Nice One!! @goo

観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

【フランス映画祭2012】『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう / 足立正生』(2011) / フランス

2012-06-24 | 洋画(は行)


監督: フィリップ・グランドリュー
出演: 足立正生、小野沢稔彦

フランス映画祭2012『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう / 足立正生』のページはこちら。 (2012年夏、アップリンクにて公開)


足立正生 wiki


本作は足立正生という人物にどれだけ傾倒できるかで思い入れが変化してくるだろう。
ただひたすらに目の前のものを撮るという姿勢で映画に臨むフィリップ・グランドリュー監督の方針の元、4日間の撮影期間で作られた本作。 そこにはあるがままに振る舞う足立氏の姿があった。
氏は過去を語り、現在ではひっそりと生き、時に映画監督としても主張する。 単に氏の近況紹介のようなスタンスでもなく、かと言って回顧録だけでもない。 ましてや肩肘張って1人の人間に傾倒している作品でもない。 
時折出現する、浮遊したような風景の挿入や、場面が大きく転換された次のシーンが前のものとは全く関係ないようにも見えていることも、観客が本作との距離の取り方を一瞬測りかねる原因になっているのかもしれない。






トークショーで監督は「映画作家のドキュメンタリーを作りたい。政治的にも美的にも断絶している人。その第一号は足立監督でないといけない。しかし資金的に厳しかったことが本作の方向を決めるきっかけとなった」と語った。
予算が許さない中で対象の周辺を撮影し、そこから足立氏自身の実像を見出だす作業は厳しかったと想像もするが、出来上がった作品を見る限りでは切羽詰まったものは感じない。 むしろ氏はリラックスしており、逆に余裕すら伺える映像となっている。
ブランコのシーン、ここは他の場面と異なってかなり幻想的なイメージを与えているが、監督によるとこれも偶然の産物だそうである。 事前に細かく計算しながら撮影をしない主義の監督にとって、氏が身内との交流をしながらくつろいでいる瞬間こそが、まさにその時必要としていたものなのであろう。


タイトルの「美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう」とは、劇中の足立氏が過去を回顧する中で、彼の半生における決定的瞬間に感じたことそのものを示唆している。
「自分の前にいるのは他者である。私自身が他者の感覚や情動に共感する中で、その他者と私との関係を捉えていく。」という監督のポリシーのもと、4日間足立氏に密着して、過ぎゆく一瞬の中に感じ取った氏の美学を映し出した本作、果たして観る者はどのように感じ取るのだろう。 感じ取り方そのものが個人の美学として問われる作品とも言えよう。


★★★ 3/5点






最新の画像もっと見る

post a comment