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『汚れた心』 (2011) / ブラジル

2012-06-11 | 洋画(か行)


原題:  CORACOES SUJOS/DIRTY HEARTS
監督: ヴィセンテ・アモリン
出演: 伊原剛志 、常盤貴子 、菅田俊 、余貴美子 、エドゥアルド・モスコヴィス 、大島葉子 、奥田瑛二
試写会場: シネマート六本木

公式サイトはこちら。 (2012年7月21日公開)


Twitter経由、キタコレさんからのご招待で行って来ました。 いつもありがとうございます。





監督は『善き人』(未見)のヴィセンテ・アモリン。
ですが本作は昨年のモントリオール映画祭に出品されていますし、起用している俳優も日本人の第一線で活躍する錚々たるメンバー。 
この顔触れで日本で大きく話題になっていないのは何故? と思ったのですが、理由はその内容にあるのかもしれません。
ブラジル公開が8月17日、日本公開が7月21日ということで日本の方が公開が早いのですが、終戦記念日より前に公開日を設定したようですね。

"Corações Sujos" のコラム(ポルトガル語)


第2次大戦後、外地にいた日本人には敗戦の事実がスムーズに伝わらず、混乱を招いた事件というのがいくつかあったようで、
このブラジル移民の場合、戦後長きに渡り移民内での対立に発展しました。 いわゆる「日本が負けるはずはない」と信じる「勝ち組」と、日本敗戦の事実を正確に知って受け止めた「負け組」です。

日系ブラジル人wiki ( 3.10「勝ち組」と「負け組」の抗争を参照)


終戦当時、戦局についての情報を日本から正確に入手することは極めて困難であり、従って日本の敗戦を正確に知る者、知らされても信じない者、それぞれの思惑が交差して移民内で派閥を作っても、それを正す組織すらなかった無法状態が、本作の背景としてありました。
戦争末期、あるいは終戦直後、これに似た状況は、例えば旧満州国内や樺太、沖縄などでも見られたのかもしれない。 本土にいればこれ以上争わなくて済むという最低限の命の保証はあるが、もし外地にいたら、昔のことなので情報が正確に伝わることは難しく、逆に情報操作が行われ、味方同士でもイデオロギーの違う者同士が覇権(外地にいる日本人の、狭いコミュニティの中で主導権握って一体どうするんだろうとも思うんだけど)を巡って争い合う事態に巻き込まれる可能性は十分にあった。


本作はその無駄な争いによって何人もの人々が人生を狂わされた話である。
皆が生き残るためには何が必要なのか。 たったそれだけのことに対してのアプローチがあり過ぎるために無用な対立が起こる。それさえなければ異国で、しかも非常時の中で、手を取り合って暮らせたのに、共同体は全て引き裂かれてしまった。
真実は「敗戦」なのに、それを断固として認めさせないという本質は何なのだろうか。 精神論で日本絶対勝利を信じていることの方が優位に立っていると思わせるように扇動するやり方が、真実を次第に駆逐していく過程には戦慄を覚える。 そうして何人もの人が葬り去られてしまった史実があることを、こうして映画として知らしめる行動も貴重である。
ここに出てくる人物たちはあくまでも一例にすぎず、実際にはもっと悪どい手口で命を奪ったり騙したりがあったに違いない。 それでも真実が伝わらない世界では、絶対に善とされていることに異論を唱えることが何と難しいことなのか。 大和魂を持たない者、異を唱える者は全てが「國賊」として問答無用に処刑された事実は繰り返してはならないし、イデオロギーに振り回される人間の愚かさとともに後世に伝える必要がある。


しかしながら、もしもこのような状況に自分が置かれたならば、果たしてどのように身を処しただろうとも考える。 今ではなく約70年前のブラジル、しかも母国ではない。 情報も皆無。 暮らしは貧しく、手にしているものも大してなく、信じられるのは祖国への想いと、家族への愛しかない。 こんな状況でどうやって生き伸びるのか。 生きるためには大勢に流されないといけないかもしれないし、あるいは対抗しなければいけないのかもしれない。 
リーダーシップを取っている人間が誤っていると自分の中で確信があった時、それを糾弾したがために抹殺されることは珍しくない。何もそれは戦時中だけではなく、今の日本にも起こっている。命を取らなくても社会的に抹殺されることもしょっちゅうある。しかしそうしたいと思う一方で家族のために我慢したりなかったことにする人の方が圧倒的に多いのではないだろうか。
そのために意に沿わぬことをせざるを得なかったとするならば、それもまた不幸としか言いようがない。
ちなみにこのタイトルは「よごれた」ではなく「けがれた」と読ませている。 一体何を持って、誰の心を汚れた心と言えるのだろうか。 「國賊だからあの人間は汚れている」と一方的に非難し断罪する側の心の方が、実は汚れていたのではなかったのか。
人を裁いて謀り、あるいは疑心暗鬼の中で倒れ、白い心を赤い血で染めなければならなかったたくさんの方々に改めて哀悼を表したい。


