原題: What Maisie Knew
監督: スコット・マクギー、デヴィッド・シーゲル
出演: ジュリアン・ムーア 、アレキサンダー・スカルスガルド 、オナタ・アプリール 、ジョアンナ・ヴァンダーハム 、スティーヴ・クーガン
第25回東京国際映画祭『メイジーの知ったこと』ページはこちら。
映画『メイジーの瞳』公式サイトはこちら。 (2014年1月公開)
原作は1897年発表の、Henry Jamesの小説。19世紀の小説を21世紀風に映画化できてしまうというところも非常に驚くのだけど、その昔から離婚が大きな問題となっていて、原作はイギリスで描かれたものだが中身としてはアメリカでも大いに語れる。子どもが夫婦の危機に際して、問題の要になっている部分は古今東西変わらないようだ。そういう意味では最早離婚は普遍的な問題と言えるだろう。
今更言うまでもなく離婚は子どもたち、特に年齢が低ければ低いほど大きな影を投げかける。
養育のために別れた元両親の間を行ったり来たりさせられる。いくら子はかすがい、両親がそれぞれ"I love you"とキスをしたとしても、都合が悪くなれば途端に邪魔者扱いとなる現実。本作は親の立場から見ることが多い離婚を、徹底的に子の視点から描写している。
そのメイジーが、何も悪くない彼女が、大人の都合だけに振り回されていってしまう。父も母も、会えばいつも必ず「愛している」と言う癖に、それはうわべだけ。都合が悪くなるとお迎えや保護をキャンセルする「保護者たち」は、誰も彼女のことなんて本気で向き合おうとしない。
メイジーは恐らくもっと小さい頃から「生き残るための術」を探していたように思えてならない。誰についていけばいいのか、誰なら一緒にいてもいいのか。彼女は自分を世話してくれる人全てにすぐになついて愛らしくふるまっているが、実はそれが処世術であり、その中から敏感に、一体誰が本当に自分の味方なのかを探っているように見える。
映画を見ていれば一目瞭然だが、実の両親よりも、後からお目付け役になったりベビーシッターになったりした人物の方が、メイジーにとっては有益だというのも大変な皮肉である。子どもは作れど、常に自分の予定しか考えておらず、そこからはみだしたものは例え家族であっても除外したり他人任せにするのが実の親とは。
それこそメイジーに言わせれば、「私の面倒をちゃんと見てよ!私のことを愛してよ!」しかない訳で、親の都合なんて「そんなの知ったことか!」(なのでこの邦題は傑作。)と言いたくなるほどの無責任ぶりである。自分ではそれでも精一杯面倒を見ているつもりが、傍から見れば「それでも親か」としか認識されない「親業」というのは多いんだろうし、ますますこれからも増える一方かと思いながら観賞する。
振り回されているメイジーが、本当に自分が心地よい場所を求めて、側にいる人たちを観察したり共に時間を共有したりして確かめていく過程は、小さいながらも、いたいけながらも懸命に手探りで行われる。そこに人間としての生きる本能を見る思いがする。彼女が自分の人生を選び、しっかりと意思表示した瞬間から、たとえ幼くても人生は変わっていくし、変えられるんだという希望が見えてくる。そして同時にそれは身勝手な大人たちへの警鐘としても訴えかけている。
上映後にスコット・マクギー、デヴィッド・シーゲルの両監督を迎えてのQ&A。
とにかく何と言ってもこのメイジーちゃんが可愛い!という理由で本作をTIFFでの観賞に選んだ人も多いのではないだろうか。メイジー役のオナタ・アプリールちゃんに出会ったことがたぶんこの映画の全てだったように思える。彼女についてスコット・マクギー、デヴィッド・シーゲルの両監督は、
「メイジー役の選定については割と普通のキャスティングを行った。『シックスセンス』の子役を探したディレクターが選んだ。
何百人という候補者の中から、いい子が見つかったという知らせがあり、撮影開始3週間前に決まる。
当時オナタちゃんは6歳で、毎日撮影があるけどどこまでできるかと思っていたが、期待以上に一生懸命応えてくれた。彼女はこの映画に関わる人全てに愛されるキャラクターだった」と語っている。
オナタちゃんはもちろん素晴らしいけど、頽廃的なロックシンガー役のジュリアン・ムーアもチャレンジングだし、アレキサンダー・スカルスガルドってこんなにキュートな俳優なのかっていうくらい、真面目に役をこなしてたのが好印象。いい作品でした。
★★★★☆ 4.5/5点
確かにジュリアン・ムーアの演じたあの母親役はとても自分勝手ではありましたが、忙しいお母さんや仕事の関係上子育てに時間を取れない人も居ますよね。ナニー(子守)の役の方は確かに母親としては素晴らしい素質なんですけど、子供に全てを捧げてしまう古風なお母さんはアメリカでは珍しそう。
そうした相反するティピカルキャラクターを描きながら、それぞれの人が少しづつ当てはまるなと、感情移入していくことが出来るドラマに描けていたと思います。
それでも可愛いオーラ全開でこっちが癒されました。
忙しい母親っていうのはまあ仕方ないとして、放置はだめですね。
私は少なくとも子育てに全ては捧げないけど、ここまで放置はしてないつもり。でも子どもよりも追いかけたいものが目の前にあったらそうなっちゃうんだろうね。
なんとも不安げな目から、子供らしい目に、さびしそうな目、そしてうれしそうな幸せそうな目。
いやいや、女の子に尽きました。
いい保護者に巡り合えてよかったですが、ンなことは現実にはあるはずもなく、これから養子縁組とか、結婚しなくちゃならんだろうし、余計なことも考えてしまった。
100年前だったら、簡単だったでしょうが。