「お疲れさま。」
優子がねぎらいの言葉をかけるれば、研一は破顔する。それだけで先ほどまでのもやもやが吹き飛ぶのだから、好きな人の笑顔は偉大だ。
狂ってしまった予定をどう立て直すかを相談し終えてカフェを出ると、雨は上がっていた。
「優子さん。」
促されて窓の外を見ると、雲の切れ間からにうっすらと虹が見えた。
「渡れるかしら?」
「渡れるよ、きっと。」
言い切って研一は手を差し出す。そっと優子は手を重ねる。そして、二人は虹に向かって歩き始めた。
コメント
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