魯生のパクパク

占いという もう一つの眼

保護政策

2015年08月26日 | 日記・エッセイ・コラム

タイで、ワシントン条約で禁止されたアフリカ象の象牙取引を取り締まるため、決意表明と見せしめに、押収した象牙を粉砕していた。アメリカの方法を見習ったらしい。

象牙を欲しがるのは中華文明の影響を受けた国で、中国は言うに及ばず、日本もその一つだ。印相では象牙が最高とされ、今も売られている。取引禁止後もそれ以前に買い込んだ象牙のストックがあるので、注文を受けられるのだそうだ。
また、最近では象牙不足のため、シベリアの凍土から出てくるマンモスの象牙を使用するという話も聞いた。
また、象牙に替えて、水牛の角も印相では珍重される。

角や骨や象牙を、道具にしたり装飾品の材料にする文化は、毛皮と同じように最も原始的で、印鑑文化も歴史は相当古く、当時、手近な材料として、用いられたのはごく自然のことだっただろう。
今日のように、人工の素材が次々と生まれる時代でも、「古来」の方法は、人々の神秘の記憶を刺激して、人気する。

印相では、石は生気がないと嫌われるが、御璽には金印や石印が使われるのだから、素材流通の事情からこじつけられたのが、本当のところだろう。つまり、商売だ。
印鑑文化そのものが、現代社会に不都合になっているわけで、こんなものは早く無くした方がいい。

とはいえ、伝統的原始文化からそのまま現代文明に参加した中国人が、金持ちになって、真っ先に欲しがるものは、珊瑚や象牙であることはどうしようもない事実だ。
手段を選ばぬ中国人が欲しがる、投機対象の象牙を粉砕してしまえば、さらに希少価値が高まり、密猟はますます増える。それでは、密猟で殺された象が浮かばれない。

今後の密猟を押さえる意味でも、麻薬とは違い、むしろ逆に、取り押さえた象牙を高値で中国に売りつけ、それで得たお金で、アフリカ象の保護資金に充てるべきではないだろうか。
中国に象牙が出回れば希少価値は下がるし、密猟対策や象の保護繁殖によって、アフリカ象が守られ、本来の目的に役立つはずだ
そうしてこそ、死んだ象たちも浮かばれるのではなかろうか。

ワシントン条約の名の下、関わる人々の自己顕示、自己満足のために、本当の意味の合理的保護が忘れられているのではないかと、気になった。