魯生のパクパク

占いという もう一つの眼

無言の真

2015年10月10日 | 日記・エッセイ・コラム

VWの不正と、トヨタのブレーキ問題の比較は、どちらも国民性が表れているようで面白い。

トヨタの場合は、意図的ではなかったが、曖昧さや反応の悪さが災いし、誤解が広がり、名誉挽回に時間が掛かった。言い訳はせずに、ひたすら誠意を見せようとした。

VWの場合は、何から何まで合理的だ。目的を持って不正をし、しかも、不正にまで高い技術を駆使した。不正の指摘に対しても、トコトン抵抗し、バレたら、素早く徹底的に謝り、一部の社員のせいにしようとしている。

この態度の違いは、いわゆる「歴史問題」に対する態度と、全く同じだ。
日本は、悪意ではなかったことを解ってもらいたいため、言い訳はしないが、曖昧な謝り方をして、実質的な誠意で理解してもらおうと時間をかけた。
これが今日、中韓の理解できないところで、同時に、付けいる隙となった。

ドイツは、徹底的なことをやりながら、完全に破綻したとたん、一部のドイツ人=ナチスのせいにして、大々的に謝って見せた。

日本人としては、日本の方が、ドイツより誠実だと思う。
しかし、世界は日本人が考える以上に単純だ。目に見えるところで判断する。ドイツの方がよほど世界原理なのだ。

が、だからと言って、世界は、複雑なことが理解できないと思ったら大間違いだ。むしろ、現実の複雑な裏を知るから、目に見える表面を単純化して、互いに付き合っている。
日本人は、この世界原理に対し、自分たちの内輪の一貫性、つまり、均質な価値観と思考方法からしか、世界を理解しようとしない。「誠意」に言葉は要らないと信じている。
だから、責められれば責められるほど、沈黙しようとする。

誠実さを見せるには、言葉は邪魔になると考るのは、心と現実は同一化できると信じ、最終的には、誰もが一つの現実を理解するようになると信じているからだ。
「真心は通じる」と

狭い日本ではそれも可能だったが、広い世界は、互いに知らない者同士だ。心や本音を解ってもらい、同化することなど不可能だと考えている。
だから、共存のためには、「嘘でもいいから」表面だけでも合意、一致したことにする。日本人がそれを理解できないのは、日本はそれだけ極楽だったということだろう。

日本人の沈黙
ところで、このたび、忍者に関係のある県が連携して、地域興しをするそうだ。
海外で忍者が人気するのは、日本の神秘性を感じさせるからだが、本来、秘められたものを表面化させて扱えば、それはもう神秘ではない。こういう扱いは忍者の価値を落とすことになる。いわゆるディスることになる。

忍者は、本来、「ニンジャ」ではなく、「しのびのもの」だ。「ニンジャ」は漢語だが、和語なら「しのび」のもので、忍者の神秘性はそれでこそ高まる。

「しのび」の「し」は、「シーッ!」「シーン」と言う時の、「し」に通じる。
「しずか」「しめやか」「しのぶ」「しぬ」「しる」「しみじみ」「しじま」「しみる」「しま」・・・など、
音はしないが、確かに存在していることを表す言葉であり、
もしかすると、「しし」や「しか」なども密やかなことに関係しているかも知れない。

音を立てない、実在や実力は、「男は黙って」のように、日本人の感性であり、真(まこと)のあるものに音は要らない。音や言葉は不実であると信じる日本人の価値観は、現代の国際社会では直ちには評価されないが、そう信じている日本人の姿が、徐々に、世界に認められつつある。忍者もその一つだ。

地球が狭くなり、世界全体が島国日本のようになってきているからだ。嘘をついても結局はバレるという認識が、情報の世界共有化で広まりつつある。
昔なら、旅の恥はかき捨て、所変われば品変わるの常識や、大盗賊が英雄になる物語が通用した。しかし、もはや、そんな時代ではない。嘘はいずれバレる。
VWの巧妙な嘘は莫大な対価を払うことになり、未だに情報統制を試みるような国もやがて破綻するだろう。

日本の役割
近頃、言った者勝ちの世界原理に苦しんだ日本人の中には、「黙っていては馬鹿にされる、認めたことになる」と、積極的に発言しなければと考える人が増えている。
そして、負けてはいられないから、世界方式に倣おうと、単純に日本の「沈黙」の逆をやれば良いと考え、どこかの国のように、積極的に噛みつき、抗議する局面が増えた。

しかし、それは、よけいに世界に誤解されることになる。本当の世界原理を理解もせず、口数だけ増やして騒ぎたてるだけでは、せっかくの日本の叡智、美徳を失い、むしろ、強請国家以上に、情けない国に成り下がってしまう。

世界が徐々に、沈黙の誠意を理解し始め、雄弁は銀から、沈黙は金に変わりつつあることを良く理解し、日本は、本来の日本の「誠意」を磨き直し、率先して、誠意を実践していく時ではなかろうか。


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