原題: Kahaani
監督: スジョイ・ゴーシュ
出演: ビディヤ・バラン 、パラムブラト・チャテルジー 、ナワーズッディーン・シッディーキー
鑑賞劇場: ユーロスペース
2年前、地下鉄で毒ガスによる無差別テロが発生したコルカタに、失踪した夫アルナブを探すためロンドンから単身訪れたヴィディヤ。夫は1カ月前に仕事でコルカタに着任して以来、音信不通になっていた。地元警察の協力も得てアルナブを探すヴィディアだが、宿泊先にも勤務先にも形跡はなく、途方に暮れる。やがて夫と瓜二つのミラン・ダムジという危険人物の存在が浮かび上がり、国家情報局のエージェントも動き出すが……。(映画.comより)
ダンスなしのインド映画が最近は公開されるようになって何より。『めぐり逢わせのお弁当』『マダム・イン・ニューヨーク』もよかったけどこれもいい。
ダンスだらけのインド映画はおよそリアリティに欠ける上に、とにかく長すぎちゃって途中で出たくなっちゃうんで、ダンスなしインド映画の公開は歓迎すべき流れです。
ダンスや音楽はないけどストーリーがしっかりとある。無差別殺人事件、警察の非情、組織の保守を尻目に夫を探す妊婦は突き進む。「ただひたすら夫を探す身重の妻」、これを疑う人は誰もいないであろうという先入観をうまく利用していて、そこがクライマックスで見事に使われている。これについては個人的にはネタバレ厳禁だと思うので黙ってるけど、誰も考えもしない設定からのあの転換はさすがでした。
内容的には結構てんこ盛りに近くて、インドらしい祭祀や文化、服飾、そしてIT産業まで入れちゃって大丈夫??とも思うんだけど、これがどうしてピッタリとはまっちゃった。盛りすぎて収集つかなくなるパターンのインド映画も多いだけに、心配してましたがよかった。折り込むことを想定したキャラクター設定だし、IT分野もこの話だとかなり重要なポイントになってくるので、それをちょうどよく登場させているのはポイント高い。
最近のインド映画、女性の活躍やヒロインものも多くて、それも客層をしっかる掴んでるんだけど、ともすると女性の視点一辺倒になりがちなだけに懸念もしてました。しかしながら、これを観てやっと、ストーリーテリングで見せつつもきちんとインド色を混ぜてくる作品が登場してきたなと感じる。このくらいのインド色でちょうどいいんだろうし、そもそも話がちゃんとしてこそ良い映画だと思うし。
インド色満載の本作だけど、その中にちゃんとサスペンスとしての要素を成立させ、ラストの展開も想定外なうえにきっちり筋を通してきている。決して「インドらしさ」だけに逃げてない。よく注意して観てないとわかりづらいが、邦題の「女神」の説明に関しても話と密接に関連があるし、単に無駄に出してきていない。女性の生き方を訴える物が主流となりつつあるインド映画なので本作もそうだけど、かといいながらそこだけに終始もしていない。女性ならではの一心不乱さ、その一心不乱故に周りが見えなくなる習性を前半~中盤に出すが、しかしながらラストは全く異なる女の面を見せているところも秀逸。女は何通りにも化けられることを地で行った本作、様々な女性の表情を見ることができると共に、相対する男たちは昔から変わらず功績重視、そのためには女を踏み台にする愚かさも炙り出されている。男たちの愚かさを尻目に、女たちは淡々としたたかに生き、そして喜び華やぐ。インド映画のこれからの奥深さを予感させる1本。
★★★★ 4/5点
これはほんと、ネタバレいけませんよねー。
観た人だけがわかる面白さでした。
どんでん返し好きですよ。
驚いて感心して。
文字通りの大どんでん返しはやっぱりネタバレ厳禁ですよね。
でも、単にダンスだけのインド映画から脱却しようとしてる姿勢はとっても好きです。
いい感じなんじゃないでしょうかね。
女性のいくつもの面を見せつつ、最後にヒンドゥーの女神が重なって、そこに目をつけているのはいかにもroseさんらしい。
そこは大したもんです。
こういうインド映画がもっとできればいいと思います。