魯生のパクパク

占いという もう一つの眼

チュー獲りアル

2009年12月31日 | 日記・エッセイ・コラム

近頃、町屋ブームで、古い町の屋敷を改装して商売やイベントに使うことが全国的に流行っている。
町屋の住人が減少しているところに、若い風が入って、新しいコミュニティーが復活したりして、なかなか結構なことだと思う。

しかし、そうは言っても、全部が新しい人たちが住んでいるわけではない。古い人たちが住んでいるから、新しい人も「参加」できる。

古い家に古い人たち。家が古くなっても、資金、体力、人手がないから、そう簡単には改装できない。どうしようもない所だけ修理しながら暮らしている。

昔から続く古い家には、ほんの4、50年前に使っていた竈(かまど)や風呂がそのまま残っている家も少なくない。
取り除くと大工事になるから、そのまま、流しが台所に進化していたりする。

毎日使うところでさえそうなのだから、他の部屋はまったくそのままで、天井裏にはドロがたまって堆積層になり、年代測定ができる。

冬になると、天井裏にはネズミが入り込んでくる
町屋に嫁に来て数十年。子供達も出て行き、亭主も先立ち、一人暮らしをしている人から聞いた。

冬場になると、ネズミが、我が物顔で生活をし始める。
天井裏でドタドタと走り回るのは序の口で、食べ物を隠していると、観葉植物をかじっている。
明け方、どこかで「ガリガリガリガリ」すさまじい音がしていたかと思うと、となりの部屋の天井にポッカリと穴を開けているではないか。
その穴に金網を貼り付けると、今度は別の部屋の壁に穴を開けている。

夜中、怪しい雰囲気に、ハッと目覚めると、枕元を大きなネズミが悠々と歩いていく。「ギャーッ!」
もう、たまったもんじゃない。

近頃の新築住宅やマンションでは、ネズミも簡単に入り込めないし、食品も冷蔵庫などで守られているから、こういう経験をする人は減っていると思うが、わずか半世紀前までは、誰でも経験している常識だった。
オッパイを付けた赤ちゃんが鼻をかじられた事件も少なくなかったから、虫除け、ネズミ除けとして、赤ちゃんに被せるネットがあったし、「頭の黒いネズミに引かれる」と言えば浮気されることだった。

ネズミと対決してみると分かることだが、意外に頭が良い。
ネズミ取りを仕掛けても、そう簡単には捕まらない。
トムとジェリーでもネコのトムは常にネズミのジェリーにやられている。人間の実感が込められているような気がする。

疫病を媒介したり電線をかじったり、放ってはおけないヤツなのだが、顔を見ると、可愛らしくて憎めない。
天井裏に入り込んでくる客にはイタチもいて、天井裏で、ネズミと激しい死闘が始まることもある。
イタチも、ネズミに劣らずワルサをするのだが、ネズミの天敵でもあり、大目に見たくなる。

それに、ネズミよりさらに可愛い。
ネズミよりはるかにスピードがあるが、なにかの拍子に顔が合うと、
「何?」と言った表情で、しばらくこちらを見ていたりする。
それも、逃げ腰状態で、見返りだから、なおさら可愛い。

いくら可愛いと言っても、ネズミが枕元を歩いていたら、寝られなくなる。これを話してくれた人も、恐怖で寝られなくなり、
ようやく寝たかと思ったら、
ネズミの怪獣に襲われる夢を見たそうだ。

興奮で、顔を真っ赤にしながら話してくれた。