Associate Producerの1人に、出演者である奥田さんが名を連ねており、何らかの思い入れがあって製作に関わられたのでしょう。
そして日本ではなくブラジル製作というところに、この問題を語るにあたっての困難さも伺える。
精神論に走ることの怖さ、そしてそれに引きずられた不幸、巻き込まれた不幸、どちらも伝えるために取られた方法なのでしょうか。 
ここに集結した俳優陣も実力派揃い。 伊原さん、奥田さんの狂気、菅田さんや余さんの正義感と無念。そして常盤さんの劇中一貫した無言の演技が哀しみを増していく。魂を込めて作ったことがひしひしと伝わってくる作品でした。


★★★★ 4/5点




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8 Comments

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Unknown (みえこ)
2012-06-29 20:47:55
常盤貴子さん久しぶりのような気がします。
以前はよくテレビドラマでお見かけしましたが。
いい女優さんになっていらっしゃるのでしょうね。
みえこさん (rose_chocolat)
2012-06-29 21:57:22
常盤貴子さんももうデビューして20年くらい経ちますよね。
今回はセリフが少ない役でした。 表情だけで心境を演じたのはさすがです。
日本 (クラフトくん)
2012-07-02 23:01:34
戦争というのは政治主導でするもので国民はただのコマ。
悲しい事なんですが、気が付かないだけで今も同じです。
原発再稼働問題でデモが4万人以上なのに
最近になってやっとチラッとメディアで報道。

1ヶ月以上前から都心でデモはあったのですが
報道されていないという情報の規制が恐ろしい。

日本が敗戦した事も伝わらない世の中だったんですよ。
俳優陣はベテラン勢ですね。
残す映画としては良いのではないでしょうか。
craftworkさん (rose_chocolat)
2012-07-02 23:52:36
問題の本質を報じないという点では今も全く同じですね。本質に目を向けさせまいとする力が強すぎて嫌になる。
最もあの頃とは情報の入手先が格段に広がっているので、遮断されることはまずないはずだけど、遮断するとしたら自分の意識でしょう。

俳優勢は実力派揃いです。知られざる史実として多くの方に見ていただきたいです。
お詫び (クマネズミ)
2012-07-29 19:40:12
こんばんは。
『ポエトリー』について酷く稚拙なコメントで差し上げ、rose_chocolaさんの勘気に触れてしまい、大変申し訳なく思っておりますところ、本作につきましては拙TBを受け入れていただければ幸いと思っておりますが、いかがでしょうか?
クマネズミさん (rose_chocolat)
2012-07-30 09:11:08
お久しぶりです。TBありがとう。
いえいえ、怒ってなどおりませんよ(笑)
ただ、議論に議論を重ねても仕方がないですよね。感じ方というのは人それぞれですので。
あとでお伺いしますね。
知られざる歴史 (まてぃ)
2012-08-19 21:22:11
こんばんは。
日本で暮らしていれば、まず陥らないであろう状況にあったブラジル移民たちの心を推し量ると、
周りがブラジルだからこそ、自分たちで純化、同質化してその中で異質なもの(負け組)を排除する、
という極端な手段で自分たちの依って立つ場所を何とか保持していたのかな、と思います。
国内では、まだあの戦争に正面から向き合うことはできないのでしょうか。
次には震災やら原発やらも振り返らなきゃいけないだろうし、自分も含めた日本人の成熟度合いが求められますね。
まてぃさん (rose_chocolat)
2012-08-20 09:49:15
>自分たちで純化、同質化してその中で異質なもの(負け組)を排除する、
>という極端な手段で自分たちの依って立つ場所を何とか保持していた
ここだけ読むと、今の日本もそう大して変わらないように思うんですよね。
ヴィセンテ・アモリン監督が冷静な視点で描いてくれたからこそ、そこも観客にきちんと考えさせてくれているんだと思いました。
日本人の成熟度合い、まだまだだと思うのです。

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